とある世界の御伽噺「激昂姫様」
これは、はるか昔に、魔王を産む原因となったことから、誠実に重きを置いているルナティア王国という国のおはなし。
この国には、3人の王子様と、1人のお姫様がいました。
”情熱”の第一王子であるライディオは、現在17歳。勇猛果敢で、魔物討伐に熱心です。その為、国民の人気が最も高い王族です。
”淡然”の第一王女であるブリュンヒルデは、現在17歳。ライディオとは双子です。落ち着いた美しい女性です。しかし、国民には失敗をした者をあっさり処刑する、最も恐れられている王族です。
”英知”の第二王子であるレオナルドは、幼少期空想家と馬鹿にされていましたが、魔術について学ぶと、それを実現し、15歳の今では誰にも思いつかないような発明をする発明家として有名になりました。国民には、得体のしれない存在として気味悪がられています。
”清淑”の第三王子であるセリヌンティウスは、華奢で女性のように見える王子です。病弱で表舞台に出ることは少ない、よくわからない存在です。国民には、忘れ去られています。
王が、不死の魔王誕生をきっかけとするフランクェル王国との900年戦争で死に、王の遺言に基づき、戦争で最も活躍した者が王になることになりました。
ライディオは、先陣を切り、戦死しました。
誰よりも勇敢であったがゆえに、死んでしまったのです。
残った三人は、王位を争って全員が死んでは元も子もないと、話し合いの場を設けることになりました。
まず、レオナルドが「王になりたいと願うものはいるか?」と問います。
それに対して、珍しく表情がゆがんでいるブリュンヒルデは、「否。私は王位を望まない」と言いました。さすがに双子の兄が死に、動揺しているのでしょう。
セリヌンティウスは、「ブリュンヒルデが否というのであれば、私が成るしかない」と言いました。
レオナルドは眉を顰め、問います。「私が王にふさわしくないと?」と。
セリヌンティウスは、感情をこめ叫びます。「最も国民からの人気があるライディオ兄さまからと、レオナルド兄さまが暗殺したことは知っている!血のつながった兄すら殺せる者に、国民を守ることはできない!」と。
レオナルドは否定しましたが、実行犯と過去視の魔術の前には、認めざるを得ませんでした。王族であろうと、王族を殺した者には罰が与えられます。王になることは認められないでしょう。
ブリュンヒルデは、レオナルドに問います。「なぜそのようなことを?」と。
レオナルドは「あのような戦いにしか能がない者が王になれば国が亡びるとしか思えなかった。全体のためには仕方がない。」と。
ブリュンヒルデは、それに納得しはしませんでしたが、王族を殺した罰、つまり死刑を覆そうとしました。
セリヌンティウスは怒りました。「王族が法に従わずどうする!そんなレオナルドの考えの元では、多くの者が死ぬ!過去の王族の間違いを繰り返すのか?」と。
ブリュンヒルデは、その場の誰もが見たことがなかった涙を流しながら言います。「大勢の、善良な国民が死ぬことになろうとも、たった一人の悪を成したとはいえ、身内すら生かせずして何ができるのか」と。
涙に驚いたセリヌンティウスとその従者の注意がブリュンヒルデに引かれている、その隙を見逃さず、レオナルドの部下が、セリヌンティウスの頸を飛ばし、従者の心臓を貫きました。
それに驚くブリュンヒルデに、レオナルドは言います。「ブリュンヒルデ、貴様を殺せば私は王になれる。感謝するぞ。冥土の土産に聞かせよう。私は異界の落とし子だ。この国のわけのわからぬ教育に染まっていない私が、この国を変えて見せる!」
レオナルドは異界の落とし子、すなわち転生者で、それゆえに洗脳じみた徹底した誠実教育が効果を成さなかったようです。
その後、レオナルドは呆然としていたブリュンヒルデを魔法で消し炭にし、その翌日、他の王族が死に、自らが王となると宣言しました。
時は少し戻り、レオナルド以外の王族が死んだ夜。
セリヌンティウスの首は、野ざらしになっていました。
セリヌンティウスの霊は、あのような化け物が兄であったこと、そしてそれを見抜けなかったことを嘆いていました。
そこに、月の光が差し、蝌�″縺ョ雎。蠕エが語り掛けます。
「汝、嘆く者よ。我が陦譌�よ。嘆いても何も変わらぬことはわかった。力を持つ者が、怒り、正すことでのみ、二国間の蟠りは解けるであろう。」
その言葉が終わると同時に、セリヌンティウスの首と、霊に邨先匕縺ョ譬ケが纏わりつき、一つになり、解けた。
そこには、元々中性的だったセリヌンティウスの顔がさらに女性に近づいた、美しい少女であった。
「すまぬ、私は女の体しか知らぬ故、そうなってしまった。今後、セレネと名乗り、正してくれ。」
その言葉にセレネは問います。
「嘆きに呼応せし大いなる存在よ、貴女はもしや・・・」
「・・・それには答えられない。そして、この意思はもう消えるはずであった。もう、諦めるのに十分だ。だが、お前が死ぬまでの間は保とう。」
「かしこまりました。貴女に授かった名で、怒りで、この戦いを終わらせて見せましょう。」
それから50年の時が過ぎ、ようやく戦乱は落ち着いた。戦いを嘆く、激昂の騎士を名乗る存在が突如現れ、両国を撃破し、統一したのだ。
ルナティア王国の王族はすべて処刑され、フランクェル王国の王族は最初見逃されたが、不意に天啓を得たとされる激昂の騎士に殺された。
激昂の騎士は、それから50年統治を続けたが、伴侶を持つことはなく、後継者と定められた存在を置いて、不意に消えた。
この国では、徹底した自己の考えと、誠実。そして愛の重要性が教えられたという。
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