第12話:王国入国、あるいは針と糸のファースト・ワーク
平和の神から託された「針と糸」、そして謎の言葉が刻まれた石板。 これらを手に、ショウとショーベルはいよいよ王国の検問所へと挑みます。 アイドルのプロデュース能力と神の遺産が合わさった時、ありえない奇跡が起こります。
地下の隠し部屋。針と糸を手に入れた俺は、ふとその箱が置かれていた台座の後ろにある石板が気になった。
表には先程の日本語が刻まれていたが、なんとなく裏側に手を回してみると……そこには、表とは違う、だがどこか見覚えのある規則性を持った記号が彫られていた。
「……これ、なんて書いてあるんだ? 言葉だと思うんだけど……」
なぜか無性に気になる。アイドルの勘か、それとも平和の神の導きか。
俺が石板を凝視していると、横からショーベルがひょいと顔を出した。
「わからんな。 そんなに気になるなら、持っていくか」
「え? いや、これ石板ですよ? 重いし無理だろ――」
バリバリィッ!
凄まじい音と共に、ショーベルが素手で台座から石板を引っこ抜いた。
「……えぇ……」
「これくらい、私にかかれば造作もない。ほら、いらない箇所は少し削っておこう」
唖然とする俺を余計に、彼女は石板を小脇に抱えた。……正直、めちゃくちゃ邪魔そうだが、そこまで言われたら持っていくしかない。
俺たちは図書館へ戻り、身なりを整えてから、ついに王国の国境の街へと向かった。
街道に出るとすぐ、王国の検問所が見えてくる。光の神を象徴する白い旗が翻り、銀色の甲冑に身を包んだ「聖騎士」たちが目を光らせていた。
「くっ、やはり警備が厳しいな。ショウ、私の角を隠しているこのベールだが……先程の移動で少し綻んでしまった。これでは近くで見られた時に怪しまれる」
ショーベルが焦りを見せる。確かに、廃墟で拾った古いベールは、地下通路の移動で端がボロボロになっていた。
「……ショーベルさん、大丈夫。ちょうど『いい道具』を手に入れたばかりですから」
俺は平和の神の針と糸を取り出した。
指先に全神経を集中させる。かつて本番直前、衣装が破れたメンバーのために、一分間で完璧な修復をこなした時の「あの感覚」を呼び起こす。
(平和の神様、針と糸使わせてもらいます!)
チク、と針が布を通る。その瞬間、信じられないことが起きた。
俺が縫った場所から淡い光が溢れ、ボロボロだった布が、まるで呼吸を始めたかのようにシルクのような光沢を放ち始めたのだ。
【スキル:神の仕立て(ゴッド・テーラー)が発動しました】
「針と糸を使った衣服は特殊効果が付与されます」
(え!ついにスキル覚えた!!)
声に出すと誰かに気づかれそうなので声に出さずに喜んだ。
ようやくスキル持ちになった。ステータスもいつか上がるだろう。ショウはうれしさのあまり叫びたくなった。
「どうしたショウ?大丈夫か?」
「大丈夫です。なんでもありません」
ショーベルが不思議そうに尋ねた。
「よし、できました。ショーベルさん、今のあなたは『亡命中の悲劇の令嬢』にしか見えません。自信を持って、俺の後ろを歩いてください」
検問所の聖騎士たちが槍を交差させ、俺たちを遮る。
「止まれ! 貴様ら、何者だ!」
俺はすかさず「従者モード」のスイッチを入れた。
「失礼いたします。私は、隣国の政変で住む場所を失ったマドレーヌお嬢様の従者でございます。お嬢様は心労で声を失っておりますが、どうか通行をお許しいただけないでしょうか」
聖騎士の一人が、疑わしげにショーベルのベールを覗き込んだ。
その瞬間、彼の顔がカアァッと赤くなった。
「こ、これは……なんという気品だ。……この清らかなオーラ、間違いなく光の神の加護を受けた高貴な方に相違ない! 通られよ!」
ビシッと敬礼し、門が開く。
俺たちは、一歩も戦うことなく、王国の最前線を突破してしまった。
(……俺の演出に秒で落ちたんだけど。……俺のスキルすごすぎるんだが!)
王国の街並みが見えてくる。そこには、魔王城とは違う「人間の活気」があった。
だが、俺の耳に、街の広場から聞いたことのある『メロディ』が届いてきた。
「……え? これ、俺たちのユニットの曲じゃないか?」
王都へ向かう入り口。そこで俺を待っていたのは、懐かしくも、あってはならない「地球の歌」だった。
第12話をお読みいただきありがとうございました!
ショーベルさんの怪力(?)で石板もゲットし、神の針と糸で見事に検問を突破した二人。
次回、お楽しみに。
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※AIとの共同執筆作品となります。




