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超主人公級転入生

「おーし、あんたら席に着きなさい。着いてない奴は欠席にすっからね」


ホームルームが始まり、先程までは騒がしかった生徒達が大人しくなる。


「そりゃ横暴だぞ先生ー」


「うっさい高城。今日はこれから転校生を紹介します。なので、時間がないの」


転校生?

今六月だけど?

随分時期外れじゃない?


「男? それとも女?」


誰かが問う。生徒達は皆、期待に満ちた瞳で担任を見つめる。


「男よ」


担任の豊永がそう答えれば、クラスの半数即ち男子生徒のみが興味を失ったかのように瞳をそらす。


「しかも美少年。それはもう絶世の美少年よ」


女子からは歓声が、男子からは舌打ちが聞こえる。


それにしても絶世の美少年は盛りすぎじゃない?


高城義盛はこれから教室に入ってくる転入生を気の毒に思った。


「それじゃあ場も暖まったし、入ってきていいわよ」


高城は少しでも転入生を心配したことを後悔した。


「初めまして、天竜院昌嗣といいます。二年のそれもこんな時期の転入ですが、どうかよろしくお願いします!」


担任の言ったことは本当だった。

転入生はどこからどう見ても間違いなく、絶世の美少年だった。



***



「あの、天竜院君」


場所は屋上。

生徒が二人。

絶世の美少年と可愛めの少女。

絶世の美少年は三百六十度どこから見ても絶世の美少年で、凛々しさのあるショタフェイスはその筋のお姉様なら耽溺ものだ。

しかし彼のような絶世の美少年ともなると、その手のお姉様だけでなくオジサマ好きや、はたまたメス豚志望に女王様からレズビアンまでありとあらゆる性癖の女を魅了してしまう。

当然、ごく普通の女子高生である目の前の少女も、彼から溢れでるフェロモンの虜になっているのは言うまでもない。

期待と不安に揺れる瞳‥‥

これから告白が行われるだろうことは想像に難くない。

問題は‥‥。


隅っこでフェンスにもたれ不貞腐れている少年、高城もいることだった。


「どうしたんだい?」


「えっと、放課後は天竜院君、屋上にいるって聞いて‥‥」


俺もいるんだけど。

高城はそう言いかけて、やめた。

恋する乙女の瞳に高城は写っていないし、気にもしない。

多分ペットのチンパンジーか何かだと思われているのではないか。

天竜院が転入してから一月、だいたいの女子がそんな感じであった。


「あ、あのね」


頬を染め、もじもじとする可愛めの少女。仕草も相まって普通に可愛い少女だ。


「私‥‥」


「うん」


「天竜院君の事が好きです! つ、付き合ってください!」


見ている高城まで恥ずかしくなるような、甘々な告白だ。

なんだか胸がキュンキュンするので、取り敢えず高城は手持ちのバナナをかじった。うっほうっほ。


「ごめん、実は俺もう付き合ってる子達がいるんだ」


子達?

なんかおかしくね?

嘗ての、天竜院に出会って間もない一月前の高城ならばそんな疑問を抱いていた。


「そう、ですか」


「それでもいいなら、俺達付き合ってみる?」


いいわけないだろ!

高城は叫びそうになるのを堪えた。


「はい! 喜んで!」


えー、いいのかよ‥‥!


高城はもう呆然とするしかなかった。

しかしまあ、この絶世の美少年といると、これはよくある事だった。



***



可愛めの少女が屋上からいなくなって、暫し。

チンパンジーから人間へと戻った高城は、取り敢えず天竜院の脛を蹴った。


「痛っ、何するんだよ高城」


「これは当然の報いだ! このモテ男がっ、ハーレム作りやがって!」


しかも鈍感とか優柔不断とか、高城の嫌うそんなものの上に成り立ったハーレムではなく、女共全員の合意のもとで付き合うという有り得ないハーレムだ。

羨ましいとか以前に殺意が湧く。


「お前の側にいればおこぼれに与れると思ったのによぉ」


天竜院にフラれた女の子を慰め、お近づきになるという作戦は見事に頓挫していた。


「本人の前でそれ言うなよ‥‥」


天竜院が転入してきて一ヶ月。

まるで共通点のない二人だが、その関係は良好で、親友と言っていい間柄にまでなっていた。




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