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死神公爵に「おまえを愛することはない」と言われましたが、我が栄光のチルちゃん軍にお任せください!  作者: 雷雨
第2章 国王陛下と我が栄光のチルちゃん軍

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第4話 対クロディーヌ戦

ヌルヌルの対面から一夜経ってみれば、屋敷は、すっかり変わっていた。


目覚めた時から違っていたのだ。


侍女のローズは、いつものような笑みもなく、精一杯澄ました顔をして、背筋をピンと伸ばし、「奥様、おはようございます」と挨拶をしてきた。


ふんふん。


朝の支度も、いつもならローズ以外にも何人か、気楽な感じの侍女達がやって来て、私とお喋りをしながら楽しく行われていたのだけれど、今朝は皆、揃って背筋をピンと伸ばし、美しい仕草や、完璧なブラッシング、完璧なクリームの塗り方を熱心に探求し、無駄話などしなかった。


ほーほー。


朝食を取る為、部屋を出ると、廊下が隅々まで輝いていた。

きっと、恐ろしいほどの完璧な掃除が、昨日、行われたのだ。

チルちゃん達も、昨日までと違う廊下を、不思議そうに眺めていた。


ふんふん。


廊下で私を待っていた護衛のルイスも、いつもの気楽な様子はなく、緊張した面持ちで、直立していたのだった。

そして何も喋らないまま、私の後ろに付き従った。


ほーほー。


「ねえ、ローズ。どうして全てが昨日と違うの?何があって、こうなったの?」


食堂に向かいながら、ローズに聞いた。


「奥様。そのような話し方は、公爵家のご婦人として」と、ローズが、澄ました顔で注意しかけたが、私は片手を上げて、遮った。

「分かったわ。それで?何があって、こうなったの?」


ローズは、私を更に注意すべきかどうか、一瞬迷うような視線を寄越して来たけれど、結局、説明しなければ私が引き下がらないだろうと思ったのか、澄ました顔をして説明を始めたのだ。


昨日(さくじつ)、母クロディーヌが、侍女長となりました」

「なるほど」


全てが分かる、的確な説明だった。


昨日の私はヌルヌルしていたので、嵐のクロディーヌと(いかずち)のカトリーヌから、挨拶を受けた後すぐ部屋を出たのだ。

私が、あの部屋を出る時、今からエルビスも交えて、今後の打ち合わせをすると旦那様が言っていた。


きっと、その話し合いの中で、嵐のクロディーヌが侍女長へ二十一年ぶりに舞い戻る事になり、この屋敷はクロディーヌの指揮下に入ったのだ。


隅から隅まで納得した。

クロディーヌの指揮の元、この廊下で、このローズで、このルイスになったのだ。


「祖母カトリーヌも、相談役として、しばらく屋敷に滞在する事になりました」


ほーほー。

(いかずち)のカトリーヌも残ったのね。

それなら、皆の緊張ぶりも納得できる。

雷だもの。怖いわよね。

分かる。分かる。分かるわ。みんな。大変そうだけど、頑張れ。みんな。


そう他人事のように考えていた私だったのだけれど、いつものように朝食用のテーブルに付き、出された料理を見た瞬間、私にも影響が及んでいる事を知ったのだ。


「これは何かしら」


背筋をピンと伸ばして立っている料理長に、私は聞いた。


「は、はい。奥様の朝食でございます」


サラダと果物と卵とパン。

皿の上に、美しく優雅に盛り付けられたそれらが、私の前に、ちょっぴり、あった。


「これは何かしら」


私はもう一度聞いてみた。


「は、はい。あの、いつもの朝食をご用意しようと思ったのですが、侍女長に、そのように大量にお出しするなど何事かと怒られまして。あの。貴族のご婦人が食べるような朝食ではないと、言われまして。その」


「なるほど」と私は頷いた。

「確かに、いつもの食事は、貴族のご婦人が食べるような朝食ではないかもしれないわね。確かに、これが貴族のご婦人が食べるような朝食だわ」


料理長は驚いたように、目を大きく見開いた。


「そ、それでは、このような朝食で良いのですか?」


「いいえ」と私は微笑んだ。

「貴族のご婦人が食べる朝食としては、これで良いわ。でも、私が食べる朝食としては、どうかしら」


料理長は、更に大きく目を見開き、満面の笑みを浮かべたのだ。


「そうですよね!奥様!それは、奥様の朝食としては、おかしい。明らかにおかしいのです!奥様が、その程度で、満足出来るはずがない!私も、そう思っておりました!そしてご安心ください。いつもの朝食も、ちゃんと用意しております!ふふふ。やはりこうでなくては!さあ、皆んな!本物の朝食を奥様の元へ!」


食堂の扉が大きく開き、大量の料理が運ばれてきた。

もちろん、ドーナッツもちゃんとある。

今日のドーナッツは、粉雪のような砂糖がかけてある。美しくて、美味しそうなドーナッツだった。それが山のように積んであるのだ!


