治療院へと。
「持つものは持たざる者へ、貴族の夫人義務でもあるから、治療院、孤児院、救貧院などの慰問が推奨されているの。
そんな訳で、せっかくリナも素敵な力を得たので、病院関連施設への慰問へ同行してちょうだい」
「はい! ティア様! 私で出来る事なら」
「治療院にはおそらく病弱なのに妊娠してしまった母親がいると思うわ、健康ならおそらく自宅に産婆さんを呼ぶと思うけど」
「はい」
「リナは清らかな奉仕者アピール用に巫女系の服を渡しておくので、それを着て」
「なるほど、分かりました」
巫女系の袖のゆったりした白い服に着替えて同行の準備。
ティア様は淡い水色の清らかなドレス姿だ。
耳には三日月のイヤリング。
「あら、アシェルさん、ご機嫌よう」
おっと! イケメンエルフ颯爽と登場!
「ご機嫌よう、ティア。お土産があるよ、林檎が三箱分」
「ふふ、この間はリナにいちごを沢山くれたのよね、フルーツ屋さんみたい。ありがとう」
「ジークからティアが治療院に行くと聞いてね、林檎はちょうどよくないかな?」
「いいわね、残ればお城でおやつとして焼きリンゴにしても良いし」
「そうですね、帰城してからポートワインかブランデー等を使った焼きリンゴも大人味でいい感じなので、残ればこちらの皆様にも作ってみましょうか?」
私はポルトガルの焼きリンゴのレシピを思い浮かべて言った。
「残る残る! 万が一、足りなければ仕入れても良いわ、ポートワインは無いのでブランデーを使って。
お酒を使った焼きリンゴは食べた事無いから、ぜひ食べてみたいわ」
ティア様が凄い食いついて来た。
「必要なのはポートワインかブランデーかラム酒。なのでブランデーを使いますね、他はシナモン、バター、あ、アルミホイルって無い……ですかね?」
「アルミホイルスライムがあるから!」
「スライム!?」
「スライムはラップとかアルミホイルに加工されたりガラスの代用品にも加工されてるの。
錬金術師の創意工夫で」
「え、凄いですね、スライム! と、錬金術師!」
「そうそう」
「じゃあ、箱3個分の林檎は置いて行くよ、ティアのインベントリに入るだろ」
「ええ、ありがとう、アシェルさん」
「ありがとうございます」
林檎は今回私宛じゃないけど、御相伴に預かるのでお礼を言っておく。
「またね」
そう言って颯爽とイケメンエルフは去って行った。
入れ替わりでギル様達が来て、一緒に治療院へ向かった。
*
「院内でクリスタルの上映ですか! 良いですね」
「ええ、入院中の人には娯楽が少ないでしょうから」
なるほどね。
美しい風に靡く涼やかな草原、透き通る川の中の珍しい映像、珊瑚礁の海、海の中の美しいお魚や珊瑚礁。
このTVもない世界、通常なら息が続かず、こんなにゆったり水中映像は見れないだろう。
記録のクリスタルも高級品だと聞くし。
水中映像の撮影は息の続く魔法アイテムを使ってたみたい。
ラナン卿が解説してくれた。
ギル様に至っては結界魔法だ。チートだ。
「彼等が美しい自然の映像見てる間にりんごを剥いてあげましょう」
「はい! え? ティア様も剥かれるんですか?」
「そうよ」
「なんと……ティア様の剥いた林檎に当たった人はラッキーですね」
「ただの林檎でそんな……」
「いいえ、ラッキーですよ〜〜」
美女が手ずから剥いてくれた林檎!
食べるのがもったいないくらい。
……実際に貰ったら、変色する前に食べるけど。
「はい、うさぎさんよ」
ティア様がうさぎさん風に皮を剥いた林檎を子供の患者にあげた。
「かわいい! ありがとう!」
「あ、ありがとうございますでしょ」
看護婦が慌てて嗜めている。
「良いのよ、子供なのだから」
「はい、どうぞ」
私も子供用にいくつかはうさぎさんに剥いてみた。
「……ありがとう」
大人しそうな男の子がややはにかみながら、お礼を言ってくれた。
かわいい。
「先生! ターニャさんの陣痛が始まりました!」
医者を呼びに、走って来た看護婦の声が聞こえた。
「分かった!」
医者がすぐさま走って行く。
「リナ! 出番だわ! 私達も行くわよ! ギルバート、これをお願い!」
「あ、ああ」
「はい!、すみません、りんごはテーブルの上に置いておきます!」
ティア様はりんごを近くにいたギル様に渡して、私はテーブルの上にりんごを置いた。
私とティア様と女性護衛騎士二人は妊婦さんの所へ向かった。




