異世界兵士1
「……ん?」
前線にいた筈の俺は薄暗い森の中にいた。
俺はローマン・ジェームズ。兵士として前線に出ていた男だ。
戦場では割と活躍し仲間からは【血濡れの狼犬】というご立派な二つ名まで頂いた。ほんと、面白い話だよ。
「いやいやいやいや……何がどうなってんだよ。」
俺は辺りを見渡す。不気味な程までに静かな森の中…。俺は少し嫌悪感を覚える。
(もしかして仲間とはぐれたのか!?冗談じゃない!)
俺は「おーい」と声を上げた。しかし相変わらず不気味に静かな森。俺は仲間はもう近くにいないと判断した。
俺が次に取った行動は持ち物の確認だった。
持っていたのは銃のM1908モンドラゴン、ナイフ、弾薬ポーチ、包帯、そして少しの食糧と見たこともない貨幣だった。
そして不思議な事に弾薬ポーチには銃弾がいっぱいに詰まっていた。しかも取っても取っても全く減らなかった。そして貨幣の方も何処の国かも知らない。
何がどうなってんだよ……。
そう思った瞬間だった。
ガサガサガサ
俺の背後の茂みから音が聞こえた。俺は銃を茂みの方に構える。もしかして敵か……?
そう思った俺はゆっくりと茂みに近づく。
その瞬間だった。
「ガァアアアア!!」
黒い何者かがすごいスピードで襲いかかる。そして何者かは俺へと乗り掛かり凄い力で首を締め上げる。
「グゥウウウガァアアアア!!」
「ガ………カ……ア……」
俺は首を絞められ息が出来ない。やばい……死ぬ……!
俺の視界はどんどん暗くなっていく。俺は薄れゆく視界の中もがきながらナイフをなんとか掴む。
そして俺はそのナイフを闇雲に突き刺した。
「ギャァァァア!?」
喉を締め上げたソレは俺から離れる。刺した部分を見ると血がダラダラと出ていた。
「ゲホッゲホッゲホッ……ハァハァ……この野郎!」
俺は銃を掴みソレに向けて構える。だが俺はソレを見て驚愕した。
(おいおい……マジかよ!?)
銃を向けたソレは1人の少女のガキだった。しかも俺が驚いたのはそのガキには動物のような耳が付いていたのだ。
ガキは傷を押さえながら俺を恐怖の眼差しで見ていた。
「フー…フー…フー」
俺を見ながら息を荒げる少女のガキ…まさしく獣だった。
俺は銃を向けながらゆっくりと近づく。
近づいていくとガキは少しずつ離れていく。だが腹の傷は浅くなく動けば動くほど血はどんどん流れていく。
「おいガキ、このまま無理して動くとお前死ぬぞ!」
俺はガキにそう言う。だがガキは聞く耳を持たない。身体を引きづり少しでも離れようとする。
仕方ない……。お前は銃を下ろしてガキに走って近づく。
そして俺はガキの腕を掴んだ。
「おい止まれって!止血してやるから。」
「ヒッ………!?」
ガキは涙目になりながら俺を見る。俺はそれを無視してガキのボロボロになった服を捲り上げる。
「ウッ!?」
お前はガキの身体を見て思わず声を上げた。ガキには刺した傷以外にも痣や火傷の跡などが大量に残っていた。
俺はその身体を見て黙り込む。そして無言で持っていた包帯でガキの腹の傷を止血した。
「……終わったぞ。」
俺はガキの腕を離した。少女のガキは俺を不思議そうに見ていた。そして片言な言葉で言った。
「………ア……リ……ガト……。」
こいつ…ちゃんと喋るじゃねぇか。そう思いながら俺を包帯しまった。
「お前、名前は?」
俺はガキに名前を聞いた。少女は声を震わせながら小さい声で言う。
「セ……レス…、セレス……と申します。」
セレスか……、良い名じゃないか。そう思いながら俺はある事を聞いた。
「なんでお前みたいなガキがこんな森にいるんだ?あぶないだろ。」
するとセレスは暗い顔をして答えた。
「親が……死んでしまって……それで……奴隷商に捕まって……連れていかれそうになって……逃げました……」
そう言いながらセレスは泣きそうになる。俺は慌ててセレスに謝った。こんな小さいのに親が死ぬって辛いな……。
俺はそう思いながらこれ以上は何も聞かないようにした。
気がつけば辺りは夜になっていた。やはり深い森なだけあって不気味に静かだな改めて思う。
とりあえず、明かりの確保だな。俺は森に落ちていた木の棒を拾い集める。そして拾い集めた木の棒で焚き火を作った。
やっぱり明かりはいいもんだな……。暗い森の中で俺はしみじみと思った。
その時、グゥーと腹の音が鳴った。そういえば何も食べてないな。俺は持っていた食糧のビスケットを取り出す。
俺はそのビスケットにかぶりつこうとした時だった。
「…………。」
セレスが無言で俺のビスケットを見ていたことに気づく。俺は少し考えた後、持っていたビスケットをセレスに渡す。
「腹減ってるんだろ、食えよ。」
「え………いいんですか………?」
「………あぁ。」
そして渡した途端、セレスは凄い勢いでビスケットを食べ始めた。セレスは食べながら
「ありがとう……ありがとう……。」
と、涙を流しながら終止言い続けていた。
どうやら、かなりの間何も食べてないなかったようだった。
そしてセレスはものの数十秒でビスケットを平らげた。
「ありがとうございます……。貴重な食糧だったのに……。」
「大丈夫、俺は腹減ってなかったから。」
まぁ、本当はぺこぺこだが……。そのことは俺の胸の奥にしまった。すると初めてセレスの方から俺に話しかけてきた。
「あの……お名前はなんで言うんですか……?」
「ローマン・ジェームズだ。まぁ、何処にでもいるような兵士だよ。」
「ローマンさん……ですか……。」
それを聞いた後は、特にセレスは何も聞かなかった。
そして数時間後、俺に睡魔が来た。
そろそろ寝るか……。俺は目をこすりながら地面に寝転がる。
俺はセレスに言った。
「明日、俺は街を探す、お前はもう好きな所に行っていいよ。」
「あ……はい……。」
それを聞いたセレスは小さい声で返事した。
それにしてもここは何処なんだ?
そう思いながら俺は深い眠りについた。
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