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著者:こう「廃校のハロウィンナイト」

 ハロウィンの夜、廃校となった南砺市立第三小学校に、五人の中学生が肝試しに忍び込んだ。校舎は月明に照らされ、風に揺れる紙のジャック・オ・ランタンが窓に貼られていた。誰が飾ったのかは分からない。だが、淳史は「誰かのイタズラだろ」と笑い、仲間を先導した。


 昇降口を開けると、かすかにチャイムが鳴った。誰もいないはずの校舎に、足音が響く。廊下は異様に静かで、空気が重い。理科室の扉を開けると、白衣姿の先生が背を向けて立っていた。誰も声をかけられずにいると、先生はゆっくり振り返った。顔はぼんやりと歪み、目は虚ろ。去年のハロウィンに突如として行方不明になった理科教師にあまりにも酷似していた。


「お菓子は持ってきたか?」と低い声。淳史は得体の知れない恐怖を感じながらもポケットからキャンディを差し出すと、先生は微笑んだ。だが次の瞬間、教室の扉が音もなく閉まり、鍵がかかる。外からは開けることが出来ない。


 廊下には、他の教室からも仮装した教師たちが現れ始めた。彼らは口々に言う。「お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ!」。そのいたずらが何を意味するのか、誰も知らなかった。

逃げようとしたその瞬間、校舎中の明かりが突然消えた。悲鳴が響くと同時に誰かが倒れる音。手探りで進む中、友人の声が次々と消えていく。淳史は震える手でスマホのライトを点けた。目の前には、血のような赤で塗られた「ようこそ、ハロウィンへ」の文字。彼は泣きながら叫んだ。

「やめて!もう帰るから!助けてよ、ママー!」


 だが返事はない。気づけば、彼は一人になっていた。理科室の扉が再び開き、白衣の先生が微笑んでいた。

「君は、素直でいい子だ。君はお菓子をくれたから、生き残れたんだよ」



 翌朝、警察が校舎を調査したが、四人の痕跡は見つからなかった。淳史は錯乱状態で保護され、「トリックオアトリート」「みんな消えた」と繰り返すばかり。事件は未解決のまま、地元メディアでは“怪奇!ハロウィンの失踪事件”として、今日でも語り継がれている。

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