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死神公爵に「おまえを愛することはない」と言われましたが、我が栄光のチルちゃん軍にお任せください!  作者: 雷雨
第2章 国王陛下と我が栄光のチルちゃん軍

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第16話 暇なのは誰だ?

「カトリーヌ。どうしてこの部屋を使っているの?狭いし、窓もないわ」


「この部屋を見て、お分かりになりませんか?調べものをするならば、この部屋は最適です。歴代の執事たちの覚え書きも置いてございます。この部屋で全て足りるのです」


「外部からも、この部屋へ持ち込んだ物があるのでしょう?」


「・・・何か、お疑いなのですか?新しく雇う物達の推薦状や、他家にいる知り合いからの手紙などしかございません。何もやましい物はございません!」


カトリーヌは身に纏う闇が消えても、変わらず雷のカトリーヌだった。

元々、短気なのだろうと思う。


でも、やましい物はございません、ねえ。


机を見れば、チルちゃん達が机に上がり、闇を刺してくれているおかげで、少しだけ闇が減っていた。

積み上げられた紙の束が、少し白く見えていた。

その中に、気になる物があるのだ。


「この机の上に置いてあるのは?」

「ですから、推薦状や手紙です!」

「見てもいいかしら?」

「・・・」


一瞬、カトリーヌの勢いが止まった気がした。

目を向けると、大きく息を吸ったカトリーヌが馬鹿丁寧に話し出した。


「そのようなものをご覧になりたいのであれば、どうぞ、奥様のお気が済むまで、ご自由にご覧になってくださいませ。しかし、貴族からの手紙もありますが、読み方が分かりますか?貴族独特の言い回しなどもありますが、奥様に書かれている意味が理解出来るか、どうか」


ふんふん。なるほど。抵抗している。

やはり見られたくないものが、ここにあるのね。


「見させてもらうわ。カトリーヌ。あなたはこの椅子に座ってちょうだい」

「奥様を立たせて、私が座るなど、そのような事」


これを三度繰り返すと、やっと不満げに座った。


机に向かうカトリーヌは、膝の上に固く握った手を置き、怒りの籠った目で私を見上げてきた。


「座りましたが、なんでございましょう」

「教えてもらいたい事があるのよ。これと、これと、これについてよ」


机の上の紙の束から、三つ抜き出し、カトリーヌの前に並べてみせた。


ふと、思い付いてやっただけなのだ。


しかし、並べられた紙を見たカトリーヌが、悲鳴のような声をあげながら、椅子から転げ落ちていった!


「だ、大丈夫!?」


こんな反応は予想してなかった。

まさか、雷のカトリーヌが椅子から転げ落ちるほど驚くなんて!


駆け寄ると、カトリーヌは床の上から唖然とした目で私を見つめていた。


「・・・どう、して?」


どうしてって何?


正直なところ、私は何も分からないのだ。

積み上げられた紙の中から、元の紙が見えないくらい闇が絡まった紙を選んで抜き出し、並べただけなのだ。


「・・・何を、知っているの?」


何をって、何も知らないのだ。


選び出した紙に何が書かれているのか、まだ読んでないし、読めないのだ。

紙の表面に闇がびっしり絡まってるから、読もうとしても全然読めない!


でも、カトリーヌが驚いている今、核心を突いた事を言えば、きっとカトリーヌから情報が引き出せる。


ええと。

その為には、まず、あの紙に書かれている文字を読まなければ。

その前に、まず、紙を覆う闇をどうにかしなくては。

その為には、ええと、ええと、ええと!

まず何をすればいいんだっけ!?


でもカトリーヌを床に転がしてはおけないから、まず、椅子に座らせてあげなくちゃ!


焦りながらも、私は信頼出来る奥様の顔をして、

「大丈夫?カトリーヌ。起き上がれるかしら?」と、カトリーヌに手を差しのべた。


「お、奥様」

急に弱々しい老人めいた声を出し始めたカトリーヌに手を貸し、椅子へ戻す。


「どこか痛いところはない?」

「は、はい。大丈夫でございます」


よし。今のうちに!


テーブルの上に置かれた、闇に覆われた紙を手に持った私は、何気ない風を装い、辺りを見回したのだ。


チルちゃん達ー!

誰かー!

手が空いてる人ー!

力を貸して!この紙に絡まってる闇を先に消して!


