// 白無垢の決意 //
戦争で闘う兵士には家族がいる。家族も戦っているのである。これはその一部、ささやかな物語である。
輜重隊に所属していた彼は、毎日のように手紙を送ってくれた。
戦の要である兵糧を運ぶ重要な任務を任された彼は、
自分の仕事をいつも誇らしげに語っていた。
ひとたび襲撃を受けるとそれを撥ね退けるために瞬時の判断が必要となる。
如何に被害を最小に、そして敵を迎撃、撤退させるか。
通常の作戦部隊以上の難しさがその戦略には求められた。
そんな彼からの手紙。今度の運びこみでひとたび暇をとれるという。
そうしたら、結婚しよう。そういう内容だった。
私は待った。しかし彼は帰ってこなかった。
そして早耳で報せが届いたことによると、
彼の部隊が敵襲に遭い全滅したという……。
私は彼への永遠の愛を誓い、貞操を守るため、
白い装束をかむり巫女となった。
やがて戦争が終わり、自国の勝利に終わった。
私は彼の髪の毛を懐紙に包み、街外れの教会へ赴いた。
宗教は違うが、その教会は寛容に私を迎え入れてくれた。
そして術を行うと、懐紙は青い火を放ち、
懐かしい彼の姿をぼおっとうつした。
「お慕いし、お待ちいたしておりましたが、
あなたは帰らぬ人となってしまいました。
私はあなた以外には、神以外に仕えるものはおりません。
私が生を全うするまで、
待っていて下さいね」
彼は何かを語ったが、言葉は届かない。
やがて彼の姿は、すうと消えた。
優秀な兵士の中に隠れ、なかなか戦果をあげられない兵士もいる。次回はそんな兵士にスポットをあてた物語。