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死神公爵に「おまえを愛することはない」と言われましたが、我が栄光のチルちゃん軍にお任せください!  作者: 雷雨
第2章 国王陛下と我が栄光のチルちゃん軍

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第5話 どっちが勝った?

「お食事については、奥様がご満足されるものをご用意するよう、料理長に申し付けておきましょう」


何か説教めいた事でも言われるかと思っていたのに、クロディーヌはあっさりと引き下がった。

だから私もあっさり「お願いするわ」と言ったのだ。



そしてその後、私達は見つめ合った。

身じろきもせず、見つめ合った。


何故そんな事をやっているのかと聞かれても、クロディーヌが見つめてくるからだとしか言えないのだ。


クロディーヌは威圧感に満ちた表情で、静かに私を見つめてきた。

きっとこの沈黙は、ある意味、主権争いの一つなのだ。

居心地が悪くなるのは負けで、口を開くのは逃げなのだ。


でも、私はこういった勝負は得意だった。

夜まで見つめ合っても平気だった。

幼い頃から、チルちゃん軍と闇を消しながら領内中をどうにかしてまわり、死霊さえも、どうにかしてしまった今となっては、吹き荒れる嵐と見つめあうことくらい、どうという事でもないのだ。


途中で、チルちゃん達が恐々と出てきて、私達の間を横切った。


邪魔だ。


私たちが、ぴくりとも動かないのを知ると、不思議そうな顔をして、私達の間に境界線のようにずらりと並び、ぴょんぴょんと飛び上がったり、波のように揺れたりもした。


邪魔だ。


ソファーをよじ登ってきて、私の、ほっぺをツンツンしたりもしていた。


邪魔だから。


それでも、私は動かず、クロディーヌと見つめ合った。

お互いを、見つめて見つめて見つめ続けた。


勝負が終わったのは突然だった。

クロディーヌが堪りかねたように、目を逸らしたのだ。


「それで?何か分かったの?」


口を開いたのは私の方が先だった。

だって、私は奥様なのだ。それぐらいしてあげたっていい。


クロディーヌは苦く微笑んだ。


「エルビスの言う通り、奥様が揺らがない方だというのはわかりました」


エルビスの言う通り・・・・?エルビスの言うことなんて、嫌な予感しかしない。


「・・・もしかして、死霊がどうとか言っていたかしら?」


クロディーヌは嫌そうに顔を歪めた。


「はい。言っておりました。奥様が、死霊にしがみ付かれながらも、死霊に喧嘩を売り、『おまえのツラ、マジ笑える』と挑発した上で『弔いの鐘の()が聞こえるだろう。おまえの為の鐘の()だ』と言い放ち、死霊を滅ぼしたと称賛しておりました」


言った覚えのないセリフがまた増えてる!


「わ、私はそんな事は言ってないわ」


断固として否定したのだけれど、疑わしそうな目で見返され、

「そうでございますか」と、どうでもいいように言われたんだけどエルビス!


勝っていたはずなのに、エルビスのせいで、何だか投げやりな気分になってしまった・・・。

その間に、クロディーヌは背筋をピンと伸ばし直し、自らを立て直してしまったのだ。


「奥様は、その揺るぎない心で公爵様に取り憑いた死霊を滅ぼし、公爵様を呪いから救ってくださったのでしょう。公爵様が生まれた時からお側でおりました私からも、感謝をお伝えいたいします」


たいしてありがたくなさそうにクロディーヌに言われた。


「無理しなくったっていいのよ、クロディーヌ。あなたは光の戦士の事も、死霊を滅ぼした事も、信じてないのでしょ?きっと、運よく、呪いが消えた時に、私が公爵家に来たのだと思っているのでしょ?」


その通りです、と書かれた顔で、「そのような事はございません」とクロディーヌは言った。


私はため息をついたのだ。


「取り繕うのはやめましょう。時間はないわ。舞踏会に向けてこれから忙しくなるのでしょう?それで、今日は何の為にここへ来たの?何か言いたい事があれば、今、言ってちょうだい。聞きたいことがあれば、今、聞いてちょうだい」


クロディーヌは一瞬迷うように視線を揺らした後、真っ直ぐ私を見つめて聞いてきた。


「奥様は、何を一番に考えていらっしゃるのですか?」


私はまた、ため息をついたのだ。


「クロディーヌ。遠回しに聞くのはやめてちょうだい。あなたは、何を聞きたいの?」


「私が聞きたい事は・・・。私は公爵家に戻りました以上、何よりも公爵家を、公爵様を第一に考えて動いております。奥様はどうなのですか?」


なるほど。

私が何を考えているのか知りたいのね。


「私は、光の戦士達に好きなだけ闇を消させてあげる事を、一番に考えているわ」


クロディーヌの中の嵐が、膨らんだ気がした。


「・・・・公爵家の事も、公爵様の事も二の次だとおっしゃるのですか?」

「そうよ」私は正直に言った。


「公爵様の事を一番大切にしてはいないと、おっしゃるのですね」


「それは違うわ、クロディーヌ。アレクシスの事はとても大切に思っているわ。でも、どちらが私の手助けを必要としているかという事なのよ。光の戦士達は私が手助けしなくては闇を消しに行けないけれど、アレクシスは私の手助けなしでも動けるでしょう」


