メスガキは現代おじさんの為の向精神薬
全てのものは毒であり、毒でないものなど存在しない。
その服用量こそが毒であるか、そうでないかを決めるのだ。
──パラケルスス テオフラストゥス・(フォン)・ホーエンハイム
毒と薬は表裏一体。ある程度以上生き、おじさんにでもなれば誰しも聞いたことがあるはずだ。
そんな、今おじさんである人々がまだ青い頃、彼らの多くは綿密に組まれたツンデレを摂取していた。
ツンデレというのだから、当然ツンとした部分もある。
主人公に向けられる刺々しい言葉の数々は、作品全体で見ると整合性が取れており、キャラクターと作品を楽しむ為の計算しつくされた毒。つまり薬となって効果を発揮していた。
──トゲトゲしたあの子を見返したい。デレさせてやりたい──
消費者にとって、ツンデレには向精神薬としての作用があった。若い麦は踏まれると大きくビンビンに育つ。あれと同じ構造だ。
その薬効は幅広く効き、多くを魅了した。その為、疲れた大人達が栄養ドリンクを常飲するかの如く、若人はツンデレを多用した。
小学校でも習うように、快楽薬品というものは次第に耐性が付き、より多くを欲するようになる。
戦後の闇市、欲する人で溢れていた時代では工業用アルコールが酒瓶に詰められて売っていた。単純で無機質な化学物質をそれと知りつつ、酒として飲んでいた前例があるように、過剰な欲求は次第にそれ「単体」すらも欲するようになっていく。
時代の供給も、高まるツンデレ需要に追随する。いくつかの作品は、サプリメントのように抽出されたツンデレを提供していた。
工業的かつ商業的に抽出されたそれは、その実、精錬されておらず品質は粗雑であった。にも関わらず、愚昧な生産者は他者より濃度を高めようとした。ただただツンデレのみを蒸留し濃くした為、過激さのみが増していった。結果、ツンデレヒロインは精神不安定暴行犯に変貌した。
ツンデレ自体に飽きも来ていたのだろう。
だが、コミュニティの栄枯盛衰の様にセンスの無い、ただただ過激な者達は市場ごと潰す。
過激のみの刺激は、旨味のない激辛料理のように、ツンデレに対する無機質な慣れを生む。薬品でいえば耐性あたるそれを人々につけてしまった。
次第に、ツンデレは下火になり輝きを失う。結果、数多ある物の一つになった。
ツンデレ乱用時期、ツンデレ薬剤を若い体の隅々まで行き渡らせ、大きくビンビンになっていたジャンキーギャング。今、おじさんとなってしまった彼らの心中には、薬品の過剰摂取で下火になった燃えカスしか残っていなかった。
もう焚き付けられる燃焼がない。彼らはより多くのツンデレを欲した。そして、粗末で過激なツンデレを摂取し続けてしまった。結果、彼らの体には、毒気に対するほぼ完全な耐性がついてしまった。もう、どんな刺激と甘みを焚べても燃え上がらない。
可愛くお口を尖らせた少女に、たどたどしく踏まれようとも、もう何も立ち上がらないのだ。
おじさん達は、最新作のピカピカしたエナドリで体を元気にするも、心は灰まみれ。もう二度と、カンカンな熾し火となる事はないのかもしれない。
灰の上に力なく横たわる肉塊。もうこの先燃える事も、萌やされる事も無いだろう。太りきった死に体の萌豚として、できることは限られている。寝転がるか、ブヒブヒつぶやくか、バブーバブーなバブみるくソーサーに頭を突っ込むぐらいしかない。
ん? 待てよ? 搾乳手コキならこの3つを同時にかなえられるぞ!? やったね! ついに僕たちは見つけた!
新しいNEW乳しんてんち「みるくフロンティア」へとレッツゴーだ!!
わあい うれしいな わあい
──だい666かいめ。さらりーまん の せんりゅう。たいしょうさく。
斯様にして現代社会の痛みを紛らわすおじさん達。
そんな彼らの下火と下半身に向け、1つの風が吹く。
お口を尖らせ、風を送ってくれる可愛いお顔が一つ現れた。
だが、在りし日のあの子のように羞恥で顔を真っ赤にしている訳でもない。そればかりか、大袈裟に小馬鹿にした様子で、煽りに煽ってくる。
こちらを踏みにじる小さなあんよには、ためらいが一切感じられない。
その態度は、ただの毒物としか感じられない。デレの甘い気配など微塵も見えない。薬になる要素は、一切見当たらない。
何なんだこの娘は。社会を舐めるな! おじさんを舐めるな! 舐めていいのは***だけだ!
おじさん達の感情が高ぶり、炎が立ち上がる。
──この無礼な娘を矯正したい。わからせてやりたい──
あの頃のようにカンカンとなった熾し火はカンカンに怒っている。脈絡はないが、青麦もビンビンだ。
絶対にわからせる。という気概は、あの頃以上の熱量で煮え立ってくる。
なんと! 今や、おじさん達の下火は鉄をも溶かす蒼炎となって再び燃え上がった!
粗悪で過激な薬品を摂取しすぎたが為に、耐性がついてしまった悲しき体。そんな患者に薬を処方するならば、答えは唯一つだ。ガワは異なるも、中身は似通っている“より強力な毒=薬を使えばいい”
サリチル酸が半分と優しさが半分。そんな大衆薬を乱用してしまい、効かなくなった体には、最先端で更に強い毒、ロキソニンを使えば良い。
ツン半分とデレ半分。そんな大衆薬を乱用してしまい、効かなくなった体には最先端で更に強い毒、メスガキを使えば良い。
単純明快だ。
そう、メスガキは鈍りきってしまった現代人の為の、最先端で強力な向精神薬であり、強力な精力剤でもあったのだ。
ありがとうパラケルスス! 今、僕は医学の真髄に近ずきました。夢の産婦人科医まであと少しです。もちろん、最初の患者さんはメスガキ! 10ヶ月以内に医師免許取ってみせるよ!
おい、泣くな。この文章があまりに感動的だからといって、ここで泣くのは、ティッシュの無駄遣いだ。
ティッシュは後に取っておけ。次のコミケで出る「わからせ同人誌」の為にな!(決め顔ダブルピース
さあ、皆でメスガキに感謝を述べよう。
ありがとうメスガキ。
かわいいねメスガキ。
少し黙ろうかメスガキ。
調子に乗るなよメスガキ。
わからせるぞメスガキ。
これを読み、共感したという人がいたら幸いである。
また、共感した人は粗悪メスガキの摂取に十分な警戒を払って欲しい。加えて、良質であったとしてもメスガキの過剰摂取に気をつけた方がいいだろう。メスガキに対して感謝を持ちつつ、良いわからせLIFEを送ってほしい。
読み上げソフトで誤字脱字チェックを行ったのですが、何度も聞いている内にあたまがおかしくなって来ました。
みんなも読み上げソフトで流してみてね。
できないからMP3で欲しいって人がいれば作るかも(作れたら)
投稿する前になんとなく思ったのだが、これはむしろ詩のジャンルなのでは?
いや、おじさんとメスガキのラブストーリーとして、ラブコメジャンルなのでは?