第二部1
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また、この季節がやってきた。
自分のことではないのに。いや自分のことではないからだろうか。
どことなく、ワクワクとした気持ちでいる。
この匂いも雰囲気も、温かさも。全ての刺激が愛おしい。
中等部に進んだ阿琉斗は体育館に居た。体育館での授業はほとんどなく、演習は野外ばかりだったため、式典場の方が適切に施設の紹介をしてように思われた。
あの桃色の花が咲き誇り、道を染める。
「入場はまだか」
「今移動中だと思う。疲れてきたの?」
「腹が減っただけだ」
体育館の隅。阿琉斗とゲンジ。
阿琉斗は『黒』、ゲンジは『赤』に染まっていた。
2人は来賓の警護で体育館にいた。
合計14人。こちらの壁には、2人ともう1組。
あちら側にも2組いて、入口と壇上に3人ずつ配置されている。
ガラガラ…。
「お、来た」
入口の扉が開かれ、館内から拍手が湧く。
「で、件の少年は何組なんだ」
「1組らしい。1組には問題児を固めている、ってのも聞いている」
「問題児なのか」
「そんなはずは…」
でも、ものすごく不安だ。
アイツが、アイツもこことは。
阿琉斗が入学式警護に手を上げた理由。
それは監視だった。最悪の場合は、拘束・回収。
「あ、あれか…?」
誰も怪我をさせないための立候補。
「あ、アレだ…」
先程まで館内を埋め尽くしていた拍手の音が一時止む。
困惑が「えっ、」という音となって来客者たちから漏れ出す。
皆の目線の先には、1人の少年がいた。
「あれがガイル。小さい頃から仲の良いやつなんだが…。やっぱり」
その少年の目は爛々としていた。しかし自信に溢れた顔で、入場道をまさに闊歩していた。全員大したことねぇな、すぐに喰ってやる。そう言っているようだった。
「阿琉斗?あれはなんだ?」
そして腰からは黒い刀が下がっていた。
「対象を確認しました。」
そういって歩みを進めながら、
「えーっと、先輩方。本当に申し訳ありません。捕えます」
と謝罪の言葉を伝えた。
帰ったら怒られるな。
最悪の1日の始まりを予期した。