第10話:古の街の遺産、あるいは秘密の入り口
勇者の国への道中、二人が辿り着いたのは魔王軍によって滅ぼされ、放置された「古の街」でした。 静寂に包まれた廃墟で、ショウはアイドルとしての審美眼を活かし、潜入のための準備を進めます。
国境付近に位置するその街は、かつて『独立都市エトワール』と呼ばれていた。
王国の一部でありながら独自の法律を持つ「古の街」だったが、数年前、魔王軍の侵攻によって占領され、徹底的に破壊された後に放置された場所だ。
「……誰もいないな。ステージセットの裏側みたいに静かだ」
瓦礫の山を乗り越えながら、俺は乾いた声を漏らした。
かつての繁栄を物語る立派な石造りの建物は無残に崩れ、広場には人影ひとつない。魔王軍――つい先日まで俺を「同情」で養ってくれていた連中がここを滅ぼしたのだと思うと、複雑な気分になる。
「ここは魔王国の支配域だが放置されている空白地帯だ。……ショウ、ここで王国に入るための準備を整えるぞ」
ショーベルの言葉に従い、俺たちは廃墟となった商店を巡り、物資を調達することにした。
俺が真っ先に向かったのは、幸運にも焼け残っていた衣料品店だ。
「よし、ショーベルさん。次は王国潜入です。その『いかにも闇の騎士』な鎧はここで脱ぎましょう。……俺が、完璧なコーディネートを見つけてあげますから」
「この闇の鎧は手放せないぞ」
「ふむ……ではなんとかしましょう!」
俺はアイドル時代の「衣装チェック」の要領で、埃を被った服の中から最高の一着を選び出した。白のブラウスに、深い紺色のロングスカート。そして角を隠すための上質なベール。
「……こんなひらひらした服、戦いづらいのだが」
「戦うためじゃなくて、馴染むためです。ほら、背筋を伸ばして。……うん、やっぱりショーベルさんは『素材』がいいから、何を着ても映えますね」
「……似合っているか?」
頬を染めてベールを直す彼女は、どこからどう見ても高貴な人間の令嬢にしか見えない。 俺もまた、従者らしく見える地味な服に着替え食料の干し肉を鞄に詰め込んだ。
(神様、見てるか。これから俺たちはあんたの膝元へ向かうぜ!)
準備を終えた俺たちは、街の北側にそびえる『図書館』へと足を運んだ。ここなら王国の歴史や地理を詳しく調べられると思ったからだ。
埃の舞う書庫を探索すること一時間。
「……ショウ、これを見てくれ。不自然なほどに風が吹き込んでくる棚がある」
ショーベルが指差したのは、図書館の最奥にある、巨大な石の書棚だった。
俺が何気なく横の壁を調べると――。
ゴゴゴ、と重苦しい音を立てて書棚がスライドし、闇の奥へと続く階段が現れた。
「びっくりした……秘密の入り口? 」
「この下から、妙な魔力を感じる。……ショウ、私の後ろを離れるな」
ステータス1の俺の心臓が、再び激しく鼓動を始める。
古の街の地下に眠る秘密。それが俺たちの旅をどう変えるのか、この時の俺はまだ知る由もなかった。
第10話をお読みいただきありがとうございました! 滅びた街での「着せ替え」と、謎の地下通路の発見。 ショウの「衣装プロデュース」により、令嬢姿となったショーベルとの旅が加速します。
次回、お楽しみに。
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※AIとの共同執筆作品となります。




