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死神公爵に「おまえを愛することはない」と言われましたが、我が栄光のチルちゃん軍にお任せください!  作者: 雷雨
第2章 国王陛下と我が栄光のチルちゃん軍

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第30話 信頼に必要なもの

なんだか、すごく書き上げるのに時間がかかってしまったけれど、ここからはサクサクっと行きたい。という希望を皆様にお伝えする作者。

私の面接は勢いが良いのだ。


「あなたは右の列に並んでちょうだい。ええ、そうよ。右の列よ。はい、次の人。ふんふん。あなたは左の列に並んでちょうだい。はい、次の人。ふんふん。あなたも左だわ。はい、次の人」


私はシモーヌが連れてきた三十人の侍女たちの面接を、ぐいぐいと進めていった。


チルちゃん軍も面接が終わった侍女達の(まと)う闇と、ムチムチと戦っている。


丸い背中をこちらに向け、えいっと光の槍を刺すチルちゃん。ふっくらとした手で弓を構え、光の矢を飛ばすチル友ちゃん。みんな可愛い。あー可愛い。


チルちゃん達の可愛らしさの真価は、戦いの時に現れるのかもしれない。戦っている真剣な顔のチルちゃん達は、あー可愛い。


指先の玉ちゃんも、機嫌の良さそうな光をピカピカさせていた。もちろん、玉ちゃんも丸くて可愛い。丸こそ正義。あー可愛い。


可愛いチルちゃん達を愛でながら、ご機嫌に面接を続けていると、シモーヌが、綺麗に白粉を塗り込んだ眉間に薄っすらと皺を寄せ、尋ねてきた。


「これは何をしているのかしら?エルサ様」


私はにこやかに答えたのだ。


「もちろん、面接ですわシモーヌ様」


「・・・これが?ただ顔を見て、適当に左右の列に並ばせているだけではありませんか」


「まあ、シモーヌ様。適当に並ばせているわけではありませんわ。もちろん理由はありますのよ。厳正な面接の結果、屋敷に残る侍女を決めているのですわ。はい、次の人。ふんふん。左の列へ。はい、次の人。あなたも左の列へ」


「お待ちなさい」


シモーヌの眉間の皺が深くなった。


「どちらの列が屋敷に残す侍女の列なのですか」

「右ですわ」


私の即答に、シモーヌの眉間の皺が更に深くなった。

だから、私は微笑み言ったのだ。


「大丈夫ですわよシモーヌ様。今のところは右の列には、まだ五人しかいませんが、これからですわよシモーヌ様。きっと、もう少し増えますわ。

はい、次の人、前へ。ふんふん。あなたは左よ。はい、次の人。あら、あなたも左だわ。左の列へ」


「お待ちなさい!これのどこが面接なのですか?顔を見ているだけではありませんか!」


シモーヌが怒鳴り声を上げた。

最近私が出会う年配の女性は、短気な人が多いのだ。でも、私は短気な女性が嫌いではない。むしろ好きだ。

それで私はまたシモーヌに微笑んだのだ。


「見ているのは顔だけではありませんわ。はい、次の人」


次の侍女は、少し高慢そうな顔をした若い侍女だった。

「あなたは左よ。はい、次の人」


帰る方の列に仕分けられたその若い侍女は、なんとシモーヌをジロリと見た。

シモーヌは勢い良く立ち上がった。


きっと、シモーヌは不遜な態度の侍女を怒鳴りつけると思ったのに、何故かシモーヌは私を睨みつけ、私を怒鳴り付けたのだ。


「お待ちなさい!エルサ様。あなたは良い侍女の選び方が分かってないようですね。

まあ、エルサ様のお育ちを考えれば仕方のない事なのでしょうけれど。ええ。もちろん、私は全て知っておりますよ。あなたの父親の事も、あなたの父親の罪もです。・・・恥ずかしい!

あなたも田舎暮らしで、貴族としてのまともな教育など受けていないのでしょう?

いいでしょう。私が教えて差し上げますわ。甥と結婚してしまったのですもの、仕方がありません。

まずは良い侍女の選び方からです。

顔が気に入らないなどの馬鹿げた理由で選んではいけません。今、あなたが左の帰す列に入れようとした侍女は、大変優秀な侍女です。この屋敷に残すべきです。残しておきなさい。いいですね。

さあ、そこの侍女。右の列に行きなさい。そして、公爵家に尽くしなさい」


高慢そうな若い侍女は、ツンとした顔で一礼すると、右側の列に向かおうとした。


「あら、いけませんわ。あなたは右に行っては駄目よ。あなたは左の列だわ」

私は上品な公爵夫人らしい笑みを浮かべて見せた。


言われた侍女は探るような視線を私とシモーヌに向けた。優秀な侍女は、そんな視線を主人に向けたりしないのだ。本当に無礼な侍女だ。


それなのに、シモーヌは私の方をまた睨みつけたのだ。


「何故、私に逆らうのですか?公爵家の侍女の選び方など、あなたに分かるわけがないでしょう!?あなたなどに!

