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能力者戦争  作者: 豆腐
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第66話-『J』の『危険』 その③

 大導路はゆっくりと大学生達の集まりに近づいていく。


「何か調べる方法はあるんですか?」


「一応な…。遠見さん、大声は得意か?」


「すごく苦手です」


「俺もだ。だが君にはやってもらいたい」


 少し無茶振りをしつつ、大導路は遠見にこれからやろうとしていることを話した。話し終わるとポケットから蒼刃を取り出し、これみよがしに刃をほとばしらせた。しかし大学生達の中でうろたえる素振りを見せた者はいない。


 八方が俺にやった策はこの敵には通用しないか。大導路は心の中で残念がった。


 同年齢らしき四人が集まっている集団に近づき、そのうちの男性一人の背中を蒼刃の刃で刺した。心臓に位置する箇所を刺したが相手に異常は無い。


 能力者なら心臓が刺された瞬間死亡するし、そもそも刺される直前に必ず抵抗を示すだろう。


 能力者かどうかの判断方法はこれしか思いつかなかった。ゆっくりと近づいて目立たないように見えない刃で切っていく。


 もし今から切るこいつが敵だったら、と考えると鼓動は跳ね上がるし血流が加速していくのが分かる。それでも極力冷静に、最大の警戒心を覚えつつ且つ周囲から不審に思われないように、一人一人容疑者の可能性を消していった。


 そして大導路はとある男に気づいた。複数のグループらが集まっているこの空間で一人で突っ立っている男がいた。バイクに座っていた背中から想定していた背丈にも似ている気がする。


 男へ背後から近づき、ゆっくりと蒼刃を向けた。





 完全な好機だ、と地雷山は確信した。


 ちょうど自分と背丈の近い奴が一人ぼっちで突っ立っていたのは本当に運が良かった。もしかしたら誰かと待ち合わせしているのかもしれないが、そんなことはどうでもいい。


 地雷山はその男の近くの大集団に紛れて談笑しているフリをしていた。知らない奴が混じってきて不審に思っている奴も集団の中にいるかもしれないが、それもまたどうでもいい。


 重要なのはこの男を殺すこと。ポケットの中の蒼刃を握っている手が緊張の汗でジワリと滲む。


 ゆっくりと関係の無い男へ歩み寄っている大導路の挙動を密かに観察していた。大導路が自分のすぐ背後を通り過ぎた時これ以上ないほど緊張したが、そこを通り過ぎたあとは今度は自分が相手の背後を取ったかたちになった。


 近くに味方の女がいることにも気づいている。攻撃の挙動をすればたちまちバレるのは自明だったが、それならば行動して即殺害すればいいのだ。


 違和感がないよう振り向いたのち、音も立てずに迅速に蒼刃を振りかぶった。


 敵は無防備だ。殺れる。


「左後ろです!」


 振りかぶった始動直後に、女の大声が聞こえてきた。


 え?気づくのが早過ぎないか?地雷山には訳が分からなかった。


 …遠見は、先程から次々からへと同い年に見える男子の視界を覗いていた。注目すべきは、こっそりと大導路を観察している者だ。


 大導路が一人で立っている男に近づいて行った時、遠見はすぐにその男の視界を覗いた。男は大導路には気づいていないようで全く注意を払っていなかった。


 この人じゃない、と気づいた。次に大導路や男の周囲にいる男子を覗いていく。あの男を罠だとするなら、本当の能力者はこの近くにいるはずだ。


 そして特定した。チラチラと大導路の姿を観察している者がいた。その者が集まっていた集団から外れて大導路に一歩歩み寄った時、遠見は確信を得た。


 …遠見の叫びによって一秒程度だったが地雷山が呆気に取られている間に、大導路は素早く振り向いて持っていた蒼刃を突き出した。


 一瞬遅れて地雷山も蒼刃を突き出す。二人の蒼刃がお互いに向かい…そして衝突した。


 破裂音に近い音を出して二本の蒼刃は青い火花を飛び散らせた。衝撃が発生して二人とも蒼刃を落とし、それらは地面を滑っていった。


 大導路は怯まずに、地雷山の懐に入って『方向』で強化した拳の一撃を食らわそうとしたが、一方の地雷山はすかさずボケットからナイフを取り出して、大導路に向かって切りつけてきた。


 すんでのところで躱して後方へ下がる。しかしただの後退ではない。滑っていった二本の蒼刃のもとへ跳ぶと急いで二本を拾った。


 両手でそれぞれ握り、今一度敵意を高めると青い刃がほとばしった。蒼刃の二刀流だ。


 圧倒的有利だ、と思ったのも束の間、ナイフを振りかぶる地雷山の姿勢を見て大導路は戦慄を覚えた。次の瞬間にはナイフは地雷山の手から離れていた。


 やや上方に投げられたナイフは本来なら大導路の頭上を越えていく軌道だったが、油断してはいけないことを大導路は直感した。


 ぶつかる可能性がわずかにでもあるなら、それはぶつかってくる。


 突然、宙のナイフの向きが不自然にカクッと曲がり、野球のフォークボールのように急に落ちて大導路へ向かった。

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