第7話:魔王城ファーストライブ、あるいは戦士に捧ぐ鎮魂歌(レクイエム)
魔王ゼニスの凱旋を祝し、ついに幕を開けるショウのライブ。 ステータス1、スキルなし。それでも、10年間の汗と涙で磨き上げたパフォーマンスは、魔族たちの、そして異世界の戦士であるゼニスの心を激しく揺さぶります。
松明の炎が、ペンライトのように揺れている。
広場を埋め尽くした数千の魔族たちが、ゴルドラン隊長の合図に合わせて足を踏み鳴らし、地鳴りのようなビートを刻む。
俺は、即席のステージの上で深く息を吐いた。
体調は最悪だ。一ヶ月の活動で少しは慣れたが、依然としてステータスは「1」。肺は焼けるように熱く、膝は笑っている。
だけど、目の前には俺の歌を待っている観客(魔族)がいて、特等席には俺を拾ってくれた魔王様がいる。
(29歳、異世界再デビュー。ドームより熱いステージにしてやるよ……一曲だけだけど……)
俺は顔を上げた。その瞬間、スイッチが入る。
「不憫な居候」ではなく「アイドル・銀城ショウ」の顔だ。
「――♪」
伴奏なんてない。俺のアカペラと、魔族たちの踏み鳴らすリズムだけ。
歌ったのは、アイドル時代の俺が一番大切にしていたバラード……から、一気に加速するアップテンポなナンバーだ。
筋力1の脚を無理やり動かし、キレのあるステップを踏む。
一歩ごとに寿命が削れるような感覚。だけど、視線の先でゼニスの目が大きく見開かれているのがわかった。
(……魔王様も感激しているのか?)
俺の歌声は、魔都カタルシスの夜空を突き抜け、静まり返った城内に響き渡った。
それは魔力による攻撃ではない。だが、聴く者の魂に直接、かつての記憶や失った熱量を呼び起こさせる「表現」という名の暴力だった。
曲が終わると同時に、俺はステージに膝をついた。
拍手はなかった。代わりに、広場を支配したのは、言葉にならない咆哮だった。
「……ショウ」
重厚な足音を立てて、ゼニスがステージに歩み寄ってくる。
彼は大きな手で倒れそうになった俺の肩を支えた。その手は温かかった。
「私の……かつての星にも、歌はあった。だが、これほどまでに心を、戦うこと以外の何かで満たすものはなかったぞ」
ゼニスの瞳には、神々の神託に従っていた時のような虚ろさはなかった。
彼は俺を見つめ、静かに、だが確かな決意を込めて囁いた。
「貴様はやはり、光の神が送り込んだ最強の刺客だな。……私に、戦い以外の『生』の味を思い出させてしまったのだから」
「……はは、光栄です。魔王様」
俺は意識が遠のきそうになりながらも、それでもプロの笑顔を崩さなかった。
それを見ていたショーベルが、慌てて駆け寄ってくる。彼女の頬には、隠しきれない涙の跡があった。
「ショウ! 大丈夫か、ショウ! ……ああ、もう、ステータス1のくせに無茶ばかりして……!」
ショーベルに抱きかかえられながら、俺は空を見上げた。
光の神も闇の神も、きっとこの光景を苦々しく見ていることだろう。自分たちの作った「戦争」という娯楽を、全ステータス1の男が「エンターテインメント」で上書きしてしまったのだから。
(神様、見てるか? あんたの台本はもうボロボロだぜ。……争いのない世界を目指してやる)
俺は、魔王の腕の中で、深い眠りへと落ちていった。
【後書き】
第7話をお読みいただきありがとうございました!
ついに「アイドルの歌」が、かつての戦士であったゼニスの魂を救いました。 ステータス1のショウが見せた、命がけの「輝き」。 しかし、このライブがさらなる世界の異変を呼び起こすことに……?
次回、お楽しみに。
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※AIとの共同執筆作品となります。