「光の戦士とやらが!」と、クロディーヌは声を荒げかけたが、ピタリと動きを止め、目を強く閉じた。

再び目を開けた時には、怒りを押さえつけた後らしく、妙に静かな目つきで私を見つめてきた。


「いいですか、奥様。よくお聞きください。私には光の戦士様が見えません。ですから、その事に関しては、よくわかりません。しかし、私にも良く分かっている事があるのです」


クロディーヌはそこで言葉を止めると、まだ燻る怒りを逃すように、長く深く息を吐き、話を続けた。


「私に分かっているのは、公爵様にかけられた恐ろしい呪いは、他の貴族達を公爵家から遠ざけていたという事です。良い方も、悪い方も、全てを遠ざけていたのです。しかし、呪いが消えた今、これまで呪いを恐れ近づけなかった者達が、公爵家へ近づいてこようとするでしょう。そして悪い者達は、幼い頃から塔の中で暮らしていらっしゃった公爵様を、容易い相手だと考えているかもしれません。今は、私たちが全力で公爵様を守る時なのです。隙を見せてはいけません。完璧に準備を整えるのです。奥様にも、公爵様の事を第一に考えていただきたいのです!」


最後には堪えきれなくなったのか、嵐のクロディーヌは声を荒げ、私を睨みつけていた。


なるほど。


嵐のクロディーヌは、どういった人なのだろうと思っていたけれど、彼女は情熱を、旦那様を守る事へと向けている人らしい。

私の味方ではないようだけれど、それはどちらでもいい事だった。


私はにっこり微笑み、「分かったわ」と言ったのだ。


「分かった、のですか?」

クロディーヌは、戸惑ったように聞いてきた。

「ええ。分かったわ」

私はまた頷いて見せたのだ。


「あなたは旦那様の味方なのね。私も旦那様の味方だわ。私達は同じ方の味方なのよ。それなら上手くやっていけると思うわ」


何か言いたげに私を見つめるクロディーヌに、私は続けて言ったのだ。


「それで、まずは、あなたにお願いがあるの」

「は、はい。何なりと申しつけてくださいませ」

「では、その椅子に座ってちょうだい」

「はあ?椅子ですか?しかし、主人の前で椅子に座るなど」

「違うのよ。試してみたい事があるの。だからその椅子に座ってちょうだい」


疑わしげに私を見つめながら椅子に座るクロディーヌ。


よし。

さあ、どうなの?


私は穏やかに微笑んで見せながらも、心の中では息を呑んで見守っていた。


先程から、チル友ちゃんが一人、クロディーヌの足元まで近づき、不思議そうに見上げていたのだ。


こ、これはどうかしら。

あの光の戦士は、クロディーヌの膝の上に座るのかしら。


ドキドキしながら見つめたのだ。


チル友ちゃんは椅子に座ったクロディーヌをしばらく見上げた後、徐によじ登り初め、しばらく膝の上に立ち、クロディーヌの顔を見上げたていたが、突然、ストン、とその膝に座ったのだ!


私は勢いよく立ち上がって、クロディーヌに駆け寄った。


「あなたを信頼するわ!クロディーヌ!」

「はあ!?」


チルちゃん達は、信頼できる人の膝にしか座らないのだ。

座ったのなら、クロディーヌは信頼できる人なのだ!


「突然、どうしたのですか?」


戸惑うクロディーヌに、「聞きたいことがあるのだけれど」と更に詰め寄った。


「は、はい。何なりとお聞きくださいませ」

「求婚の言葉を教えてちょうだい」


この人の求婚の言葉を聞きたくなったのだ!


クロディーヌは、しばらくの間、口を開け、本当にぽかんとした顔をして私を見ていた。


「求婚の言葉?わた、わた、私の、ですか?」

「そうよ。あなたの求婚の言葉を教えてちょうだい!」


目を輝かせながら聞いたのだ。


クロディーヌは、またしばらくポカンとした後、急に顔を引き締め言ったのだ。



「幸せにしてあげる」



私達は見つめあった。


「それは、クロディーヌと相手の方の、どちらがどちらに言った言葉なのかしら?」


クロディーヌは、先程までのボカンとした顔が嘘のように、不敵に笑って言ったのだ。


「私が、夫となる人に言ったのです」


胸がキュンとなった。

この人に付いて行こうと思った。


こうして私は、クロディーヌの指揮下に入る事を決めたのだ。




2章のストーリーを考え直していたので、投稿が遅くなってしまいました。

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