「ふふふ。さすがね、料理長」

「ふふふ。当然でございますよ、奥様」


ふふふ。ふふふ。チルチル!チルチル!


笑い合った後、ぺろりと食べた。

チルちゃん達にも、たっぷりと魔力をあげた。


大満足の、素晴らしい朝食だった。


正直なところ、闇がほとんどなくなってしまい、チルちゃん達も戦う事が少なくなった今、以前ほど魔力を作る必要がなくなってはいるのだ。


でも、私達は二ヶ月後、舞踏会に出席する為、王宮に行かなくてはいけない。

王宮なんて、どう考えたって闇が多いに違いない。

私は王宮に備えて、チルちゃん軍の強化をするつもりだった。


たっぷり魔力をあげて、ひと回り太らせてしまいたい。

ふふふ。王宮。待っていなさいよ。ムチムチとした我が栄光のチルちゃん軍が、あなた達の元へ訪れるその日を!



 ☆



そして、朝食後、私は嵐のクロディーヌと対峙している。


部屋に戻ると、ローズを通して打診があったのだ。

今から改めてご挨拶に伺いたいと。

二人きりで、今後について打ち合わせがしたいと。


ふんふん。


きっと何かの意図があるのだ。

でも、いいわよ。受けて立つわ。


私はにこやかに、クロディーヌを受け入れたのだ。


 


部屋に挨拶に現れたクロディーヌは、昨日よりも戦闘力を上げていた。


ふわふわとした茶色の髪は、昨日よりも高く固く、頭の後ろでまとめられていたし、身につけているのも、真新しく、威厳を感じる侍女長の御仕着せだった。

そしてクロディーヌは、今、背筋をピンと伸ばし、侍女長らしい畏まった表情の中から、探るような視線を私に寄越してきたのだった。

きっと、戦うつもりでここに来たのだ。


ふふふ。でも、私が勝たせてもらうわよ、嵐のクロディーヌ。

こういう事は、最初が肝心ですものね。


私も昨日よりも戦闘力を上げてあった。

今日の私はヌルヌルしていないし、貴族のご婦人らしいドレスも着ている。更に、ローズに頼んで、軽く化粧直しまでしてもらっている。

そして、貴族の奥様らしく優雅にソファーに座ったままで、クロディーヌを迎え撃っているのだ。


勝つ準備は出来ている。

チルちゃん達も、とっくにソファーの後ろに隠れている。


最初の攻撃は、当然、奥様である私から始めたのだ。

「クロディーヌ。あなたが侍女長になってくれて嬉しいわ」と微笑みながら言ったのだ。


「精一杯努めさせていただきます」

クロディーヌは無難に返してきた。


私は続けて攻撃をする。

「朝食の事だけれど、私は食事から魔力を作り、光の戦士達に魔力を供給しているのよ。クロディーヌが料理長に勧めたあの食事では、必要なだけの魔力が作れないわ。だからこれからも、いつも通りの食事を続けるわよ」


「光の戦士達・・・」とクロディーヌが言った。


よし。クロディーヌの表情は変わっていないけれど、声は多少戸惑っていた。

私の攻撃が通ったのだ。


「ええ。アレクシスから聞いているのでしょう?私が光の戦士達と共にアレクシスの呪いを消した事を」


旦那様の事を、当然のようにアレクシスと名前で言ってみた。

どうかしら。旦那様との仲を強調する、この追加攻撃は。


「はい。公爵様に伺ってはおります。今も、ここに、光の戦士様はいらっしゃるのでしょうか」

「いるわ」

私は、にこやかに辺りを見渡した。


もちろん、私の視線の先に、光の戦士達は一人もいない。みんなソファーの後ろから、コソコソとこちらを見ているのだ。でも、そんな事、クロディーヌには分からないのだ。

私は誰もいない空間を、たっぷりと時間をかけて眺めた後、「光の戦士達の為にも、食事は今まで通りのものをいただくわ。いいわね」とクローディーヌに微笑みかけた。


さあ、クロディーヌ。次はあなたの番よ。どう出るの?何処からでも受けて立つわ!


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