5 お出かけ編
注意:クラシック要素少なめです。
「はぁ、はぁ、はぁ…。遅れてごめんね。待った?」
私は申し訳なさそうに言う。
「いや、大丈夫。」
一ノ瀬君は全然気にしていないようだ。
「遅い~!!もう、早く行こ!綺羅。」
楠木翠さんは一瞬私を睨んですぐ、一ノ瀬君の腕に抱きつき言う。
「まあまあ翠、柳瀬さん睨んじゃだめでしょ。柳瀬さん、気にしなくていいからね。」
私を励ましてくれたのは蒼崎雪くん。
「それより早く行こうぜ!遊園地に!!」
そう元気に行ったのはジャック柳田くん。とても元気だ。うん、元気だ…。
(みんな服のセンス良すぎ…!もう、別世界だ…。)
翠さんはいつもみたいなストレートではなく、髪をふんわりと巻いてカチューシャをつけている。服は翠さんのピンク色の瞳に合った可愛らしい白のブラウスに黒のミニスカートを合わせている。また、一ノ瀬くんは、シンプルな白の半袖のティーシャツと青のズボンに合わせて黒のカーディガンを着て、耳にピアスを付け、カーディガンにサングラスを掛けている。蒼崎くんは、長袖の白いシャツに淡い青色のVネックのベストを組合せ、黒いズボンをはいている。ジャックくんは、黒色の半袖のパーカーに、灰色のズボンをはいて、黒色サングラスを付け、黒の帽子をかぶり、腕には銀色のブレスレットを付けている。
みんなと待ち合わせをした駅は、何だか映画のロケ地のように人がみんなをチラチラ見たり、キャー!という黄色い声だったりと、とても大騒ぎだ。
私の服は肌が焼けないように白と黒のボーダーの半袖のシャツに薄い白の上着を着て、黒色のフレアパンツをはいている。髪は動きやすいようにポニーテールにして、黒のピンで頭の右
(昨日のうちに試行錯誤して選んでおいてよかった~。適当な服で来ていたら今頃どうなっていたことか…。)
さて、なぜ一ノ瀬君と2人で出かけるは予定だったのが、皆で遊園地に遊びに行くことになったのかを説明しよう。それは一ノ瀬君が私を誘った次の日の文化祭の準備中に起きた。
「今日も暑いね~。いよいよ夏本番って感じで部活が暑すぎてつらかったよ~!さくちゃん、私を冷やして~。」
「ゆりちゃんお疲れ様。教室はエアコン効いてるから少しは楽になると思う。保冷剤とかいる?保健室からもってくるよ。」
「ありがとう!でも、エアコンで涼んでいるから大丈夫!」
ゆりちゃんの頬はまだ赤くなっていて、首から汗を少ししたたらせている。汗を拭くゆりちゃんはとても妖艶で文化祭の準備をしていたクラスの男子達はゆりちゃんの仕草に見とれている。
(さすがゆりちゃん。無意識に男子達の視線を集めている。)
この仕草は男子高校生にはやや刺激が強すぎるようで、クラスの半数近くの男子達が顔を赤らめている。そんな中で私たちは文化祭の準備を再会する。私はクラスの看板にペンキを塗っていた最中だったので、ゆりちゃんもペンキを塗ることを手伝ってくれている。そんなとき、少し低い声でゆりちゃんの名前を呼んでいる1人の男子が、私たちの方へ向かってきた。
「百合香も部活終わったのか?お疲れ~!百合香と会えて嬉しいよ。さくちゃんも午前中から文化祭準備お疲れ。ペンキ塗るのを上手いな~。」
「うわ~、綾飛。相変わらず登場の仕方チャラいわね…」
ゆりちゃんは綾飛の言葉に顔を引きつらせながら、周りで綾飛にキャーキャー叫ぶ女子を横目で見ている。
(綾飛くんはそうゆうこと言うのはゆりちゃんだけだと思うけどな。)
先週の金曜日。私はゆりちゃんが家の用事で学校を休んだ日に教室で複数の女子生徒に話しかけられている綾飛くんを見てしまった。その時の綾飛くんは女子生徒に笑顔で対応していたけれど、いつもゆりちゃんと話している時に見せる自然な笑顔ではなく、警戒したよそ行きの人に見せる笑顔だった。
しかも、その女子の中の1人は、綾飛くんをダンスのパートナーに誘っていたが、それも断っていた。チャラくて女の子大好きな綾飛くんはダンスのパートナーを断らないで受け入れるだろうと思っていたが、はっきりと断っていたのでとても驚いて今でも結構印象に残っている。
(綾飛くん、もしかしてダンスのパートナーにしたい女の子がいるのかな?)
