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サンタさんは少年をじっと見つめて、穏やかな声で言った。

「パトリックよ、お前さんはサンタになりたいんじゃよな。」

「はい、そうです。僕の目標はサンタさんみたいな立派なサンタになって、世界中の子供たちに夢とプレゼントを届けることです」

「それじゃったら、1人の子供に深入りしてはならない。サンタは皆に平等でなければならないからの」

「深入りなんてしてないです。ただ、この子があまりにも…」

「パトリックよ。お前さんが私の見習いに入ってどれくらい経った」

「今年でちょうど150年です」

「今まで1人の人間に、それほど深入りすることもなかったじゃろう。どうしたんじゃ」

「そっそれは…」

「母親のことでも、思い出したか。お前さんの母親は少しこの子に似ておるからの」

「ママンとは全然似てないです!もっとしっかりしてましたし、いつも働きづめで、僕たち兄弟のために朝から晩まで働いて…病気でどんどん痩せ細っていて、それでも笑うような気丈な女性でした。ママンが亡くなって、弟たちも次々に動かなくなって、僕もようやく天に召されると思ったときに救ってくれたのがサンタさんです」

パトリックはその当時のことを思い出したのか、震える声で言った。


「だから!僕は立派なサンタさんになって、あなたの後を引き継ぎたいと!」

パトリックは拳を握ってサンタさんを見た。

「ワシはまだまだ隠居せんぞ」

サンタさんがおもしろそうに笑った。

「もちろんです!まだまだサンタさんには教えていただきたいことがたくさんあります。この子のところへ来るのを禁じるのであれば、僕はそれに従います。だいたいママンは、この子みたいに自分のことばっかり考えて、自分がかわいそうで泣くなんて、自分本位なことはする人じゃなかったです。いい大人が泣くなんて!」

「ふむふむ。そういうところがかわいらしくて、守ってあげたいと」

「そんなこと言っていません!」

シー!とサンタさんは、口の前に指を当てた。

「そんなに大声を出したら、この子が目を覚ましてしまうじゃろう」

「あっ!」

パトリックは、口の前に両手を持ってきて、口を塞いだ。

そういうところが素直でかわいいのう、とサンタさんは目を細めた。


「とっとにかく、僕たちはこの子に愛をあげることはできません。もうすいーつを食べ終わったのなら、早く行きましょう。サンタさん手伝ってください」

「やれやれ、せっかちじゃのう」

サンタさんは、よっこらせっと立ち上がると、弥生の体を軽々と持ち上げて、ベッドに横たわらせた。

パトリックはそれを悔しそうな顔で見ている。

「お前さんが望めばいつでも大人の姿をとることはできるじゃろうに」

「いえ、僕はまだまだ未熟な人間です。大人の姿になることなんて…」

「怖いか、お前さんの父親と同じように、自分が暴力を振る人間になるかもしれないのが」

パトリックはうつむいて唇をかみしめた。

サンタさんはため息をついて少年の頭をポンポンと叩くと、窓を開けた。

「いずれ時は来る。パトリックよ、お前さんのこの子に対する執着心。それはな」

「そっそれは…?」

パトリックは不安と期待を込めた目でサンタさんを見た。


「すとーかーと言うのじゃよ」

「……すとーかー…」

パトリックは呆然と立ち尽くした。開いた窓からは、冷たい風が部屋の中に入ってくる。

「そんなつもりは僕はないです!」

「世の中のすとーかーというものはな、みんなそういうことを言うんじゃよ。乙女の部屋に無断で入ってはならない。サンタが人の家を訪れることができるのはクリスマスイブだけよく覚えておきなさい」

いつも笑顔を絶やさないサンタさんが真顔で言い含めた。

「…はい、ごめんなさいサンタさん」

しゅんとしたパトリックに表情を和らげたサンタさんは続ける。

「無断で入らんでも、いんた—ふぉんを押して玄関から入れてもらえばよいじゃろうに。この子も話し相手がいたら喜ぶと思うぞ」

「そんな…僕みたいな怪しげな人間にドアを開くなんて絶対にだめです!女性の一人暮らしなんですから。この子は時々鍵をかけ忘れて寝ちゃうんですよ!」


分かった、分かった、やれやれと呟いたサンタさんと、プリプリまた怒り出したパトリックは、ベランダに待機しているトナカイのソリに乗り込んた。

「困ったもんじゃのう。じゃが、恋はそういうものなのかもしれんの」

「なっ!恋じゃないですよ!!!」

パトリックは大声で叫んだ。

「ホーホーホ—」

サンタさんは声を上げて笑うと、ソリを滑らせた。

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