猫と財布を間違える
両親は俺が幼い頃に死んだ。
それから俺は腫れ物に触るように扱われて親戚にたらい回しにされていた。転校を繰り返していたため、友達もいない。
つまり俺は天涯孤独だ。
誰にも頼らないで1人で平穏に生きていく。それで誰にも知られずに静かに死んでいく。
そう決めていた。はずなのに、どうして、、、
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「やっべ バイト」
そう呟いた俺は学校の校門から自転車で出てきた。
現在時刻は5時26分。5時半からバイトなのに間に合わないかも知れない。
なんで遅刻しそうかって?学校で財布を無くして探してたからだ。結局財布なかったし、今日何食べればいいんだよ。
そんなことをもはや新幹線並の速度で自転車を走らせる。
この下り坂を降りればコンビニに、、、そう思っていたところだった。目の前に黒猫が通りかかった。やばい、轢くっ。
そう思った時。その黒い生き物は消えていた。あれって思ったその時、目の前に黒い財布が落ちていた。そう、俺の財布だ。朝、道端に落としたのであろう。反射的に拾おうとすると、、、
あれ、横に倒れていく、、、なんで?
そう、俺は大切なことを忘れていた。
自転車に乗っていることを。
そのまま俺は自転車と共に横転した。