私が綾飛くんに聞くために声を出そうとしたときに、クラスメイトの女子に声をかけられた。
「お~い、柳瀬さん。楠島さんが呼んでるよ。」
(楠島さんって、あの楠島翠さん?!学園のアイドル的存在な人ってゆりちゃんが言っていた。私に何の用だろう…?もしかして、一ノ瀬君関連のことだったりして……だとしたらまずい。非常にまずいよ。目を付けられる前に対処しないと私の普通の学園生活が壊れてしまう!)
「ゆりちゃん、綾飛君。私、呼ばれているみたいだから行くね。準備先に進めておいて。」
「分かった!さくちゃんを楠島さんが呼ぶなんて…さくちゃん、楠島さんと何か接点あったっけ?」 ゆりちゃんが不思議そうに私を見ながら言ったが、私は最近起こっている一ノ瀬君に関することをゆりちゃんに話していなかったので、何とも言えなかった。
「さくちゃん、気をつけてね~!俺は百合香と看板にペンキを塗っておくわ。」
綾飛くんは少し嬉しそうに声を上げて言った。
(前から思っていたけど、もしかして綾飛君はゆりちゃんのことが好きなのかな?そうなら、今からの状況、綾飛君にとってはチャンスだね。綾飛君、ファイト!)
私は綾飛君を応援することを心に決めた。私が考えている間も、2人の会話はテンポよく進んでいく。
「いや、綾飛はペンキ塗るの下手だから、向こうの力仕事手伝ってきてよ。さくちゃんと進めたから、もうすぐ看板にペンキ塗り終わるし。」
ゆりちゃんはジトーとした目で綾飛君を見て、冷静に突っ込みを入れていた。
「え~~。俺、百合香と一緒にペンキ塗りたい~。てゆうか、百合香もペンキ塗るのあんまり上手じゃないでしょ。さくちゃんが百合香が塗った所を上手く補正していたの見たんだから。」
進めたから、もうすぐ看板にペンキ塗り終わるし。」
綾飛君はめげずにゆりちゃんを説得しようとしている。
(まるで熟年夫婦のやりとりみたい。お似合いな2人だなぁ。)
そんなことを考えながら、私は翠さんの所へ向かった。
「楠島さんお待たせ。私に何か用事でもある?」
楠島さんは、ピンク色の大きな瞳を私に向けながら手招きをする。
「ここじゃ話しにくいから、場所を変えましょ。着いてきて、柳瀬咲楽さん。」
とても冷たく張り詰めたような声で私に翠さんは言った。翠さんのとても可愛らしい見た目とかけ離れた声に私はとても驚いた。
(翠さん、どうしたんだろう。よほど深刻な話なのかな…?もしかして私、何か気に触るようなことをしてしまったのかな……。あぁ、とても不安だ。)
私は恐る恐る翠さんに言われるがまま着いていった。翠さんは艶のある長い髪をなびかせながらすたすたと早歩きをしている。翠さんにしばらく着いて行くと、天明学園の旧校舎に着いた。旧校舎といっても、ものすごく古
い訳でもなく、むしろ普通の公立高校の校舎といった感じだ。ここは用事でもない限り学園の生徒はほとんど近づかない。ここに来るということは、とても大切な人に言えないようなことを私に伝えたいに違いないと感じた。
「楠島さん、何か私に用事ですか……?」
私は恐る恐る声を少し震わせて尋ねた。
翠さんは覚悟を決めた目でまっすぐと私を見つめ、私に尋ねた。
「柳瀬咲楽さん。貴方、今度綺羅と2人で出かける約束をしたらしいわね。その約束、断りなさい!」
翠さんは激しく、冷たい声で腕を軽く組みながら言った。
「綺羅は私の婚約者になる予定の人なの。しかも私と綺羅は、幼い頃から仲がいいの。もし貴方が綺羅と2人で出かけたとなると、私たちの今後に響くわ。だから貴方、綺羅との約束を断って、金輪際、綺羅に近づかないで!!」
翠さんは最初よりも声を荒げていく。涙を目に含ませながら、私を睨んできた。
(楠島さん、誤解なんだよ~~!!)
もちろん、私に一ノ瀬君と出かける気は端から無かった。だがしかし、一ノ瀬君が強引に逃げ場をなくして(壁ドン)私に語りかけたから(命令した)断れなかったのだ。
(楠島さんが断ってくれと言うなら好都合だ。ちゃんと断っときますと言おう!)
