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死神公爵に「おまえを愛することはない」と言われましたが、我が栄光のチルちゃん軍にお任せください!  作者: 雷雨
第2章 国王陛下と我が栄光のチルちゃん軍

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第15話 対カトリーヌ戦

雷のカトリーヌは、孫のローズに良く似ていた。


ローズに歳を取らせ、薔薇色の部分を(くす)ませ、目の下にクマを入れれば、カトリーヌが出来上がる気がした。


数日前のカトリーヌは、呪いの消えた旦那様に会えた喜びで輝いていたのに、今日はその輝きも消えていた。


顔色は確実に悪くなっていた。

そしてかなり不機嫌だった。



カトリーヌはつんと顎を上げ、見下すように私を見つめた。


「奥様。用がある場合は、ローズにでも申しつけてくだされば、私どもの方から伺います。奥様は、使用人の場所などに気軽に来てはなりません。そう言った事を、これまで学んでこなかったのですか?」


ふんふん。

「あなたの執務室を見たかったのよ。だからここに来たの。それに、あなた達が面会を希望してるとローズに聞いたの。私は話を聞きに来たのよ」


私はにこやかに答えたのだが、カトリーヌは苛立たしげに言ったのだ。


「ですから!それは私どもが奥様の部屋に出向きお伝えする事でございます。奥様の方から使用人の部屋に来てはいけません。奥様はもう公爵家の人間なのです。御自覚ください。まったく。ご実家ではどのような教育を受けられていたのやら」


カトリーヌは顔を歪ませた。

私はそんなカトリーヌを隅々まで眺めたのだ。

ほーほー。


そして微笑んだ。


「分かったわ。カトリーヌ」


「では。お部屋にお戻りください」

カトリーヌは嫌味なほど大仰な仕草で、私の後ろに続いている廊下の奥を、差し示した。


だから、私はまた微笑んで言ったのだ。


「違うわ。あなたの言い分が分かったと言ったのよ。話はあなたの執務室で聞くわ。入れてちょうだい」


そこのところは決定なのだ。

もちろん、ものすごく睨まれた。

雷がちらちらと、カトリーヌの後ろで見え隠れしている気がした。

ふんふん。


怒りたければ、怒ってくれて構わない。

怒りも雷も、それほど問題じゃない。


問題なのは闇なのだ。


今日のカトリーヌは、ねっとりとした闇を纏っていた。

カトリーヌが出てきた執務室からも、闇が零れ落ちている。


すでに戦いは始まっているのだ。

私の後ろから光の矢がカトリーヌに向かって飛んでいく。

ムチムチとした後ろ姿のチルちゃんも、槍を構え、私の前を進んでいる。

チル友ちゃん達も武器を出し進んでいる。


頑張れチルちゃん軍。

でも、うーん。どういう事だろう。


この屋敷の闇は、我が栄光のチルちゃん軍が、丹念に消して回っていたはずなのだ。

カトリーヌが出てきた部屋の闇も、それはそれは綺麗に消してあった。

するとこの闇は、カトリーヌが公爵家に来た後に、新しく現れた闇、という事になる。

でも、数日前のカトリーヌに闇はなかった。だから、この闇はカトリーヌが連れてきた闇じゃない。


じゃあ、この闇は、どこから来たの?

ねえねえ、君たちは、どこ出身?


「これだから、お育ちの悪い娘など、公爵家に入れるべきではなかったのです」


カトリーヌが絶え間なく何か言っているけれど、私が欲しい言葉は、闇の出身地についての答えなのだ。


それに、この闇は、昨日ジョルジュが付けてきた闇とも似ている気がする。

すると出所は同じだろうか。

うーん。分からない。

ねえねえ、君たちは、どこ出身の闇なのよ?


我が栄光のチルちゃん軍は、この闇も、手際良く消していた。

可愛らしくてカッコいい。


「何度言わせれば分かるのですか。いつまでここでいるのです?お部屋にお帰りになってください!」


カトリーヌは激昂しているけど、大丈夫よ、カトリーヌ。

安心して我がチルちゃん軍に任せてほしい。

私は朝食もまだ食べていないし、おやつも持っていないけれど、この程度の闇なら、手持ちの魔力で、チルちゃん軍がなんとかしてくれる。


だから、私はカトリーヌに向かって力強く頷き言ったのだ。

「それじゃあ、カトリーヌの執務室に入りましょうか!」


「・・・・はあ!?何を!?私の言った事が聞こえてないのですか!?」とか言われたけど、大丈夫。

「任せてちょうだい」

私は信頼を獲得する為の自信たっぷりの微笑みを浮かべながら、執務室の扉に手をかけたのだ。


「おやめください!」


でも、開けた。


「奥様!」

カトリーヌが駆け寄る頃には、私はもう執務室の中に入っていた。


でも・・・・うーむ。


開いた扉の中にある部屋は、部屋というより物置だった。

窓もなく、漆喰が雑に塗られた四方の壁には、粗末な棚が取り付けられており、そこには羊皮紙の束や、簡素な装丁の本、紐で括られた紙の束などが詰めこまれていた。

魔道具のランプが、天井から一つ、もの寂しげにぶら下がっていた。


部屋の隅には、小さな机と椅子があった。

おそらくカトリーヌが使っているのだろう。


その机の周りは、恐ろしく散らかっていた。

机の上や、机の周りの床の上に、紙の束が高く乱雑に積まれていた。


他人にも自分にも厳しそうなカトリーヌらしからぬ散らかりようだった。

そして、机の周りには、あのねちっこい闇がたっぷりとあったのだ。

ここに闇の元となる何かがあるのだろうか。


振り返り、カトリーヌをみると、怒りを抑え、立っていた。


「私は公爵様のために、ここで仕事をしていたのです。片付ける暇などありませんでした」


ふんふん。

言い訳をしている。

この散らかり方は、カトリーヌにとっても不本意なのだ。

不本意な事をしてしまうのは、おそらく、闇のせいでもあると思う。

闇は人を、少しおかしくするのだ。


でも、今、カトリーヌの纏っていた闇の最後の一欠片に、光の矢が当たり、「チルチルチル!」と歓声の中、消えていった。


闇のないカトリーヌとなったのだ。

相変わらず、苛立たしげに私を睨んでいるけれど。


チルちゃん軍は『さて、この人の闇は消しちゃったけど、次はどうしよう』といった顔をして、部屋の中を見渡した。

そして、机の闇へ目を止め、『じゃあ次はあそこね』といった顔をして、スタスタと歩いていく。


指示されなくても自ら動くチルちゃん軍。

その成長ぶりに、胸が熱くなった。

おまけに、むっちりとした頼もしい後ろ姿が、可愛らしくもカッコいい!


ふふふ。

さて、それでは机の闇はチルちゃん軍に任せて、私は闇の出身地の謎の方を解いていこう。

闇は机に上に特に分厚くあるように見えた。

多分、あの机の上にある何かが、闇の出所なのだ。


チルちゃん軍は、既に激しい攻撃をしている。

朝食抜きでおやつも持っていない私の魔力が最後までもつかしら、という疑問には気づかないふりをしてカトリーヌへと向き直った。


大丈夫。きっとなんとかなる。

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