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能力者戦争  作者: 豆腐
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第46話-集合の八人

「配信者、で合ってるよな」


「…ああそうだ。間違いない」


 誓囲は緊張した面持ちで相対する人物を見た。大導路も背後から男の様子を観察した。


 酷く痩せている男だった。アバラが浮き出るような痩身であることがシャツの上からでも窺い知れる。


「言うまでもないだろうが召集されたうちの一人だ」


「ああ、来てくれてありがとう。まだ誰も来ていないんだ」


 言いながら誓囲は痩身の肩越しに大導路を見た。


「いや、もしかするともう一人来たかな」


 誓囲の方から声をかけてきたのは流石に二人きりに不安を感じたのだろう。無視する理由も意味も無いので、大導路はあえてぶっきらぼうに一礼した。


「俺の思っている人達ってことでいいんだよな?二人は」


 誓囲と痩身に向かって聞くと誓囲が肯く。


「思ってくれている通りの集まりだよ。あと五人だ」


 そして三人は黙ってしまった。痩身は誓囲や大導路と少し距離を開けて地図の表示板の近くに立った。合わせて大導路も誓囲達から距離を取る。


 安在が来たのはそこから僅か数分だったが、大導路には恐ろしく長く感じた。


「…どうも」


 雑な会釈をしながら安在が話しかけてくる。誓囲と軽く会話している間、ちらちらと痩身を見ていた。


 十一時五十八分頃、女性が一人近づいてきた。あえて存在感を示すようにずかずかと歩いてくる。ベリーショートの髪型が印象的だった。絶対に気が強いな、と大導路は思った。


「能力者の集まりってことでいいんだよね?配信していたアンタがいるわけだから」


 誓囲を指差しながら単刀直入に聞いてくる。誓囲はうろたえつつ「う、うん」と答えた。


「先に言っておくけど、妙な動きしたら躊躇なく攻撃するからね」


 過激な発言をしたあと痩身と同じように少し離れた。


 直後に今度は男が近づいてきた。眼鏡をかけた男性だ。短髪女と比べれば大人しそうな印象である。


「僕で最後かい」


「いや、あと二人だ」


 眼鏡が聞き誓囲が答える。


 そして正午きっかり、遠見が現れた。だがその背後をニヤついた笑みを浮かばせた金髪男が歩いている。


 遠見が引き連れてきたわけではない。むしろ遠見は気づいていないのだ。注意したくてもできない状況に焦ったが、結局何事も起きず遠見と金髪は合流した。


 合流したところで遠見は背後の能力者の存在に気づいたらしく、ギョッとして跳ぶように距離を開けた。


「どうもっす。あ、この人とは別に知り合いじゃないですよ。多分電車が同じになっただけ」


 金髪が軽快に挨拶をしたあと遠見を指差して雑に説明した。


 それが事実なのは間違いないことではあったがどうにも緊張感が足りない奴だ、と大導路は怪訝に思った。


 しかしいずれにせよ全員揃った。


「初めまして皆。当然気づいているだろうけど僕が以前生配信した本人で、ずっと君達とメールなどで連絡を取り合っていた者だ」


 誓囲が改めて挨拶をした。


「早速、本題に入りたいしその前の確認作業も終わらしたい。今から僕は紅針盤を起動してここにいる全員が本当に能力者かどうかを確かめる。気になる人は僕と同様に起動してくれて構わない」


 そう言って誓囲はわざとらしく左腕を胸の高さに上げた。それを見て他の能力者達も自身の手の甲を見始めた。


 事前の取り決めで大導路達も起動することにしていた。痩身、短髪女、眼鏡も起動している様子だったが、一人金髪だけ起動する素振りすら見せずニヤつきながら皆を眺めていた。


 大導路が自身の紅針盤を見るとそこには紛れもなく自分以外の表示が七点、超至近距離でひしめき合っていた。


「よし、確認できた。皆もいいかな?」


 誓囲が聞くと短髪女や痩身が無言で肯く。金髪が「うぃーす」などと全く緊張感の無い返しをした。


 その時、遠見が困惑の表情を見せたことに大導路は気づいた。あまりの緊張ゆえに紅針盤の起動すらおぼつかないのかもしれない。しかし声をかけることはできない。


「それではこれから事前に説明していたとおり僕の住んでいる拠点に案内する」


「ちょい待ち。それなんだけど何であんたの住処に行かなきゃいけないんだ?説明ならここでできるじゃないか」


 短髪女の指摘が入るが誓囲は丁寧に言葉を返す。


「僕の話す計画はある意味ですごく奇抜な計画なんだ。だからそれが現実的に叶えられることかどうか、直接確認したうえで検討してほしいんだ。もし少しでも怪しいと思った時は君がさっき言ったように攻撃してくれて構わない」


「本当に怪しかったら躊躇なく攻撃するからな」


 短髪女は警告しつつも了承はしてくれたようで、それ以上は不満を言わなかった。


 十八歳が八人。周りから見れば学生仲間がカラオケか昼からの飲み会に向かっているように見えるだろう。


 だが実際は、全員が賭けのテーブルに自らの命を乗せて警戒しあっているのである。





 八人は歩いて誓囲の拠点へと向かう。数キロ歩く道中で会話は一切無い。


 想定していたが地獄のようだ、と大導路は心中で苦虫を噛み潰した。


 大導路の後方を遠見が歩いているのが気配で分かる。『視界』で初対面の四人の視界を覗いているはずだ。それに集中できるぶん遠見の方が居心地は悪くないはずだ。


 数十分程歩き続けて拠点にたどり着いた。


「コレ本当にアンタの所有なの?」


 短髪女が疑ってくる。痩身や眼鏡も何も言わないが不審そうな目つきだ。金髪は「へぇー」とシンプルに驚いている声を発している。


 敷地内の通路を歩いて階段を上り二階玄関に入ると、玄関脇のテーブルに小さなキーボックスが置いてあった。


「メールでも伝えていたけど話し合いをする際は蒼刃はしまってもらう。ここのキーボックスに入れてくれ。鍵は僕がかける。話し合いをする際は鍵を見える所に置くから、誰もキーボックスを勝手に開けて蒼刃を取り出せないようにする」


「キーボックスに何か仕組まれていないか調べてもいいか」


 眼鏡が提案し誓囲は了承した。他の者も叩いたり持ち上げたりして確認し、その後に各々蒼刃をしまった。大導路も自前の蒼刃を入れる。


 内階段を登って四階に着き大扉を開ける。大導路と同様にリビングで説明するつもりだ。


「さて早速説明をさせてくれ。僕の提案する非戦闘の計画について」


 リビングのソファーに各々が座ると誓囲はテーブルに鍵を置き、説明が始めた。一同は黙って聞いていた。


 大導路達も何も言わないでいたが、願っていた。


 どうか何事も起きませんように。

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