第五話:今日は良い一日
三連休とは実に有り難いものだ。高校生バスターという立場上、休みはきっちりとらせてくれる。同じチームなら尚更、快と翡翠の休みは重なるのだった。
「久しぶりだね! 快と遊ぶのも!」
翡翠はニッコリ笑う。何だかんだ言っても快と遊べるのは非常に楽しい。翡翠が快の事が好きだと自覚する前からそれは変わらない。
「ああ、任務がない日でもなけりゃ遊びにも出れないしな」
少しでも照れたらさすがの翡翠でも快の気持ちに気付く可能性はあるのだろうが、快のポーカーフェイスは天下一品である。
「だけどね、いつも快と遊んでるとナンパされることって少ないよね。やっぱり快は有名人だからかなぁ?」
TEAMの篠原快と一緒にいて連れに声をかける勇気を持つ男がいたら、興味津々で悪友達が絡んでくるだろう。
「どうだかな。紫織と優奈がいるから声掛けられてるだけな気がしないわけでもないが」
「ひどいなぁ! それじゃあ私に魅力がないみたいじゃない!」
「それも違うな」
「えっ?」
翡翠はドキッとした。快から憎まれ口は叩かれても、褒められることは少ない。
「お前に魅力はあるさ。治療兵だし、まあ、犯罪組織の悪女に比べたらマシな性格と顔はしてるし」
「それっていいのか悪いのか分からないけど……」
微妙な快の答えに翡翠は怒りたいのかどうか分からなくなっていた。
「良いんだよ。お前はナンパなんかされずに俺に守られてろ。治療兵が危険な目に遭う必要なんか皆無でいいんだ」
少しだけ快の歩幅が大きくなる。おそらく照れてるのか不器用なりの優しさを見せた性だ。
そんな快を見たら翡翠は嬉しくて仕方なくなってしまう。おもいっきり快の手をとって引っ張ってやるのだ。
「快! 今日のお昼は私のおごり! スパゲティー食べに行こう!」
「ああ、行くか」
今日は非常に良い一日になる。普段そんなことも考えない少年は魅力的な幼なじみに一日引っ張り回される一日でも、そう素直に感じているのだった。




