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能力者戦争  作者: 豆腐
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第43話-八人の砦へ

「次の一手が決まったんだ」


 ある日、夕食を終えた後に誓囲が切り出した。


「新たに四人の能力者を仲間に加える」


「四人?」


 安在が聞き返す。


「いきなり四人増えるってこと?」


「増えるかどうかは分からない。だが交渉の場を用意できそうなんだ」


「誓囲、詳しく教えてくれ」


 誓囲は説明を始めた。誓囲のメールアドレスに連絡を取ってきたのは、大導路達以外にも四人いたこと。その四人とこれまで連絡を取り続けてきたこと。そして今回、一同で会うことにしたこと。


「直接会うなんて危険すぎない?」


 安在の返答は明らかに心配そうな声色だった。


「本当は遠隔で『信頼』の効果を付与させたかったんだけど、四人いずれも僕を心から信じてくれなかったんだ。だから『信頼』を発動できなかった」


「それって余計会うのはまずいんじゃ…。それに一人ずつ会うんじゃ駄目なの?」


「…もし一人一人呼び出していることを何かのきっかけで気づかれたら、以後会うのは拒否されてしまうだろう。明らかに不審だからね。多数で集まる場合は警戒心は強くなってしまうが、全員が警戒し合えば不用意な戦闘にはなりにくい」


「直接会ったうえで籠城の計画を伝えて、納得してもらい信頼を得て『信頼』を発動させる、ということか」


「そう。騙すようなものなので気は引けるが、僕らを攻撃できなくなるという制約は伝えずにまずは『信頼』の効果を与える。それさえできれば少なくとも安全だからね」


「説明するということは、俺の時みたいにこの建物を見せるわけか」


「そう。ここに呼ぼうと思っている」


「…何だか事を急いでいるな?」


 大導路の指摘に、誓囲はより一層真剣な表情で三人を見る。


「もし仲間が四人増えれば八人だ。八人はこの戦いの最大勢力になり得る人数だ。最大多数の非戦闘戦力が実現できれば、実質的にこの戦いを終わらせられるかもしれない」


 残り二十四人。そのうち八人の勢力。確かにそれは一大勢力と言えるはずだ。


「『信頼』を発動させるまでがゴールなんだ。それさえできれば攻撃されない。説得する時間はいくらでも確保できる。そして同居できれば、ここは八人の砦だ」


 誓囲が熱くなるのは十分分かる。いつ終わるとも分からなかったこの戦いのゴールが微かに見えているのだ。


「とはいえまだ完全に決めて連絡を取ったわけじゃない。皆の賛同が無いなら他の手段を探すしかない」


 遠見が震えているのに大導路は気づいた。新たに四人の能力者と関わらないといけないと知って、純粋に不安を覚えているのだろう。


 大導路も誓囲の提案に警戒心を覚えたが、それ以上に心の高揚を覚えていた。


 ここに集まったのは何のためか、皆で生き残るためだ。それを達成させられる道があるならそこに進むべきだ。


「俺は賛成する。ただ入念な準備をしないといけない」


 賛成の発言は安在と遠見を追い込むことになると分かっていたが、それでもここは前進を選ぶべきだと考えた。


 安在も慎重な言い方だったが追従した。


「私は…私も賛成する…けど大導路くんの言うとおりだと思う。とにかく安全な方法を考えないと。最悪、集まったその日に状況しだいでは説明を中止にできるくらいの柔軟性が無いと駄目だと思う」


 遠見は何も言わない。遠見は内心では状況の変化を避けたがっていた。しかし次の一手を進まなくては状況は良くならず、本当の意味での安全圏に入れないことも理解していた。


「遠見さん。君はどう?」


 誓囲が聞くと「私も、賛成します」と小さい声で遠見は返事をした。


 多少強引ではあったが、こうして全員の合意を得た。





 それから四人は毎日、打ち合わせを行った。どのような形式で会うか、どのように説明するか。説明役はやはり誓囲が担当ということになった。


「四人のゲストが来た時、既にここに他の能力者三人がいたら警戒されてしまう。よって最初は僕に仲間はまだいないという前提で話を進めたい」


「じゃあ私達はどこにいればいいの?」


 安在が怪訝そうに聞く。


「四人と一緒に集まるんだ。僕の呼びかけに応じて初めて来た、計画のことは何も知らない人として出てきてもらいたい」


「何でそんなことを?」


「僕一人では当然危険だ。だが僕には既に味方が複数いると知られてしまうと合流地点で撤退されてしまうか、この拠点に来るのを拒否されてしまうだろう。大導路は会う前から僕を信頼してくれていたから来てくれたが、これから会おうとしている四人はそうはいかない」


「じゃあ初対面っていう演技をしないといけないのね…」


 不安を露わにする安在だが、大導路も遠見も同じ気持ちだった。


「さらに言うと、初対面の振りをしつつも四人の動きを観察してもらわないといけない。四人がいつ不審な行動を取るか分からないからね」


「極端に言えば、俺達と話している間に堂々と能力を使って攻撃してくるかもしれないってことだろ」


「そのとおり。誰かに不審な動きをされたら、それを伝えられるような合図も考えないと」


「不審な動きなんて、そんな簡単に分かるか?」


「普通では容易に気づけない。そのために、遠見さんに『能力』を使ってもらう」


 大導路は遠見の顔を見た。遠見の顔の緊張が一層濃くなる。


 大導路はまだ遠見の能力を知らなかった。仲間である以上は知る必要があると以前から思っていたが、遠見から説明を受けたことはなかったので聞くこともしなかった。


 能力を明らかにしないというのは大導路達に対して不信感があるというより、とにかく危機に陥りたくないという防衛本能から来る恐れなのだろう。


「遠見さん、そろそろ君の能力を大導路と安在さんにも伝える時だ」


 遠見の能力を知っているらしい誓囲が促す。


「…そうですね…本当はもっと早く言わなきゃいけなかったんですけど…」


 遠見がおずおずと大導路と安在に向かって喋りだす。


「私の能力…『E』の『視界(ジ・アイ)』って言って、能力は他人の視界を見れる能力、です」


「他人の視界を見れる…」


 大導路が復唱すると、遠見は恥ずかしそうに肯く。


「ただの、それだけの能力です」

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