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4 学園祭準備編②

クラシック要素少なめです。


「ねえねえそこの貴方、一ノ瀬くんを見なかった?」

「見てないですけど…。」

「ありがとう!一ノ瀬く~ん、どこにいるの~?」

(綺麗な人だな。)

パートナーが決まった次の日、私は文化祭準備で使い終わった工具を返しに行くために廊下を歩いていた。

(一ノ瀬くんやっぱり人気だな~。でも、バスケ部は夏に大会があるから部活じゃないのかな…?)

天明高校では、部活動が盛んだ。だから、夏休み中は一日中練習を毎日のようにやっている。だから文化祭の準備は夏の大会がない人達を中心にやっている。

「おい、俺を匿ってくれ。」

(え…?どうして…)

「どうして?不審者なんていないよ?」

「いいから!頼む。」

「う、うん…。じゃあ、こっち来て。」

「サンキュ。」

そう言って一ノ瀬くんがこっちの壁に隠れてしばらくするうちに、ドタドタドタと足音が聞こえてきた。

(まさか…)

「そこの貴方!この辺で一ノ瀬くんを見なかったかしら。」

(デジャヴ…!)

前に一ノ瀬くんを追いかけていた女子がまた、私に話しかけてきた。

(この子、私のこと覚えていないのかな~)

「見てないです。」

私がそう言うと、女の子は驚いたように言った。

「あら、おかしいわ。こちらの方に一ノ瀬くんが行くのを見たのに。貴方、本当に見ていないの?」

「はい。」

私をしばらく見つめ、諦めた顔をして去ってしまった。

(ふぅ…。嵐のような人だったな…。)

「もう行ったよ。」

「サンキュ。助かった。」

「毎回さっきのように追いかけられているの?」

「……いや、いつもは追いかけられない。今回は後夜祭のパートナーの件で追いかけられていただけだ……」

疲れたように一ノ瀬くんは私に言った。

「一ノ瀬くんはパートナーいないの?パートナーを作れば追いかけられることもなくなると思うよ。」

「パートナーを作ろうとしても、そんな簡単には無理なんだ。俺は初等部からこの学校にいるが、毎回後夜祭のパートナーを決めるときこういったことになるんだ。いい加減疲れてきたよ。」

(モテる男も大変だな~。)

私は哀れんだ目を彼に向けた。

外からは部活の掛け声や蝉の鳴き声が聞こえてくる。

「そういえば、一ノ瀬くんはもう部活終わったの?」

「ああ、さっき終わったところ。その時に、体育館の入り口辺りで待ち伏せされていたんだ。」

(なるほど。道理で息切れしている訳だ。)

窓から差す夕暮れの赤い光が一ノ瀬君を照らしている。一ノ瀬君の横顔は何だか少し寂しさが感じられた。

(本当に綺麗な顔立ちをしているな~こんなに綺麗なら、相当モテるのも納得かも。)

『そろそろ、下校時刻です。校内に残っている生徒は下校してください。繰り返します…』

「ヤバい?!そろそろ帰らないと校舎が閉まる!一ノ瀬君、またね。」

私がそう言い、その場を離れようとしたその時、一ノ瀬君は私の腕を優しくつかんできた。

「ちょっと待てよ。お前、この後何か用事あるのか?」

「え…?あ、今日はピアノのレッスンがあって無理かも。」

(どうしてそんなことを聞くの…?)

そう私が答えると一ノ瀬君は何かを考えるようにして、私にこう言った。

「お前さ、俺に連絡先教えろ。」

(………?!なんでそんなに偉そうなのよ…。)

「いいよ。はい、これ私の連絡先。」

「サンキュ。」

「どうして私の連絡先が必要なの…?」

そう私が問いかけると一ノ瀬君は少しからかったような顔で私に言った。

「ナイショ。まあ、いずれ分かるよ。」

(何なんだ本当……)

このときの私はまだ知らなかった。この連絡先交換によって私の学園生活がとんでもないことになるなんてことを…。





次の日から文化祭準備の片付けの時となると、私のスマホに一ノ瀬君からの助けてほしいというSOSの連絡が来るようになった。この連絡がくると、私たちはいつも音楽室に駆け込み、女の子達から逃げる。こんなことをかれこれ3週間も続くと追いかけて来る女の子達を覚えてしまったのだ。その代表格が1年の桜坂美空さくらざかみそらさんだ。彼女はいつも、少しウェーブがかかったつやのある髪を揺らしながら一ノ瀬君のことを探している。桜坂さんについてゆりちゃんに聞いてみると…

「桜坂美空さんはね、大手メーカーの社長の娘さんであり、1年の中でも大きなグループのリーダーである人だよ。そのグループ名は『高嶺の桜』。主に桜坂さんのことを慕っている女子生徒で構成されているグループよ。まあ、一部男子生徒もいるけど…。このグループを敵にまわすと高校生活が大変なことになるから気をつけてね。」

「どんなことをしたら目を付けられてしまうの?」

「桜坂さんはね、一ノ瀬君のことを恋愛的にお慕いしているの。それはもう、一ノ瀬君本人も引くほど盲目的にね。彼女、普段は温厚何だけれども、一ノ瀬君が関わると人が変わったようになるんだって。恋は盲目って、まさにこのことよね~。すてき~!!」

(ははは…。ゆりちゃんってこういう感じだったっけ……。)

ゆりちゃんは目をキラキラさせながら私に教えてくれた。

「人の恋を語るのって楽しいわ~!!」

(そうだ、ゆりちゃん恋バナ大好きだったわ…。)

ゆりちゃんが咳払いをして私の方を向き、こう言った。

「とにかく、一ノ瀬君と関わらなければ大丈夫だから。平穏な学園生活を送りたいなら絶対に、一ノ瀬君に関わっちゃダメよ!」

「うん…!分かった。ありがとうゆりちゃん。」

(現在進行形で関わっているなんて絶対に言えない……。)

このことから私は一ノ瀬君とは一定の距離を保つことにきめたのだが…。

「おい、咲楽。今度の土曜に俺と出かけよう。」

一ノ瀬君は私の顎を持ち上げ、腕を壁に押し当てながら言った。

(………!!!これっていわゆる壁ドンって、やつでは?!いや、でもどうして私?!てか、出かけるって何?!)

私の顔は真っ赤に染まり、冷や汗を掻いていた。夏の暑さのせいだと私は思い込んでいたが、心臓の鼓動がいつもより激しかたったことに、このときの私は気付いていなかった…。







読んでくださりありがとうございます。更新遅くなってすみません。今書いている話、とても季節はずれだなと書いているときずっと思ってました。次回も読んでくださると嬉しいです。

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