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// 戦争が分かつ、父と子 //
子供が生まれ、じきに戦争は終わった。
この子の父親はこの戦争で、命を落とした。
夫の死は戦争にとって、ほんの小さなものであったろう。
しかし、その死の積み重ねが、勝利につながったのもまた事実だ。
私はそんな夫に誇りを持っている。
この子も男の子として生まれてきた。
勝利で国はお祭り騒ぎだけれど、私はひと目この子に父親を見せてあげたい。
そして、夫に息子を見せてあげたい。
―― 懐紙に収めた夫の遺髪を、大切に胸に仕舞い、
私は街外れの教会へ向かった。
長い列ができているが、みんな私のような気持ちなのだろうか。
私の番になった。
髪の毛を預けると、術者は儀式をはじめる。
青い炎が上がると、そこへ夫の影が揺らめいた。
半信半疑だったが、本当に夫だ。
「あなた。この子があなたの子よ。見守っててね。
きっとあなたのような勇敢な戦士になるわ」
涙で言葉にならなかったが、きっと気持ちは通じただろう。
夫の影も涙しているようだった。
声は聞えなかったが、
「強く育ててくれ」そう言われた気がした。
炎が燃え尽きると、夫の影は闇に融けて消えた――