私が決意し、翠さんに伝えようとしたとき、男子生徒達の話し声が聞こえてきた。その声達はやけに透き通る声だった。
「やっぱ旧校舎は人がいなくて落ち着くわ~!なあ、綺羅、雪。」
「そうだね。旧校舎以外の所に行くと今の時期、女子生徒達から追いかけられるもんね。」
「雪、お前の場合は一部の男子生徒からも追いかけられているだろ……。」
一ノ瀬君が冷静に雪くんに突っ込んだ。
「ちょっと綺羅、そのことはジャックの前で言わないでよ。本当に大変なんだから。女子生徒よりも体型とか大きくて、足とか速いからいつも逃げるの大変なんだから。」
雪くんは少し怒った顔で一ノ瀬君の肩を小突いた。
「何それ、雪、面白いことになってるな~!!俺も混ぜてくれ!いいトレーニングになりそうだな!」
ジャックくんは笑いながら、雪くんのの肩に手を回した。
「ジャック……。僕、トレーニングのつもりで追いかけられている訳ではないから。」
雪くんは肩におかれたジャックくんの腕を軽く振り払いながら困ったように言った。その後にジャックくんは、私たちに気づいて、声をかけてきた。
「お~い、翠!!なんでこんな所にいるんだ。お前いつもここに来ないだろ。あと、翠の隣にいる女は誰だ?お前の友達か?」
ジャックくんは私たちの微妙な空気を気にすることなく翠さんにたくさん質問をしている。
ジャックくんは私たちの微妙な空気を気にすることなく翠さんにたくさん質問をしている。
そんなとき、ジャックの隣に雪くんが来て、小声でジャックに忠告した。
「ジャック~!まずいよ。今、翠に話しかけるべきじゃないって…。翠の顔見てよ、とても怒っているよ~~!」
ジャックくんはそんな雪くんの死ぬ物狂いの忠告を無視して、翠さんと私を不思議そうに見ている。
「ジャック、貴方ね…。今、私は貴方とじゃなくてこの子と話しているの。質問なら後にしてちょうだい。」
「今さっき、綺羅とどっか出かけるって言う声は聞こえたけど?」
ジャックくんはまたお構いなしに翠さんに問いかける。そんなジャックくんの態度に翠さんは諦めた様子で、ジャックくんに私と一ノ瀬君が出かけることを話した。
「綺羅いいな~。夏だし、俺達も皆でどっか出かけね?海とか山とか別荘がある場所でどうよ~?」
ジャックくんは翠さんの話を聞いた後に、すぐ一ノ瀬君達に提案していた。
「う~ん、でも、お前ら2人が元々出かける予定だったなら、そこの翠の隣にいるお前も一緒に行かね?」
ジャックくんは私に問いかけてくる。
それを聞いた翠さんはジャックくんを止めようとし、言葉を発しようとしたその時、今までずっと沈黙を貫いていた一ノ瀬君が軽く口を開けて言った。
「それ、いいな。柳瀬、お前も一緒に遊びに行くぞ。」
その言葉に、ジャックくんは喜び、翠さんは一ノ瀬君の言葉には逆らえないようで、苦虫を噛みしめたような顔をしながら私を睨んできた。
(どうして~~!!言ったのは一ノ瀬君だよ…。)
「じゃあ、柳瀬も行くなら近場がいいよな。う~ん、どこがいいんだろ…?」
ジャックくんはしばらく考えて、思いついた場所を口に出した。
「そうだ!この辺りにあるテーマパークに行かない?そこなら日本で一番広いしアトラクションも多いから一日中いれるぞ!」
「それいいね!僕も最近勉強とお稽古で行けてなかったんだよね。綺羅と翠と柳瀬さんはどう?」
雪くんはニコニコの笑顔で私たちに問いかけてきた。
「俺は賛成。」
一ノ瀬君はさらっと言った。
「私も、綺羅が賛成するならいいと思う!柳瀬さん、あなたも勿論賛成よね?」
翠さんは少し自棄になりながら私に問いかける。
(あぁ~、これはもう賛成して行くしかない流れだ~。私の平穏な学園生活が遠ざかっていく…。)
私は皆の方を向いて頷いた。
「じゃあ、今週の土曜日、9:00に駅前に集合な!」
ジャックくんは笑いながら言った。
「なんで駅なの?車でテーマパークの前まで行けばいいじゃない。」
翠さんがジャックくんにそう尋ねると、ジャックくんはドヤ顔で翠さんに言った。
「普通の高校生は車で行かないらしいぜ。あのテーマパークの前まで車で行けるのは関係者だけらしいからな。せっかくだから普通の高校生らしく出かけよう!」
翠さんはその言葉に少し戸惑っていたが、納得したようで、ジャックくんの言うことに従った。
「普通の高校生らしくか~、何か楽しみかも!ねえ綺羅?」
雪くんがわくわくした気持ちで一ノ瀬君に問いかけると、一ノ瀬君も少し笑って頷いた。




