第5話:魔王城の専属アイドル、あるいは一ヶ月のアンコール
圧倒的な勝利を収めて帰還した魔王軍。しかし、魔王ゼニスの心は晴れませんでした。 光の神、そして闇の神。終わりのない戦いを強いる神々に嫌気が差したゼニスを救ったのは、最弱のアイドルの「輝き」でした。 そして明かされる、魔王自身の意外な過去とは――。
死を覚悟し、思わず目を閉じた。
だが、数秒経っても痛みは来ない。代わりに聞こえたのは、ガキンッという凄まじい火花が散るような衝撃音だった。
「――よせ。魔王様とショーベル様のお気に入りを傷つければ、貴様の首が飛ぶぞ」
目を開けると、俺の前に巨大な鉄の斧を構えた、さらに巨大な魔族が立っていた。
漆黒の毛皮に覆われた狼のような顔。魔王軍防衛部隊隊長、剛将ゴルドランだ。
「ゴ、ゴルドラン隊長! ですが、この人間は不気味な呪詛を……!」
「待ってください! 呪詛じゃないです。俺、ただ、歌ってただけなんです……!」
トロールが怯えながら叫ぶが、ゴルドランは鼻で笑った。
「呪詛だと? 笑わせるな。俺の耳にも歌に聞こえたぞ……あれは相当な鍛錬が必要なはずだ」
俺は驚いた。まさか、こんな強面の隊長が、俺のパフォーマンスを評価してくれるなんて。
「ショウと言ったか。貴様のその『歌』、私は気に入った。呪いだと騒ぐ連中は俺が黙らせてやる」
ゴルドランの意外すぎる評価に、俺は驚いた。
それからの一ヶ月、俺の生活は一変した。
ゴルドランに歌とダンスの許可を得た俺は、毎日、中庭や広場で歌とダンスを披露することになった。
相変わらずステータスは「1」のままだ。三曲も歌えば、立っていられないほど息が切れるし、筋肉痛で翌日は動けない。
だけど、歌声だけは、あの四万人の前で披露したときと同じ輝きを放っていた。
「お前の歌は楽しいな」
「あの奇妙な動きも楽しいな」
最初こそ冷たかった魔族たちも、毎日全力で、死にそうになりながらも笑顔を絶やさない俺の姿に、少しずつ毒気を抜かれていったらしい。今では「観客」もいるようになった。
(神様。あんたが俺から全てを奪ったつもりでも、俺が積み上げた十年は奪えなかったみたいだ)
そして、一ヶ月が過ぎたある日のこと。
「――魔王様が戻ったぞ! 変わりないか!?」
地響きのような足音と共に、魔王軍の本隊が城に帰還した。
先頭を走ってくるのは、砂埃にまみれながらも必死な形相の魔王ゼニスと、そのすぐ後ろで兜を脱ぎ捨てたショーベルだ。
戦況は魔王軍の圧勝。人間たちの軍勢を、神の加護ごと蹴散らして戻ってきた最強の主たちは、城の広場にできている「ショウのステージ」を見て、呆然と立ち尽くした。
「……ショウ? お前、随分と仲良くなったのだな」
「あ、魔王様、ショーベルさん! お帰りなさい! 」
一ヶ月ぶりの再会。
戦地で俺のことを心配し続けていたらしい二人の顔には、安堵を通り越した、深い困惑が浮かんでいた。
【前書き】
振り下ろされるトロールの斧。絶体絶命のショウを救ったのは、意外な人物でした。 「歌」という未知の力が魔族の心を動かし、魔王城に奇妙な日常が訪れます。
【後書き】
第5話をお読みいただきありがとうございました!
防衛部隊隊長ゴルドランという理解者を得たショウ。
圧勝して帰ってきたゼニスたちが見たものは、魔族たちとハイタッチするショウの姿でした(笑)。
次回、お楽しみに。
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※AIとの共同執筆作品となります。
第6話:神々の身勝手と、戦士の休息
圧勝した魔王軍の凱旋。本来なら、魔王ゼニスの威光が世界に轟き、全軍が歓喜に沸く瞬間だ。 だが、玉座に向かうゼニスの足取りは、どこか重かった。
(……滅ぼせ、か。どいつもこいつも、盤上の駒を動かすように命じおって)
この遠征中、ゼニスは『闇の神』から神託を受けていた。
『一気に人間を滅ぼし、世界を支配せよ』
だが、ゼニスはそれを拒み、僅かな領土拡大に留めた。帰り道、頭の中に響く闇の神の怒号を無視しながら、彼は深く息を吐く。
何度勇者を倒しても、光の神は新しい勇者を送り込んでくる。そして闇の神は、際限のない破壊を求めてくる。
ゼニスは、この終わりのないマッチポンプのような世界に、心底嫌気が差していた。
実は、ゼニスもまたこの世界の住人ではない。かつて地球とは別の星で、死ぬまで戦い続けた「異世界の戦士」だった。転生して魔王となってからも、結局はやっていることは変わらない。信念を通して戦った戦いと、今の戦いは全く違うもの、意味のない闘いに飽き飽きしている。
魔王は闇の神を信じられなくなった。
(神に全否定され、ステータスを『1』にされたショウを拾ったのは……何かの縁か)
殺伐とした思考を抱えながら、ゼニスが城の広場に足を踏み入れたとき――その光景が、彼の心を一気に現世へと引き戻した。
「ショウの歌とダンスはすばらしい」
そこには、一ヶ月前と変わらぬ、いや、前よりもずっと元気に魔族たちと交流するショウの姿があった。
ステータス1のひ弱な人間が、恐ろしい魔族たちと仲良くなり、広場には平和な熱気が満ちている。
「……ショウ。貴様、無事だったのだな」
ゼニスの声に、ショウがパッと顔を輝かせた。
「魔王様! お帰りなさい! 」
駆け寄ってくるショウの瞳には、一点の曇りもない。
神々のドロドロとした欲望に触れ、何十年、何百年と戦い続けてきたゼニスにとって、ショウの真っ直ぐな言葉は、どんな治癒魔法よりも深く心に染み渡った。
「……ふむ。貴様の顔を見ていると、どうでもよくなってくるな。神々の戯言など」
「え? なんて言いました? …… 魔王様、今日はお祝いです!」
ショウの提案に、ゼニスの口元が自然と緩んだ。
かつての星でも、この世界でも、戦いの中にしか居場所がなかった彼にとって、初めて「楽しみだ」と思える時間がそこにはあった。
「ああ。楽しみだ。貴様の歌を見せてもらうぞ」
ショーベルも隣で、期待に満ちた目でショウを見つめている。
ショウは心の中で、人間に圧勝した魔王様に複雑な気持であったが、今ここにいるのは魔王様の恩情のおかげだと歓迎のライブを行うことにした。
(神様、人間負けてますが。お祝いさせていただきます)
ショウは最高のプロの笑顔を魔王に贈り、高らかに宣言した。
「お待たせしました! ゼニス様、勝利を祝して――開演です!」
第6話をお読みいただきありがとうございました!
魔王ゼニスも実は「戦いに疲れた転生者」だったという衝撃の事実。 だからこそ、神に抗うショウの姿に自分を重ね、救われているのかもしれません。
次回、お楽しみに。
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※AIとの共同執筆作品となります。




