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死神公爵に「おまえを愛することはない」と言われましたが、我が栄光のチルちゃん軍にお任せください!  作者: 雷雨
第2章 国王陛下と我が栄光のチルちゃん軍

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第13話 涙がぽろり。再び

「では、また明日、お勉強しましょうね。私のお友達。うふふ」


授業が終わると、友達ジョルジュは頭の羽根を盛大に揺らしながら去っていった。


「チ、チルチルー!」

「チルチルチルー!」


チルちゃん達は、ジョルジュ(の羽根)が見えなくなるまで、名残惜しげに叫んでいた。


ジョルジュにも、この熱狂を味わってもらいたかったな。

あなた(の羽根)は、うちの光の戦士達に、これほど愛されているのだ。


でも、うーん。


「チルチルー!」


叫び、手を振るチルちゃん達の後ろ姿を眺めながら、私は深く深く考え込んでいた。



こんなに熱狂しているのに、やはりチルちゃん達は最後まで、ジョルジュの膝の上に座ろうとしなかった。


チルちゃん達は、信頼出来る人の膝にしか座らない。

チルちゃん達は、ジョルジュの事を信頼できないと判断している。

チルちゃん達の信頼判定は外れた事がない。


それなら、そんなジョルジュの助言は信頼出来るの?


うーん。


多分、ジョルジュには嘘があるのだ。

でも、嘘なんて私もつく。

嘘よりも、もっと信頼出来ない何かがジョルジュにはあるのだろうか。


うーん。考えたって分からない。


ジョルジュの助言通り、私は騒々しく考えた方がいいのかもしれないし、やめた方がいいのかもしれない。

オーフェリアのように心の読める人は、いるかもしれないし、いないかもしれない。


確実な事実として分かっているのは、今日、ジョルジュが闇に塗れて現れた事だけなのだ。

ジョルジュは、我が公爵家に来る前に闇に溢れた場所に行って、そこでたっぷりと闇をつけて、公爵家に現れたのだ。


どこに行っていたのか聞いても、ジョルジュは誤魔化していた。

闇に溢れた場所で暮らしていても、旦那様みたいに善良さを保てる人はいるけれど、そんな存在は稀有だと思う。

だから、おそらく、ジョルジュがそこで会った人物は、碌でもない人物なのだろう。

ジョルジュが助言をくれるほどの。


それはやはり、オーフェリアのように心の読める人物なのだろうか。

今後私が会う可能性のある人物なのだろうか。

それともすでに我が公爵家に何か仕掛けている人物?


うーん。やっぱり考えたって分からない。


どちらにしても、注意深くしていよう。

そして、ジョルジュを大切にしよう。

ふふふ。


チルちゃん達が信頼しない相手だろうとも、ジョルジュが軽い気持ちだったとしても、私たちは友達になったのだ。

私は友達を大切にしている。

私の友達になったからには、ジョルジュは私に大切にされる運命なのだ。

嫌と言っても、大切にしてみせる。


今後の方針を決めて、思考から現実に戻ってくると、指先の玉ちゃんが私の注意を引くようにピカピカと光っていた。


不思議に思い、辺りを見ると、見送りが終わったチルちゃん達が、ビシッと一列に並んで私を見上げていた。


あ、魔力ね。

戦ったものね。

いいわよ。

たっぷり魔力をあげるわ。

私も夕食をいっぱい食べるわよ!


その夜、やる気に満ちた私とチルちゃん軍は、また料理長に涙をポロリと流させたのだ。


 ☆


「ねえ、ルイス。さっきは守ってくれようとしたの?」


料理長を泣かせ、夕食を終えた後、私は私室のソファーに座り、側に控えていた護衛ルイスに話しかけた。

チルちゃん達は、私の膝の上やソファーの上でゴロゴロしていた。

ローズは、忙しく動いていた。

だから、会話は聞かれていなかった。


友達ルイスは一歩、私に近づき、ローズの方を気にしながら、小声で答えてくれた。


「さっきって、あのチャラチャラ生きたいって言ってた奴の授業の時か?」

「それそれ」

「俺は護衛だから、そりゃ守るよ」

「ふふふ。ありがとう」


お礼を言ったのに、ひどく呆れた顔をされた。


「ありがとうじゃないよ、奥様。あのさあ、ちょっとは気をつけろよ。あいつ、思ったよりヤバそうな奴だっただろ。俺、あの時、マジで剣を抜いて脅そうかと思ったけど、あいつ、一応、子爵家の当主だろ。抜くの悩んだよ、マジで。いや、マジでヤバそうな時には抜くけどさ。ほんと、なんなのあいつ」


