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今日の敵は明日の恋人〜先生に恋をしました〜  作者: RIKA
挿話2

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Revive 6 -Side Ryu-

朝起きたら、昨日は背中を向けたままだった紗妃が、こちらを向いていた。

しかもそれだけじゃない。

俺の片腕に、ぎゅっとしがみ付くようにして寝ていたのだ。


昨日の今日で一体どういうことなのか一瞬分からなかったが、理解するより早く、どうしようもない嬉しさがこみ上げてきた。

まだ紗妃は俺を好きでいてくれている――少なくとも、しがみ付いて眠るぐらいには。

そう思ったら、昨日奈落の底に突き落とされた気分が、遥か高い天国まで一気に浮上していくのを感じた。


眠っている時も泣いていたのだろうか、紗妃の目尻には涙の跡がある。

罪悪感が胸をよぎる。もう二度と、昨日みたいな涙は流させたくない。


起こすつもりはなかったが、その頬に手を伸ばしたら紗妃が少し身をよじった。

そしてそれからゆっくりと、瞬きするように目を開けた。


「おはよう」


努めていつもどおり、笑って言う。


「ん…おはよう、ございます…」


紗妃はまだ半分夢の中らしく、まだ眠いといった様子で目をこする。

そして朝陽が眩しいと言わんばかりにもう一度俺の腕にしがみついて――そこでようやく覚醒した。


「――!!?」


しまった、という心の声が聞こえてくるようだった。

紗妃は状況を把握するなり顔を真っ青にすると、俺の腕から飛び起き、慌てて背を向けた。

恐らくケンカ中にも関わらず俺の腕にしがみついて寝ていた上、それを俺にバッチリ見られたのでバツが悪いのだろう。

そして次に、耳まで真っ赤にしながら顔を両手で覆い、「うう…」と唸った。

その一連の様子があまりに可愛くて、俺は堪えきれず笑ってしまった。


「紗妃」


名前を呼んで手を伸ばし、その肩口にそっと触れる。

紗妃が拒否しないことに心底安堵して、勇気を出してそのまま後ろから抱き締めた。

これも特に拒否されなかったので、あまりの嬉しさにぎゅっと手に力がこもった。

紗妃が腕の中にいる、ただそれだけで、震えるほど幸せだと思えた。

実を言うと紗妃に許してもらえるまであと数日かかると踏んでいたので、こんなに早く触れることができるとは思っていなかったのだ。


やっと腕の中に戻ってきた温もりに、改めて痛感せざるを得ない。

俺はやっぱり紗妃が大事だ。何よりも大事だ。

絶対に失いたくない。何があっても。手放したくない。その為なら何だってする。


「ごめん、紗妃。ほんと馬鹿なことしたって反省してる。もう二度と嘘はつかないし、誘われても風俗には行かない。約束するから、許してくれないか」

「…う、うそ。誘われて行かざるを得ないことだってきっとあるくせに…」


誠意をもって言ったが、紗妃に疑われてしまった。だから言葉を重ねて再度誓う。


「本当だよ。誘われても断るよ。俺は彼女が…紗妃が一番大事だからって言うよ」

「私、そんなつもりじゃ…そりゃ、確かに行って欲しくはないけど…。止むを得ずって言う場合は、ちゃんと行く前に言ってくれれば…。女性に指一本触れず、喋りもせずなら、絶対ダメってことも、ないです…」

「…それ、行く意味なくないか?」

「う…だって先生カッコいいし、話し上手だし…きっとキャバクラのお姉さん、先生のこと好きになっちゃう…。そんなの、絶対ヤだもん…」


口を尖らせて、紗妃が俯いた。

一体なんなんだこの可愛い嫉妬は…。

いやむしろ相手はプロなので、俺より数倍話し上手だと思うのだが。

俺なんかせいぜい理数系の解説に慣れてる程度だよ。


「行かないよ。そのかわり、紗妃が俺のストレス発散してくれる?」

「それは、もちろん…愚痴ならいつだって聞きます」


発散したいのは愚痴だけじゃないんだが、いい流れに向かってるので今は静かにしておく。


「ありがとう。好きだよ、紗妃。愛してる、俺もう紗妃がいないと生きていけないよ」

「お、大袈裟…」

「大袈裟じゃない。もし紗妃に別れようとか言われたらどうしようって、昨日想像しただけで怖くてたまらなかった。もう二度と紗妃が笑ってくれなくなったらって考えただけで…死にそうなくらい、辛かった。だから、俺にもう一回チャンスをくれないか」


紗妃の耳元で、囁くように懇願した。

どうか頷いてくれ。そして俺に笑ってほしい。それだけで俺は救われるから。


「ず、ずるいです。そんなこと言われたら…何も言えなくなるじゃないですか」


紗妃の手が、俺の腕にそっと触れる。

ぎゅっと握りしめてくれるその行為こそが、何よりの答えだと思えた。


「…言わなくていいよ。ただ、愛させて欲しい。傷つけてしまった分、たくさん愛したいんだ」


言いながら、その頬に啄むようなキスを贈る。

すると紗妃は観念したように、ようやく俺をゆっくりと振り返った。

そしてまだどこか拗ねたような可愛い顔で、こう言ってくれたんだ。


「唇にキスしてくれたら、許してあげてもいい…」



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