表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子の夢と滅びの運命  作者: 小鳥遊ゆう
4/10

4 未来への一歩


父王を退位させたその日、アレクシスは玉座の間から広がる王国の未来を静かに見つめていた。


激しい戦いが終わり、玉座を手にした今、彼の心には喜びだけでなく、新たな重責の重みがのしかかっていた。


「王子様、これからどうされますか?」


側近の重臣イーゴリが静かに尋ねた。彼はアレクシスの改革の志に共感し、最後までともに戦った人物である。


アレクシスは玉座を見つめたまま答えた。


「まず、民の信頼を得るために、真に彼らの声に耳を傾ける。税制を改め、飢えた者がいなくなるよう、食料の流通を見直す。そして、兵士たちには適切な報酬を与える。この国を新しく築き直すんだ。」


イーゴリは静かにうなずきつつも、険しい道のりを予感していた。




アレクシスは即位後、まず城門を開き、民衆と直接対話する日を設けた。この行動は前代未聞だった。多くの民が王城に押し寄せ、飢えや税の重さへの不満を口々に訴えた。


「王子様、いや、王よ! 私たちはもう限界です。家畜も作物も全て税に取られ、子供たちが飢えています!」


「一部の貴族たちは豊かな暮らしをしているというのに、なぜ私たちはこんなに苦しまなければならないのですか?」


アレクシスは彼らの言葉を黙って聞いた。言葉のひとつひとつが、胸に鋭く突き刺さるようだった。


「皆の声は確かに聞き届けた。私が新しい法律を作る。その法律のもとで、税の負担を軽くし、食料が公平に行き渡る仕組みを作る。だが、それには時間が必要だ。どうか、共に協力してほしい。」


アレクシスの目は真剣だった。民衆の中から、ぽつりぽつりと感謝の声が漏れ始めた。


「王様がここまで話を聞いてくださるなんて、初めてのことだ。」


「この方なら、もしかすると本当に変わるかもしれない。」


一方で、まだ疑念を抱く者も少なくなかった。「本当に王様を信じて良いのだろうか?」その言葉を聞いたアレクシスは一瞬戸惑ったが、すぐに深くうなずいた。


「その通りだ。私は行動で示そう。」




アレクシスはすぐに新たな政策を打ち出した。


まず、税率を見直し、小作人や農民への負担を減らした。これにより、民の生活は徐々に安定し始めた。


さらに、城の穀倉に貯蔵していた食料を分配し、飢えた者たちの救済を始めた。


これに反発したのは、旧来の貴族たちだった。


彼らは自分たちの特権が侵されることを恐れ、密かにアレクシスを非難する動きを見せた。


「王子、いや、王はあまりにも民寄りすぎる。このままでは我々の立場が危うい。」


「いずれ我々を排除するつもりではないか?」


こうした声を耳にしたアレクシスは、改めて重臣たちを招集し、自身の考えを伝えた。


「私が行おうとしているのは、特権を奪うことではない。だが、民が飢えれば、国そのものが崩壊する。共にこの国を支え、立て直す努力をしてほしい。」


その言葉に、全ての貴族が納得したわけではなかった。しかし、彼の誠実な態度と熱意に、次第に賛同する者が増えていった。


改革は順調に進むかに見えたが、アレクシスには新たな課題が待ち受けていた。それは、国の外からの脅威だった。


隣国が、王国内の混乱を見て侵攻を企てているという報告が入ったのである。


アレクシスはすぐに軍を招集し、防衛策を練り始めた。しかし、その過程でも彼は兵士たちの待遇を改善することを忘れなかった。


長い間冷遇されていた兵士たちは、次第に彼を「真の王」として信頼するようになっていった。


「民を守るために戦う王に仕えることができるのは、誇りだ。」


そう言って士気を高める兵士たちの姿を見たアレクシスは、改めて自分の進むべき道を確信した。




アレクシスの治世は、決して容易なものではなかった。


だが、彼は決して諦めることなく、民衆と共に新しい王国の礎を築き上げていった。


彼の名はやがて、「希望の王」として王国中に広まり、人々の信頼を得ていった。


しかし、彼の前にはまだ多くの試練が待ち受けている。


アレクシスはその都度、民衆や仲間たちと共に、光を掴むために歩み続ける覚悟を胸に秘めていた。


その目に宿る光は、決して揺らぐことはなかった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