ああ、忌々しい。甥が罪人の娘と結婚したと聞かされた時、私は気を失いそうになりました。

偉大なる陛下の深い思慮は、私のような者には理解出来ませんが、結婚する前に知っていれば、どんな手を使っても反対したものを!

ええ。今となっては、もう、遅いですわね。

ですから、私が今から、少しは恥ずかしくない程度にしてあげようと言っているのです。

あなた!さっさと右の列に並びなさい!」


シモーヌはどうしてもその不遜な侍女を、この屋敷に入れなくてはいけないらしい。

怒れるシモーヌに指差された侍女は、ツンとした顔をして、また右の列へ行こうとした。

でも、私は再度言ったのだ。


「いけませんわ。あなたは左の列よ」


シモーヌから怒りと共に魔力が漏れ出し、部屋がまた軋み出した。

高慢だった若い侍女も青ざめ立ち尽くしていた。

他の侍女達だって青ざめ、立ち尽くしているのだ。


私はドーナッツのおかわりが欲しかったのだけれども、今は誰も持ってきてくれそうになかった。

でもチルちゃん軍だって部屋の隅に駆け込み、エルビスと一緒に震えていたから、急いで魔力を作る必要はないのかもしれない。

一人だけ血気盛んな雷のカトリーヌが、私の後ろから進み出て来ようとしたけれど、私は手で制した。

私はシモーヌと喧嘩がしたいわけではないのだ。


「シモーヌ様。今回、私が侍女を選ぶ基準は、シモーヌ様が信頼している侍女か、否か。ただ、それだけですわ。私はシモーヌ様が信頼している侍女をここに残したいのです」


シモーヌの魔力がまた膨らんだ。本当に短気な人なのだ。


「何をふざけた事を!今日初めて会ったあなたに、私がどの侍女を信頼しているかなど、分かるはずがないではないですか!」


「分かりますわ」


私はまた微笑んだ。

「選ばれた侍女をご覧ください。ええ。右側の列に並ぶ侍女たちです」


シモーヌが血走った目で、右側の列を見た。

よく見た。

シモーヌの魔力が揺らぎ、部屋中に膨らんでいた魔力がすっと消えていった。


「・・・エルサ様。あなたは何を?」


何をって、私は本当にただシモーヌが信頼している侍女を右の列に並ばせただけなのだ。


「私は、信頼には時間が必要だと知っているだけですわ。初対面の相手を深く信頼するなど、難しいですものね」


そう。私は、シモーヌと同じような闇を同じだけ付けている侍女を、右の列に並ばせているだけなのだ。

きっと、彼女達は、シモーヌが自らの屋敷から連れて来た侍女達なのだ。


左の列の侍女達は、皆、深く濃い闇をたっぷり付けていた。シモーヌとは違う、異質の闇だ。この闇は、私の流行の教師、ジョルジュが先日纏っていた闇に似ていた。


濃い闇がたっぷりある大貴族の屋敷から、この侍女達は来たのだ。

シモーヌを通して、侍女達を送り込んできた大貴族様は、侍女達に何をさせるつもりなのかしら。うふふ。

でも私にこの侍女達を受け取るつもりはないのだ。面倒だから。


シモーヌが恐ろしいものを見る目をして私を見るので、爽やかに微笑んで見せたのだ。


「面接を続けましょう。でも、面接などしなくとも、どの侍女が残されるのか、シモーヌ様には分かるはずですわ。さ、そこのあなた。立ち止まってはいけません。左の列に行きなさい。今すぐ。では、次の人、前へ」


そこからは誰にも妨害される事もなく、面接を終えたのだ。

右側の残る列に並んだのは、全部で六人の侍女だった。


「クロディーヌを呼んでちょうだい」


侍女長である嵐のクロディーヌは、キビキビと部屋に入ってきた。


「左側の侍女達には帰りの準備をさせてちょうだい。右側の侍女達は、シモーヌ様からお借りした侍女達なの。今日から彼女達の事、お願いするわね」


「おまかせくださいませ、奥様」


クロディーヌは覇気のある声で答えた。


軍隊のように使用人達を率いるクロディーヌに任せておけば、全ては上手くいくのだ。


「では、あなた達、ついてきなさい」


クロディーヌは心細げな侍女達を、たちまち連れて行ったのだ。

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― 新着の感想 ―
久しぶりに更新分を読ませてもらい、笑いを堪えるのと(ミスドにて)エルサと料理長とクロディーヌのかっこよさに痺れていました笑 暑さが厳しくなっていますが、お身体に気をつけて。更新楽しみにしています!
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