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八神物語   作者: 雷嵐
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魔王覚醒2

第2章 壊れ始めた世界






 神族が世界を支配し、新暦となったことにより旧暦とは異なることがいくつか出来た。まず人間に人間意外の生命体を空想上の物だと言う固定概念を与えそれを信じ込ませた。さらに自分達を含む6種族にそれぞれ領地を設定し、人間とは関わらせないようにした。それは、彼らがいまだに大陸アースガルドを手に入れ世界を支配していた頃の人間達を恐れていたからである。ではなぜ滅ぼさなかったのかと言う話になる。彼らはアースガルドを見つける事の出来た人間と言う種族を滅ぼしてしまうことを勿体ないと思った。上手く利用し、アースガルドを手に入れようと目論んだのだ。




 日本を含め、アメリカやロシアと言った国は、新暦が始まってすぐに無くなった。いくら神族とは言え地球環境の変化を変える事は難しくあった。しかし狭い範囲で有れば神族固有の能力により紫外線や温度の変化から人が住む場所を守る事が出来た。その恩恵を預かる事が許されたのは旧ロシアと旧北アメリカの領地のみであった。場所については特に理由はなく、強いて言えば神族達が人間に広めた(セイフィリタ教)の信仰者が多かったためである。人々は移民を余儀なくされ、自国を去った。これは新暦1年の話であると伝えられている。そして過密化したロシアと北アメリカでは人を抱える事が出来なくなり、食糧も不足してきた事から優先すべき人種を定めそこに当てはまらなかった人々は行き場を失った。これが新暦5年の出来事。優先すべき人種と言うのは主にもともとそこに住んでいた原住民と各有力と思われる国家の主要人達であった。セイフィリタ教徒達もその例外ではなかった。しかし、行き場を失った人々は人生を諦めなかった。黙って滅びを迎える位ならと今までいかなる宗教や倫理観のなかでも禁忌とされていた人体改造実験を行った。

 そのプロジェクトの名前は「人工悪魔開発プロジェクト」と言った。

 目的は、人間の体を改造し悪い地球環境の中でも生活が出来るようにする事。自分達を裏切った神や世界を滅ぼすための絶対的力を得ること。なぜ悪魔かと言うとこのプロジェクト名は後からつけられた物で人体を改造された人間達を見た神族に守られた人間達が悪魔のようだと言った事からそう呼ばれた。人工悪魔開発プロジェクトが始まったのが新暦7年で、人工悪魔開発プロジェクトにより作られた人々で形成された国家「帝国ギアガナン」と旧ロシア、旧北アメリカの連合国「ユニオン」が戦争を起こしたのが新暦18年の事であった。そしてその戦いは2千年の時がたった今も続いているのである。




 時は新暦2018年。かつて日本の東京と呼ばれていたビルの廃墟の中で1人の少女と思われる女が窓際に腰かけていた。髪は黒髪で自分の身長ほど位の長さ。大きな瞳で八重歯が可愛いそんな女の子だった。ただ普通の女の子でない部分もあった。まず瞳の色が燃えるような真紅でぶかぶかな黒のロングコートの脇には刀と思われるものがあり、更には彼女の背中からロングコートを突き破って二枚の対となる黒い羽がついていた。少女は月明かりに照らされながら足をぶらぶらするとため息をつき俯きながら言った。

「遅いのだ...」

少女は再びため息をつくと、刀を手に取り立ち上がった。

「迎えに行くのだ!」

少女はさっきまでの陰鬱な表情が嘘かのように可憐な笑みを浮かべると小走りに建物を後にした。






「少し遅くなってしまったな...」

 青年の体をした悪魔ヴェル・フェ・ゴールは富士の樹海での傲慢な態度は見られず少し憂鬱そうに呟いた。彼がいるのは、旧日本国東京都の廃墟と化したビルが立ち並ぶ六本木と言う所であった。周りには彼意外誰もいない。当然である。ここ旧日本国と言う場所は帝国ギアガナンの領地で罪人を閉じ込めておく空間でしか無いのだ。ここに送られた物は帝国の囚人として一生働かされる。ヴェルと融合した青年もまたここの囚人であった。

(だいぶこの肉体の事も理解したが...)

「人間の考えることはよく判らぬな...」

何事かを考えながら歩いていたヴェルは後ろから迫る人影に築くのが遅れた。

「ヴェル〜」

廃墟には全く似合わない明るくそして幼い声と共に青年の背中に一人の少女が抱き着いた。

「...ミアか。危険だから建物の中に隠れていろと言ったはずだが?」

ヴェルは抱き着かれたまま、淡々と告げた。

「うぅ〜、僕は子供じゃないんだから大丈夫なのだ! 僕だって闘えるのだ!」

ミアと呼ばれた少女は頬を膨らませるとヴェルに抱き着いたまま器用に正面まで周り言い寄った。

「ならばその刀で我を斬ってみるのだな。我に傷一つでもつけられたなら次は連れて行こう」

ヴェルは意地悪そうな顔をしてミアに言った。

「うぅ、ヴェルは意地悪なのだ...僕がヴェルに刃を向けるはずがないのだ。...ヴェルは僕の全てななのだ」

最後は聞き取れない位の小さな声だったがヴェルにはちゃんと聞こえていた。ヴェルはミアの額に自分の額をコツンとぶつけると言った。

「ミアが我を大事に思ってくれてるように、我にとってもミアは大切な存在だ。だから大事にする。異論は認めん」

そう言うとヴェルはミアの唇を奪った。

ミアは不意を疲れ、驚きはしたが拒まなかった。





 この時はまだヴェルもミアも気づいていなかった。世界が壊れ初めていることに。


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