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【頭脳戦×下剋上】『絶対階区(カースト)のリーガル・ハッカー』 ~無能な魔王と健気な女王、底辺からすべてを奪う~』  作者: 盤上廻


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第5話【天堂璃王】 極彩色の退屈凌ぎ

 口の中のペパーミントガムを、ギリッ、と奥歯で強く噛み潰す。


 雨宮の叫び声が聞こえなくなり、完全に監視カメラの死角に入った瞬間。


 僕、天堂璃王は顔に貼り付けていた「軽薄なヒモ男」の仮面を、物理的に引き剥がすようにスッと真顔に戻す。


 他人のために泥を被って、システムに合法的に搾取されて死んでいった『お人好しの馬鹿』?


 そして、その呪いのような生き方を美化して、自分からギロチンに首を突っ込もうとしている娘?


 脳裏にフラッシュバックするのは、雨宮の顔ではない。


 ――ずぶ濡れの野良犬みたいに笑っていた、才能も金もない、ただ底抜けに優しかったと思われる一人の男の写真。

 ――そして、その男を『無能』として、処理した、冷徹な暴力。


 深海よりも暗く、血よりも濃い極彩色の冷たさが、僕の瞳の奥にどろりと広がっていくのが分かった。


「……あー、反吐が出るね」


 僕は、コンクリートの壁を見つめた。


「誰かのために泥を被る優しさが『欠陥品』だなんてこの学園の理屈ではそうだよ」

 心の底から、呆れつつも、記憶の中にある『情』は嘘をつかない。


「ルールを作った強者に都合よく使われて、無能だと嘲笑われながら死ぬことの、一体どこが立派なんだ」


 僕は手元の端末の画面を立ち上げる。


 そこには、先ほど第二階区の女性から巻き上げた5万Rを含め、僕がこの学園に入学して2ヶ月の間に「ヒモ活」という泥を被って先輩達から受け取った資金。


 その『口座』の残高が表示されていた。


 さっきの女先輩。


 表向きは清楚な優等生を気取っているが、裏では下位階区の連中に理不尽な労働を押し付け、違約金名目でRを搾取している悪党だ。


 彼女が下層のゴミから搾り取った汚い金は、僕という『承認欲求を満たす装置』に数回甘い言葉を囁かれるだけで、合法的に僕の口座へと還流してくる。


 善意の義賊を気取るつもりはない。


 ただ、綺麗な皮を被ったエリートの醜い欲望をハックして、搾取の構造ごと奪い返す方が、よっぽどコスパが良いだけだ。


 それに、今日この死角で手に入れた収穫は、金だけじゃない。


 女の先輩が来る20分前。


 僕は、この薄暗い旧校舎の裏手で、パーカーを被った第五階区生に対し、第三階区のリーダー切島悠河が、金と何かを交換している取引現場を遠景で目撃していた。


 インテリってのは、本当に『数字』の保証がないと動けない臆病者だ。


 わざわざ敵陣まで足を運んで、データを買収しに来るとはね。ご苦労なことだ。


 僕は端末の画面に並ぶ圧倒的な数字を見下ろした。


《天堂璃王・個人口座残高 100万340R》


 第三階区の武断派のインテリが、あのバカで無能な第五階区を恐怖と暴力で縛り上げようとするなら、この100万Rの防波堤でシステムの根底ごと破壊する。


「作った完璧なシステムの中で、ああいう『バカみたいに優しい奴ら』が搾取されて、泣き寝入りして潰されるのが、この世界の正しいルールだって言うなら」


 僕は、口角を三日月のように歪め、誰にも見えない暗がりで、極彩色の魔王の笑みを深く、深く刻み込んだ。


「……上等だよ。僕が、そのふざけた盤面ごと全部叩き壊してやる」


 血統。遺伝子。法律。経済。そんな小賢しい鎖で、人間という複雑な『カオス』を縛り切れると思うな。


「才能は残酷だ。──だが、愛と執念という名の病は、それより遥かにタチが悪い」


 僕が欲しいのは、玉座なんかじゃない。 世界を支配する特権にも、大人たちからの評価にも、1Rミリの価値も感じない。


 お前らが『無能』だと切り捨てた人間の泥臭い意地が、いかにしてお前らの築き上げた高尚な理屈を足元から食い破るか。特等席で見せてやるよ。


「おい、雨宮。お前がその『欠陥品みたいな優しさ』を本気で貫き通すって言うなら……僕が知恵を貸してやる。お前を、エリート共の綺麗なルールを泥まみれにして喰い破る『泥の女王』に仕立て上げてやるよ。それが一番、僕の退屈凌ぎ(エンタメ)には丁度いいからな」


  僕がこの狂った盤面をひっくり返してでも手に入れたいのは、もっとずっとくだらなくて、この世で一番贅沢な『暇つぶしの時間』だ。


 天を突くほど高く、冷たい『白亜の鳥籠』の扉を、根元から物理的に粉砕すること。 そこに囚われた、月光を織り込んだような『銀色の月』を空から引きずり下ろし、誰の目にも触れない、狭くて温かい『四角い箱』の中に永遠に閉じ込めてやる。そして、手のひらが黄色く染まるまで、『橙色の甘い果実』の皮を剥き続けるんだ。


「――人を笑顔にする嘘は、魔法っていうのよ」


 いつか聞いた、その言葉の通り。僕は世界で一番タチの悪い魔王サギシになってやる。


 僕は端末の電源を落とし、ポケットに突っ込むと、ゆっくりと歩き出した。



 さあ、最悪の泥仕合チェックメイトを始めようか。



 

 盤上廻です! お読みいただきありがとうございます!

 無能なヒモ男だと思われていた天堂璃王の、本当の顔。


 もし『こいつ、ただのクズじゃなくて最高に性格が悪い魔王じゃん!』『ここからの反撃が楽しみ!』とニヤリとしていただけた方は、ぜひ画面下の【★★★★★】ボタンを押して、魔王の共犯者になっていただけますと幸いです!


 彼が裏で100万Rの防波堤を築いた一方で、表舞台の雨宮には最悪の罠が迫ります。


 ――インテリヤクザが仕掛けた「窃盗未遂の罠」。仲間を見捨てられない健気な女王が、自らの手で絶望のボタンを押す。

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