「まあねえ。嘘つきなのは確かよね」


「嘘なんて、誰でもつくし、どうでもいいんだよ。問題はさ、ヤバいか、ヤバくないかよ」


「・・・なるほど!」


ルイスに言われて気がついた。

ヤバさかー。なるほどねー。

チルちゃん達の信頼基準も、その辺りにあるのかもしれない。


「なるほどじゃないよ。あんたさあ、あんな奴と友達とか言ってたけどさあ、ちょっとは気をつけろよ。これから、あんなヤバい奴ら、いっぱい現れるぞ」


「分かった、気をつけるわ」

私はニコニコと答えたのだ。


もし、チルちゃんが膝に座る基準がヤバいかヤバくないかなら、私はヤバくない人なのだ。

チルちゃん達にヤバくないと思われているのは、なんだか嬉しい。

ふふふ。


「何、ニヤニヤしてんだよ」

「うふふ。ねえ、ルイス。私ってヤバくないんでしょ?」


私は期待に満ちた目をして、当たり前だろ、と言う答えを待ち構えていたのだ。

それなのに、ルイスはマジマジと私を見つめた後、

「ヤバいに決まってんだろ」と言ったのだ!


「え?」


「え?じゃないよ。奥様がヤバくなかったら、他の誰がヤバいんだよ。いいか、よく聞けよ、奥様。死霊にしがみつかれながら口喧嘩するような奴は、誰が見たってヤバい奴だ。そうだな、奥様に比べたら、あの子爵様はヤバくない。普通だ」


「マジで?」

目を見開き尋ねると、

「マジで」

と、真面目な顔で返された。

えー!


「で、でも、死霊にしがみつかれたなんて、過去の話でしょ。今の私はどうなの?ねえ、今の私を見てちょうだい。ヤバくないわよね」


舞踏会の為に、日々、真面目に学んでいる私は、もうヤバくないはずだ!


それなのに、ルイスは鼻で笑っただけだった。

なんで?

こんなに努力しているのに?


衝撃を受けた私に、ルイスは少し哀れんだ目を向け、肩をすくめた。


「まあ、奥様は最初に会った時から今までずっと変わらずヤバいけどさ、ちゃんと護衛するから安心しなよ。俺だって、だりーけど、マジ頑張って訓練してんだしさ。あんな子爵程度だったら、どうにかしてやるからさ」


「だりーけど」


私は、なんとなく、耳についた言葉を言ってしまっただけなのだ。


「だりーけど?」

背後から、静かな女性の声がした。


チルちゃん達が一斉に立ち上がり、ソファーの陰に隠れた。

恐る恐る振り返ると、ローズが静かに立っていた。

そして静かに聞いてきたのだ。

「だりー、と言うのは、どう言う意味なのですか?」


「え?」

私は動揺しながら立ち上がった。

隣でいたはずのルイスを見ると、いつの間にか壁際まで下がり、真面目な護衛の顔をして虚空を見つめていた。


「え?」

どう言うこと。私、今、ルイスに見捨てられてる?友達なのに?護衛なのに?守ってくれるって言ったのに?


「奥様。だりーというのは、どういう意味なのですか?」


静かにローズが迫ってくる。


「え?あの。私。よく知らないわ。ルイスが言っていたのよ。私、だりーなんて言ってないわ」


「いいえ。私は確かに聞きました。奥様は、だりーと言っておりました。ルイス。あなたも、だりーと言っていたのですか?」

ローズが静かにルイスへと問いかけた。


「いいえ。私がそのような言葉を言うはずがありません」

ルイスは、キリリとした表情で、ローズの目を見て言ったのだ。


嘘つきだ!嘘つきがいる!


「奥様。ルイスは、このように言っておりますし、私もルイスが言っているのを聞いてはおりません。たとえ、ルイスが言っていたとしても、奥様は、だりーなどと言うべきではありません。分かりますね」


「もちろんよ!分かるわ!」


分かると言ったのに、ローズは許してくれなかった。

ものすごく怒られたのだ。

涙がポロリと溢れるほどに。


許さない。

私はルイスを許さない。

絶対に・・・・

ドロドロとした暗い怒りの中、私は復讐を決意をしたのだった。


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