第14話:偽りの聖歌、あるいは暗黒騎士の貯金残高
自らの持ち歌を汚され、怒りに燃えるショウ。 しかし、広場で行われていた「ライブ」の真の目的を知った時、二人はこの国の歪んだ正義に戦慄することになります。 王国への不信感、そして意外な形で解決する「路銀」の問題。物語は新たな局面へ。
俺たちは広場の喧騒を逃れ、目立たない裏通りの安宿に滑り込んだ。
ショーベルは、ずっしりと重い石板を「ドスン」と床に置いた。
「ショウ、さっきの勇者……権三郎だったか。あやつの魔力は大したことないな。まぁ光の属性を持つ者なら、あの下手な歌でも平伏してしまうだろうな」
「……その通りです。ただ神の力を借りて、歌声に洗脳に近い魔力を乗せているだけだ」
俺は苛立ちを紛らわせるように、床に置かれた石板の「裏面」を指でなぞった。
すると、再び視界にシステムメッセージが流れる。
【解析中……成功。現勇者・権三郎のステータスを表示します】
「うおっ!? 出た。……どれどれ」
【名前:権三郎】
【職業:勇者】
【ステータス:筋力 12、体力 10、魔力 1……】
【特記事項:勇者の剣を未所持。現在、普通の成人男性並みの能力値です】
「……は?」
俺は思わず二度見した。
魔力999とか、筋力500とか、そういうインフレした数字を想像していたのに、出てきたのはあまりにも貧弱な数値だった。
「ショーベルさん、見てくださいこれ。あいつ、俺と大して変わらない『ただの男』ですよ。魔力だって、一般人並みだ」
「……何だと? だが、あの輝きと、民を惹きつける力はどう説明する」
「……石板の続きに書いてあります。勇者の力は『勇者の剣』に継承されるシステムなんだ。あいつが持ってるのは偽物だから、中身はただの人間……」
俺たちが目にしたのは、ただのパクリ・ステージではなかった。
権三郎が歌い上げる広場の奥。そこには、十字架に縛り付けられた十体の魔族たちがいた。
「なっ……なんだ、あれは」
捕らえられた魔族たちの処刑は見せしめにされていた。
権三郎が「光よ!」と歌いながら聖剣(偽)を振るうたび、観客の魔法使いたちが魔族たちへ魔法を放ち、じわじわと痛めつけていく。
それは神聖な儀式などではない。ただの残酷な見世物だ。
「……ひどいことを……あいつら、命を何だと思ってるんだ」
俺の隣で、ショーベルがガタガタと怒りに震えていた。
令嬢の変装をしていても隠しきれない、剥き出しの殺気。彼女が今にも剣を抜きそうなのを、俺は必死に抑え込んだ。
「……ショーベルさん、ダメだ! ……一旦、ここを離れましょう。王国に保護を求めるなんて、間違いでした」
「…………。ああ、分かっている。……だが、いつか必ず、あの外道どもに報いを受けさせてやる」
俺たちは広場を後にし、王都の喧騒から逃れるように裏路地へと潜り込んだ。
光の神が守る国。その実態は、魔王城よりもずっと血生臭く、不憫な世界だった。
「……これからどうしましょうか。独立都市エトワールに戻るか、どこか別の潜伏先を探すか。……何にせよ、まずは生活費を稼がないと。俺、全ステータス1の無職ですし」
日本にいた頃の貯金通帳を思い出し、俺はため息をついた。異世界でも結局カネの問題にぶち当たるのか。
すると、ショーベルが不思議そうな顔をして、懐から小さな革袋を取り出した。
「金か? それなら心配ない」
ショーベルが袋の中身を見せてくれた。
ジャラジャラと鈍い音を立てて転がり出たのは、眩いばかりの輝きを放つ黄金のコイン。
「……これ、大金貨ですよね? 何枚あるんですか?」
「百枚だ。魔王国でも同じ通貨を使っているが使い道がないので貯めておいた。魔王城にはもっとあるぞ」
「もっと……!?」
俺の脳内計算機が高速で回転する。
この世界では、大金貨一枚あれば家族が一年は遊んで暮らせると聞いたことがある。……ということは。
「百枚……。ショーベルさん、俺たち、あと百年は働かなくていいってことですか?」
「計算上はそうなるな。それがどうした?」
「…………」
29歳、崖っぷちアイドル。
ステータスは「1」のどん底だけど、パートナーは最強の騎士で、しかも超がつく億万長者(資産家)。
(……神様。あんたが俺をどん底に落としたつもりだろうけど……。俺、もしかして、最高の『ヒモ』としての才能が開花しそうなんだが!)
第14話をお読みいただきありがとうございました!
王国の残酷な真実と、ショーベルさんの驚愕の貯金額。 図らずも「最強のスポンサー」を得たショウは、いよいよ本格的な反撃の準備に入ります。
次回、お楽しみに。
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※AIとの共同執筆作品となります。