でも、皆、目の前の闇を消すのに忙しそうだ。

誰も、こちらを見てくれない。


「奥様?」

カトリーヌに戸惑いの言葉をかけられたけど、何も返せない。

この紙に書かれた内容が分からなすぎて、ハッタリも言えないのだ。


ええと、どうしようかな。

ええと、ええと!

玉ちゃんも心配になったのか、ピカピカと激しく光りはじめた。



その時。



暇な光の戦士を探し求める私の目に、一人の光の戦士の姿が入ってきた。


チルちゃん軍の弓矢部隊員だ。

弓を引き、机の上の闇を狙っていた。

けれど、それをやっている場所が、雷のカトリーヌの膝の上なのだ!


それ、座ってる?

場所的にちょうど良かったから、またがってるだけ?


信頼した人の膝にしか座らない光の戦士の、信頼判定はどっちなの?

信頼してるの?してないの?

カトリーヌが信頼できる人なら、これからの戦法だって変わってくるのだ。

さあ、どっち?どっちなの?


「奥様?」

カトリーヌの膝の上を凝視する私に、また戸惑いの声がかけられる。


でも、今、忙しいのだ。黙っていて欲しい。

さあ、どっちなの!?光の戦士よ!


カトリーヌの膝の上の光の戦士は、私の視線に気付き、不思議そうに見上げてきた。

むっちりした顔を軽く傾げ、大きな目を何度か瞬かせた後、はっ!と気付いたように目を見開いた。


そして、分かったというように、何度か頷いてみせ、嬉しそうにカトリーヌのお腹にもたれ掛かり、満面の笑みを浮かべたのだ。

「チルチルチル!」


判定出たのね!?

それ、完全に座ってるわよね。

座ってるでいいのよね。


それなら、カトリーヌは信頼出来る人だ!


「カトリーヌ!」

喜びいっぱいで名前を呼んだ瞬間、眩しい光が私の目を刺してきた。


今度は、何!?


なんとか、うっすらと目を開け、光の方を確認すると、闇に塗れた数枚の紙を持つ私の指先が、強く、激しく輝いていた。


もちろん、私の指が光るわけがない。

光っているのは、私の指先に勝手に住み着いた玉ちゃんだ!


急激に体中の魔力が、玉ちゃんに吸い上げられてていくのを感じる。

途端に、グーグーと激しくお腹が鳴る!


ちょっと!

玉ちゃん!

急に何をやってるの?

どうして、そんなに光ってるの?


あ!

もしかして、私が助けを求めたから?

チルちゃん軍が、みんな忙しそうだから?

一番暇な玉ちゃんが頑張ろうとしてる?

すごくやる気を出しちゃった?

光の戦士になる気なの?


玉ちゃんの輝きが増す。

魔力がもっと吸い上げられる!


思わず目を閉じ、光から顔を背け、玉ちゃんがいない方の手で目を覆う。



「どうされたのですか、奥様?」

動揺したカトリーヌの声が聞こえる。


カトリーヌには、この光が見えてないのだ。

何か答えようとしたけれど、空腹感に崩れ落ちそうになる。

必死で机に手を付き、体を支えた。


カトリーヌが、ガタガタと椅子から立ち上がり、私の肩に手をかけた。


「大丈夫ですか?奥様!?」

「だい、じょうぶ、よ・・・」


ゆっくりと目を開くと、あの眩しい光はきえていた。

自分の体を支える為に、強く机に押し付けられた自分の手が見えた。

その指先で、玉ちゃんが申し訳なさそうに、弱くチカチカと光っていた。


玉ちゃん・・・・。


辺りはすっかり変わっていた。


玉ちゃん付きの手で、しっかりと握りしめた、あの闇に包まれていた数枚の紙からは、闇が綺麗に消えていた。

机の上にあった闇も綺麗に消えていた。

それどころか、部屋中の闇が消えていた。

天井の汚れまで綺麗になっていた。

心配そうに私を見つめるカトリーヌの目の下のクマまで消え、頬が薔薇色になっていた。

チルちゃん達も、いつもの倍は可愛く見えた。


玉ちゃん、凄かったのね。

闇も消してくれたし、ありがとう。

でも、やり過ぎじゃないかしら。

私、もう魔力がほとんど残ってないわ。

おやつも何も持ってないのに。

どうしよう。


部屋中に、私のお腹が激しくグーグーと鳴り続ける音が響き渡っていた。

玉ちゃんはまた、申し訳なそうにチカチカと光ったのだ。


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