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今日の敵は明日の恋人〜先生に恋をしました〜  作者: RIKA
挿話1

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27/64

もっと近くに3

髪を撫でる大きな手の動きを感じて、すーっと引き上げられるように私は意識を覚ました。

目をぼんやりと開けると、目の前には先生の胸。その逞しい腕は私の身体に回っていて、その温もりをじかに感じる。


昨夜、私と先生はついにひとつになった。

緊張とトラウマに震える私を、先生はその都度優しく宥め、待ってくれた。

そして少しずつ、私の心を、身体を解きほぐしてくれたんだ。

やがて先生を受け入れた時、見上げた顔は見たこともないくらいに艶やかで、満たされていて…。

暗闇の中で見つめあい、初めてお互いを与え合った昨夜を、きっと私は一生忘れないだろう。


朝の光が少し眩しくて、私は再び目を閉じた。

触れ合う素肌が気持ちいい。私の髪を撫でてくれているところをみると、先生はもう起きているんだろう。

私もすぐに起きてもよかったけど、もう少しだけ、こうしていたかった。

でも先生は大丈夫かな?腕に私の頭を乗せたままで重くないかな。

そう思いつつも、やっぱりこの瞬間を手放したくなくて。甘えるようにして先生にぴったり寄り添う。

あと5分…ううん、1分だけでいい。幸せな瞬間を、感じさせて。


ぐうぅぅー。


と、突然低い音が先生の体から伝わって、私は一瞬きょとんとした。

今の音って、まさか…?


「…腹へった…」


呟くように上から声が聞こえて、私は状況を理解した途端に思わず吹き出してしまった。

…先生のお腹が鳴ったんだ。無理もない、太陽はもうけっこう高く昇っている。

くすくすと笑いだした私に気付いた先生が、気まずそうに私を覗き込んだ。


「ごめん、起こした?」

私は先生を笑いながら見上げる。

「いえ。えっと…実は、ついさっき」

言いながらも笑いが止まらない私に、先生が顔をしかめる。

「…しょうがないだろう、緊張の上、体力使ったんだから。実家に戻ってすぐ寝ると思ってちょっとしか飯食わなかったし」

「ごめんなさい。でも、なんだか先生らしくて」

「俺らしいって、何が?」

「そういう、なんていうんでしょう、タイミングっていうか、面白さが」

「…別に笑いをとろうとしてないんだけど、俺」

「ごめんなさい。でも…ふふっ」

「紗妃?」


名前を呼ばれたことが、一層くすぐったく感じた。

――そう、昨夜、先生は初めて私を下の名前で呼んだ。

「ずっと呼びたかった、やっと呼べた」と嬉しそうに笑いながら。

聞きなれた自分の名前なのに、先生の声にのると特別な響きに聞こえてくるから不思議だ。

ちなみに私も先生にねだられて名前を呼ばせてもらったけれど、しらふで呼べるようになるにはもう少し時間が必要な気がしている…。


いつまでも笑っていると、先生が諦めたように「もういい」とため息をついた。

呆れられたかな?と少し心配したけれど、瞼にキスしてくれたところを見るとそういうわけではないらしい。


「ところで、体は平気?」

「あ…はい。いや…ええと、ちょっと、筋肉痛な感じです…」

視線を泳がせつつ正直にそう言うと、先生が「そうか」と笑って私を抱きよせた。

「今日の部活は休めばいいよ」

「え…でも」

「無理してぎこちなく動くと皆に怪しまれるぞ。別にいいけど、俺は?」

悪戯っぽくそう言われて、私は更に顔を赤くする。

正直、鈍い痛みというか違和感がまだ下半身にある。そんな中で先生と目が合ったりなんかしたら、いつもどおり振る舞える自信がない。


「…すみません。お言葉に甘えて…」

「うん。俺が帰ってくるまでに回復しておいて。それで、また愛しあおう」

「えっ?」

困惑して見上げると、先生は悪戯っぽく笑った。


「昨日の紗妃、すげえ可愛かった。もう一回見たい。いや、何度でも見たい。だから今夜も見せて」

「えっ!あの、それは…っ」

「大丈夫、今はまだ初回キャンペーン中、ちゃんと手加減するから」

「しょ…!?て、手加減って…っ!」

昨日でさえ私にはハードルが高かったのに、まだ上があるというのだろうか。想像するだけで恐ろしい。

慌てふためく私に先生は声をあげて笑うと、やがて真面目なトーンで言った。


「まあ、というのは冗談で。もちろん、待つよ。二人のペースでゆっくり行けばいい」

「…はい」


そう言ってくれる先生の気持ちがありがたく、嬉しかった。

私は先生を見上げて笑い、その胸に頬を寄せる。

すると、突然先生がぎゅっと私を抱きしめた。


「俺、めちゃくちゃ幸せだ…。これ本当に現実かな、また夢見てんのかな…」

「…"また"?」


ちらりと見上げると、なぜだろう、そこには今にも泣き出しそうな瞳があって。


「こうやって紗妃と抱き合ってる夢。でもいつも途中で目を覚ましてしまって、その度に落ち込んでた。――現実の紗妃は俺のことなんか眼中にもなかったから」

「…先生」

「もしこれが夢だとしたら、今度こそ永遠に覚めたくないんだけど、どうしたらいいのかな…」


気付けば、その声はほんの少しだけ震えていた。

それだけで切ない想いが痛いほどに伝わってきて、私の胸を締め付ける。

いてもたってもいられなくて、私は自分から先生にキスをした。

昨日の夜先生に教えてもらったように甘く深く。夢かもしれないなんて、言えなくなっちゃうぐらいに。


「ちゃんと、現実でしょう?」


キスの後にそう微笑むと、先生は一瞬目を見張って。


「…もう一回紗妃からキスしてくれたら、信じられるかも」


なんて、いつもの冗談めいた口調で笑ったから。

私はもう一度、強気に自分から唇を押し付けた。



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