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王子の夢と滅びの運命  作者: 小鳥遊ゆう
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5 新しい時代の夜明け


父王を退位させたアレクシスは、自らの理想を掲げ、新たな王として歩み始めた。だが、民衆の心は一朝一夕で掴めるものではなかった。


玉座に就いたその日から、彼は朝から晩まで民や重臣との対話に明け暮れた。


王宮の一室で膨大な資料を読み込み、王国全体の問題を把握しようと努めた。


その姿を見た側近のイーゴリは、静かに言った。


「陛下、民の支持を得るには時間が必要です。焦らず、一つずつ結果を見せていきましょう。」


アレクシスはその言葉に深くうなずいた。


「そうだな、すぐには信じてもらえないだろう。しかし、一歩一歩進むしかない。私が民を見捨てないことを、行動で示していこう。」




即位後、優先的に取り組んだのは、飢饉によって困窮した村々への支援だった。


父王の治世では、民衆の生活に関心が向けられることはほとんどなく、貴族たちも私腹を肥やすことに夢中だった。


その結果、多くの農村が疲弊し、飢えに苦しんでいた。


アレクシスはすぐに城の穀倉を開放し、余剰の穀物を分配する命令を出した。また、各地を直接視察し、現地の村人たちと対話を重ねた。


「どうか、お助けください!」


「もう作物がないんです。これから冬が来たら、私たちは皆、凍え死ぬしかありません。」


アレクシスは彼らの声を受け止め、自ら馬車に積み込んだ食料を配る姿を見せた。その際、現地の農民からも直接意見を聞いた。


「王よ、ただ食料を配るだけでは解決しません。この村には耕すための牛も、種も足りないのです。」


アレクシスはうなずき、すぐに農具や家畜を供給する政策を打ち出した。


これが民衆の間で大きな話題となり、次第に彼に対する信頼が芽生え始めた。


民衆の不満の大半は、過酷な税負担に向けられていた。


アレクシスは税率を見直し、特に収穫量の少ない農村には減税を適用した。また、貴族たちが免除されていた税を見直し、一定の負担を求める法律を制定した。


当然、貴族たちからの反発は強かった。


「陛下、貴族たちは国の支えです。このような扱いをすれば、不満が噴出するでしょう。」


「王国の財政が破綻します!」


それでもアレクシスは毅然とした態度を崩さなかった。


「民が飢え苦しむ国に未来はない。貴族としての特権を享受したいなら、民を守る責任を果たすべきだ。それができない者は、王国に必要ない。」


彼の強い意志に、一部の貴族たちは渋々ながらも従い始めた。




さらに、アレクシスは治安の改善にも着手した。


隣国との戦争で荒れ果てた地方では盗賊が跋扈しており、農村部の安全が脅かされていた。彼は各地に民兵を組織し、村人自身が地域を守る仕組みを整えた。


初めは、民衆の間にも不安が広がった。


「我々が武器を持つなんて、そんなことが許されるのか?」


「兵士が来て取り締まるべきだ。」


しかし、アレクシスは現地の村長たちと話し合い、徐々に民兵制度を根付かせた。これにより治安が回復し、安心して暮らせる地域が増えた。




ある日、アレクシスが視察に訪れた村で、一人の老女が彼に歩み寄り、膝をついてこう言った。


「陛下、ありがとうございます。あなたのおかげで、この村は命を繋ぐことができました。」


その言葉に、周囲の村人たちも次々と声を上げた。


「希望をくれたのは陛下だ!」


「これからもこの村を見守ってください!」


アレクシスは膝をつき、老女の手を取りながら言った。


「私を信じてくれてありがとう。これからも皆と共に歩んでいく。」


その日を境に、彼は「民とともにある王」として、支持を広げていった。



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