第11話:神々の遊戯盤、あるいは平和の神の遺言
図書館の最奥で見つかった隠し階段。 その先に待っていたのは、この世界の残酷な成り立ちと、理不尽な神々に抗った「ある神」の記憶でした。 そして、絶望的なステータス1のショウの前に現れたのは、見慣れた「母国の言葉」でした。
松明の炎に照らされた隠し階段を下りきると、そこには歴史の重みを感じさせる巨大な石の扉が立ちはだかっていた。
ショーベルが剣の柄に手をかける。だが、扉には鍵穴も取っ手もない。
「……ショウ、下がっていろ。力ずくでこじ開ける」
「待ってください。なんか……ここ、俺を呼んでる気がするんです」
不思議な感覚だった。俺がそっと扉の表面に触れると、冷たかったはずの石が体温を吸うように熱を帯びる。
ズズズ……と地響きを立てて、誰の侵入も許さなかったはずの扉が、俺を歓迎するようにゆっくりと開いた。
部屋の中に広がっていたのは、壁一面に刻まれた緻密な壁画。
だが、俺はそれを見た瞬間、呼吸を忘れた。
「……うそだろ。なんで、こんなところに」
「どうした、ショウ? 読めるのか、この不気味な古代文字が」
「不気味……? いや、ショーベルさん。これ、俺の故郷の言葉だ」
壁画に刻まれていたのは、流麗な筆致で書かれた日本語だった。
そこには、戦慄すべき世界の真実が綴られていた。
太古の昔、この世界にはあらゆる種族を戦わせて遊ぶ『創造神』がいた。
何万年も続いた地獄のような争いに異を唱え反旗を翻したのが『光の神』と『闇の神』。二柱はあらゆる種族と協力して創造神を討ち世界にようやく平和が訪れた。
長い平和の時代が訪れ、争いのない平和な世界がみんなを幸せにしていた。
だが、平和はやがて「退屈」に変わった。
二柱の神は暇つぶしのために料理や競技などの様々な勝負事をさせたが、結局、一番盛り上がったのは『戦争』だった。
かつての自分たちのように人間が団結して神に牙を剥くのを恐れた彼らは、システムを作った。
代表者である『勇者』と『魔王』を異世界から選び、狭い盤面で戦わせる、最低のエンターテインメントを。
「……神様、やっぱりあんたたち、やってることが子供じゃねえか。……」
壁画の後半には、そのシステムに唯一反対した『平和の神』の最期の手記があった。
『この世界の生物は生まれながらにして光か闇の力を与えられている。だから、この世界の住人は神を倒せない。……神を倒せるのは、外の世界からやってきた者だけ。神託の扉を開け、この文字が読める貴方に、私の残った力を託します。……』
石板の前に置かれた小さな箱が、カチリと開く。
俺とショーベルが固唾を呑んで見守る中、そこに入っていたのは――。
「……針と糸……だと……?」
どこにでもあるような、銀色の針と、透き通った糸が一束。
攻撃力1。防御力1。
神を敵に回した全ステータス1の男に、平和の神様が最後にくれたのは……ただの「裁縫セット」だった。
「…………ショウ、これは、何かの秘宝なのか?」
「…………わかりません」
ショーベルが困惑した表情で俺を見る。
俺は「針と糸」を手に取り、苦笑いした。
アイドル時代、衣装が破れれば自分で縫い、ステージ映えするようにスパンコールを付け足してきた。地味で、地道で、でも衣装が変われば、パフォーマンスの輝きが変わることを俺は知っている。
「……神の秘宝ですよショーベルさん。でも、俺には一番馴染みがある。……神様、最後の手札がこれって、あんたも相当追い詰められてたんだな」
俺は、神から託された最弱の遺産をポケットに仕舞った。
日本語で書かれた呪いのような真実。それを解く鍵がこの針と糸だというなら、受けて立ってやる。
「行きましょう。この針と糸で、神様が作ったこのクソみたいな世界の台本、全部縫い直してやりますよ」
第11話をお読みいただきありがとうございました!
古代の遺跡に刻まれた「日本語」。それはショウにとって、この旅が避けられない運命であることを示していました。 平和の神から託された「針と糸」。一見ただの裁縫セットですが、アイドルの魂を持つショウには、これこそが最高の武器になる……かもしれません。
次回、お楽しみに。
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※AIとの共同執筆作品となります。




