第3話:体力に自信あったのに魔王城の階段で疲れる、暗黒騎士に姫抱っこされる成人男性
暗黒騎士ショーベルの監視下で、なんとか牢獄を卒業したショウ。 しかし、ステータスオール1の体にとって、魔王城はあまりに過酷な「ステージ」でした。 元アイドルとしての自信と、何もできない無力感。そんなショウを、美しき暗黒騎士ショーベルが優しく慰めます。
ショーベルの温情(という名の監視)により、俺は晴れて牢獄の外へと一歩踏み出した。 だが、その一歩目で俺は現実を知ることになる。
「……あ、これ無理だわ」
目の前にあるのは、魔王城の広間に続く大階段。一段一段が、俺の膝の高さまである。魔族サイズで作られたこの城は、全ステータス1の成人男性にとって、もはや「そり立つ壁」だった。
「どうした、ショウ。早く来い。ゼニス様がお待ちだ」
前を歩くショーベルが振り返る。彼女は重厚な鎧を着ているとは思えないほど軽やかに階段を登っているが、俺は十段目で既に息が上がっていた。
ドームツアーで三時間踊りきり、打ち上げもこなした。運動量には絶対の自信があったはずなのに、たった一段の階段で全身が鉛のように重い。
「ショーベルさん……無理です。俺のステータス1を舐めないでください。この階段……登れません」
「……はぁ? ステータス1だからか……」
ショーベルは呆れたように階段を降りてくると、俺の腰をヒョイと片手で抱え上げた。
「わっ!? ありがとうございます――!」
「黙れ。時間が惜しい。……しかし、軽いな。貴様、飯を食っているのか?」
まさかの姫抱っこ(脇に抱えられたような形だが)状態で、俺は階段を運ばれていく。29歳アイドルのプライドは木っ端微塵だが、ショーベルから漂う甘い香りと鉄の匂いに、少しだけ心拍数が上がった。ああ、こんな状況でも、美人の匂いを嗅ぐとドキドキするなんて、俺も男だな……。
たどり着いた謁見の間。そこには、巨大なステーキを頬張っていた魔王ゼニスの姿があった。
「おお、死んでなかったか、銀城ショウよ。……む? ショーベル、なぜそいつを担いでいる?」
「ゼニス様、この男、階段すら登れぬほど脆弱です」
ショーベルが俺をごみ袋のように床に下ろすと、ゼニスはフォークを止めて、深い溜息をついた。
「……神は貴様に何を期待しているのだろうか……」
(いや、ただ単に魔王城がデカすぎるだけなんだけど、その同情はありがたく受け取っておこう)
「ゼニス様、俺、ここで何か役に立ちたいんです! 掃除でも、食事の用意でも、何でも手伝います!」
俺は必死に申し出た。自分の居場所を作るため、役に立とうと。
だが、その努力はことごとく裏目に出た。
床を掃けば、羽箒が重すぎて手が震え、埃が舞い上がるばかり。
食事を手伝おうと厨房に入れば、包丁一本すらまともに扱えず、野菜を刻もうとしただけで指を切りそうになる。
俺はアイドル時代、歌もダンスも、演技もトークも、料理だってそこそこ器用にこなしてきたはずだ。どんな無茶振りにも対応できるのが俺の武器だった。
それが今、何一つできない。
「くっ……!」
あまりの不甲斐なさに、思わず拳を握りしめた。何なんだ、この体は。俺の全てを奪われたような無力感が、全身を覆う。
「……無理をするな、ショウ」
俯く俺の隣に、ショーベルがそっと立つ。
「貴様は、ただの人間。この魔王城で、魔族と同じように動けると思う方が間違いだ。……光の神が貴様から全てを奪ったのはなぜかわからんがな」
ショーベルの言葉は、酷く冷静で、それでいて温かかった。
……奪われた? 俺の「全て」を?
アイドル時代は「お前は凡才だから努力しろ」って言われてばかりだった。誰よりも努力してドームツアーまでやるようになったのに……。
間近で見るショーベルの横顔は、やはり息をのむほどに美しい。白い肌に、真剣な眼差し。その言葉に、俺は少しだけ、救われた気がした。
「……神様あんたより、魔王様の『同情』とショーベルさんの言葉の方がよっぽど力になるんだけど。……」
俺は城の片隅で、紫色のドロリとした特製魔獣ジュースを飲み干した。
俺の「成人男性」としての異世界再デビューは、魔王城の埃を払うどころか、何一つできない無力感から、本格的にスタートした。
第3話をお読みいただきありがとうございました! ドームの頂点から「何もできない」自分への絶望。そして、そんなショウを慰めるショーベルの優しさ。二人の距離が少しずつ縮まりましたね。
次回、お楽しみに。
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※AIとの共同執筆作品となります。




