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今日の敵は明日の恋人〜先生に恋をしました〜  作者: RIKA
第二章

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2-2.ガールズトーク

「…皆、もう大丈夫だよ」


遠ざかっていく足音を確認して、偵察役の子が小さな声で告げた。

それを合図に私たちも布団から顔を出し、にやりと見合わせる。


修学旅行の一日目が無事終了した夜、私の班と他の班の子たち、それぞれ4人ずつ計8人でこの部屋を使っていた。

就寝時刻は21時。でも、せっかくの修学旅行、簡単に眠れるわけがない。

実際、もう23時近いのに誰も眠そうにしていなかった。


「ね、ね。それでさ、さっきの話の続きなんだけど!」

「あ、私もそれ言おうと思ってたの!」

「詳しく聞かせてよーっ」


皆が目を輝かせて話し手の女の子に詰め寄る。

私も身を乗り出して、わくわくした気持ちで耳を傾けた。

女の子が集まったときの話題といえば決まっている。私たちも例に漏れず、さっきからガールズトークに花を咲かせていた。


「で、で?やっぱりサッカー部の堀田君と、サッカー部のマネージャーって付き合ってるの!?」

「らしいよ!私の友達がね、二人が一緒に帰ってるところ見たって!」

「マジかーっ!」

「最近、同じ部活でデキるカップルが多いよねー」

「ほんと。バレー部のエリちゃんも、バレー部の先輩と付き合ってるもんね」

「誰、エリちゃんって」

「ほら、21HRの子!髪が長くてすらっとした…」

「あ、分かった。最近パーマかけた子でしょ?」

「そうそう!」


みんなの話を傍で聞きながら、私は知らなかった情報を次々とインプットしていく。

だけど残念ながら「バレー部のエリちゃん」の顔は私には思い浮かばない。

同じクラスじゃないし、21HRならクラスも離れてる。

でもバレー部はよく部活で練習時間が一緒になることがあるから、知っているはずなんだけど。

バレー部の女の子で、長い髪にパーマかけている子っていたかな…?


「あ、そういえば私、紗妃の噂も聞いたことがある。ねぇ紗妃、ほんとなの?眞中くんと付き合ってるっていう噂!」

「…え?」


"バレー部のエリちゃん"を突き止めようと考え込んでいたところで振られた話は不意打ちすぎて、私は思わず目をぱちぱちさせた。


「あ、私も聞いたことある!眞中くんと紗妃ちゃん、付き合ってるらしいって!」

「えっ」


他の子からも同じことを問われて、ますます私は戸惑った。

でも、そういえば以前、そういう噂があるって先生が言ってたような気がする。


「眞中くんって言ったらさ、けっこうモテるじゃない?バスケ部のキャプテンだし!紗妃ちゃん可愛いし、皆お似合いだって言ってるよ」

「私もそう思う!憧れのカップルって感じ!」

「ちょ、ちょっと待…」

「で、真実はどうなの、原田さん!」

「けっこー前から噂あったよね?」

「私は…!」

「どーやって眞中くんオトしたのーっ!?」


興味津々とばかりに全員に見つめられて、私は完全に困り果ててしまった。

しかもその輝く瞳から察するに、皆は私が肯定するのを期待しているらしい。

でも…真実は違うのに。私が好きなのはたった一人だけなのに。


「その噂、デマだよ」


答えに窮していると、佳穂が助け船を出してくれた。皆の視線が一気に佳穂に向かう。


「確証のない噂を信じるのはやめなって。紗妃にはちゃんと他にいるんだから」

「ええ!てことは眞中くんとは何でもないってこと!?」

「別に彼氏がいるの?」

「あ…ええと、まあ…」


雰囲気に圧されながらそう答えると、皆が一斉に肩を落とした。


「眞中くんじゃなかったのかぁ…」

「ただの噂だったのね」

「ビッグカップルだと思ったのになー」


皆が口をそろえて「残念」というのを佳穂が茶化すように窘めた。


「だめよ、そういうこと言っちゃ。紗妃の彼氏がそういう噂聞いたら、絶対怒っちゃうよ」

「へー彼氏ヤキモチ妬きなんだ?」

「そうそう、紗妃にメロメロだから、あいつは」

「え、佳穂って知ってるの、相手?」

「まあねー」

「ずるーい!ね、紗妃ちゃん!彼氏ってどんな人?」

「え」


またまた話をふられて、答えに窮した。

どんな人、だなんて。一体なんて説明したらいいのだろう…?


「それって高校生?ひょっとして、うちの学校?それとも大学生とか!?」

「社会人だったりして」

「えーっ、それすごーいっ」

「ね、どういう人ー?」


私は少し照れながら慎重に言葉を選ぶ。

ただ先生のことを想いだすだけで、胸がドキドキした。


「え、と…社会人、かな」

「きゃーっ、大人の恋ーっ!?」

「素敵っ」

「仕事は何してるの?」

「え…っ!」


軽く尋ねられた質問のはずなのに、頭が真っ白になってしまった。

だって、仕事って、それこそ教師って言うわけには絶対いかない。


「ねぇ、なんの仕事してる人なの?」


問い詰められたまま答えられずにいると、佳穂がまた私を助けてくれた。


「こらこら、深く問い詰めるのはやめなよ。事情っていうモンがあるのよ、オトナの恋愛には」

「なにそれ!そういうこと言われるともっと問い詰めたくなるじゃーん」

「なによ、じゃあ訊くけどね?そういうアンタこそ、どーなのよ?隣のクラスの北村と付き合い始めたんだって?あんなにあいつは恋愛対象外だって散々言ってたのに。詳しく話、聞かせなさいよ」

「は!?あんたいつの間に!」

「ちょっ…!なんで知ってんのよ佳穂!?」

「ごめんねー、私ネットワーク広くてさー」


皆の話題がどうやら私から他の子の話題に移って、私は一人密かに胸をなでおろした。

佳穂を見たら目が合って、私は「ありがとう」と無声で呟く。

すると私の唇の動きを読み取って、佳穂が肩をすくめて笑った。

そして佳穂は、さっきの子に悪戯な笑みを浮かべて促した。


「ほら、全部白状しちゃいなさいよ。いつ、どこで、どーゆー状況で、恋愛対象外の奴に恋しちゃったわけ?」

「詳しーく教えなさいよ!」

「だ、から、それはぁ…」


さっきまで私を問い詰めていた子は、一転、今度は皆に問い詰められている。

それでもどこか嬉しそうだ。恋をしていることが伝わってきて、微笑ましい。

話題が戻ってこないよう祈りながら、私は笑顔で彼女の恋話に耳を傾けた。


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