第4話:出陣の背中と、かつての輝き
魔王ゼニスやショーベルからは厚遇されるショウ。しかし、他の魔族たちにとって、全ステータス1の人間は「不快な居候」に過ぎませんでした。 そんな中、魔王国を揺るがす緊急事態が発生。一人残されたショウが、自らの魂に火を灯します。
魔王城での生活は、天国と地獄が同居していた。
魔王ゼニスと暗黒騎士ショーベルは、ことあるごとに俺を気にかけ、同情という名の加護をくれる。だが、城に住む他の魔族たちは違った。
廊下ですれ違えば
「……チッ、人間のゴミめ」
「なぜゼニス様はあんな無能を飼っておられるのか」
「うまそうだな」
という冷たい視線と舌打ちが飛んでくる。
(……まあ、そうだよな。ドームで歓声を浴びてた頃が嘘みたいだ)
現在、このアプラウディア大陸の七割は魔王国が支配している。圧倒的な武力を持つ魔王軍に対し、人間の国は防戦一方。ここしばらくは大きな戦闘もなかったはずだが――突如として、その静寂が破られた。
「勇者の軍勢が、境界線を突破しただと……!?」
謁見の間にゼニスの怒号が響く。
人間側の国々が、光の神ルミナスの神託を受け、決死の反攻作戦に出てきたらしい。
「ショウ、すまぬが留守を頼む。……忌々しい神の使い、何も考えぬ愚か者め」」
ゼニスは俺の肩に巨大な手を置き、いつもの同情を露わにしてから、戦場へと旅立っていった。
ショーベルもまた、漆黒の兜を被り、鋭い剣を帯びて俺の前に立つ。
「城を離れるのは不安だが……。ショウ、お前をよく思っていないものも多い。決して部屋から出るな。いいな?」
彼女の瞳には、監視ではなく確かな心配の色があった。
主力部隊が去り、静まり返った城内。俺は自室に籠もっていたが、じっとしていられなかった。
(……俺に、本当に何もできないのか?)
掃除も料理もダメ。力仕事なんて論外。
でも、もし、あの「力」だけは残っていたら――。 俺は城の奥まった中庭、誰もいないことを確認して、そっと息を吸い込んだ。
「……っ」
まずはステップ。筋力1の脚は重い。だけど、体にしみついたリズムが、骨を動かす。 そして、喉を震わせた。
「――♪」
震えるような、だけど澄んだ歌声が中庭に響く。
驚いた。三分も踊れば倒れそうなほど疲れる。全身から嫌な汗が出る。
だけど、歌声も、ダンスのキレも、あのドームで披露した最高潮の時と、何一つ変わっていなかった。
ステータスという数値には現れない、俺が10年かけて積み上げてきた「表現力」だけは、神だって奪えなかったんだ。
「……これなら、俺だって……」
希望の光が見えた、その時だった。
「――見つけたぞ。ゼニス様の目を盗み、不気味な術を弄する汚らわしい人間が」
背後から響いたのは、ドスの利いた声。
振り返ると、そこにはゼニスへの忠誠心が強い、巨大なトロールの兵士が立っていた。防衛部隊で城に残っていた彼は、以前から俺を排除したがっていた一派だった。
「な、何ですか。これはただの歌で……」
「問答無用! 貴様のようなゴミがいるから、我が国に神の軍勢が攻めてくるのだ。今ここで、我が斧の錆にしてくれる!」
振り上げられた巨大な斧。
ステータス1の俺には、避ける術も、防ぐ術もない。
振り下ろされる死の刃が、スローモーションのように視界を覆った。
「――助けて、ショーベル……!!」
危機一髪。俺の異世界生活は、再出発の瞬間に最大のピンチを迎えた。
第4話をお読みいただきありがとうございました! 自分のアイデンティティである歌とダンスが通用することを確認した直後の、絶体絶命の危機。 果たしてショウの運命は!? そして、ショーベルは間に合うのか!?
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※AIとの共同執筆作品となります。




