第三話:快の講義
「優奈、あと三分そいつらを止めてろ」
「お安い御用」
快は地上に飛び降りると、不敵な笑みを浮かべてリーダー格の男の元へ歩み寄った。
「ホークの葛木か。最近掃除屋界でも噂になってるよ。女をとって喰う不細工がいるってな」
快は鼻で笑った。確かに快と比較してはたいていの男子が見劣りする。むしろ気の毒だ。
「そりゃどうも。こっちにもTEAMの篠原っていう親の七光小僧がいるって噂は流れてるさ。仲間に俺達を動けなくしてもらわなければ戦えない腰抜けとは知らなかったが」
葛木も負けじと言い返して来た。しかし、快は挑発に乗るような隊長ではない。
「そうだな、だったら三分といわず三時間は動けない状況にしてもいいな」
三十人の男達はぞっとした。しかし、快は優奈に命じた。
「優奈、こいつらの重力を軽くしてやってくれ。三十人ぐらい俺一人で十分だ」
「いいけど、援護くらいしようか?」
尋ねる必要のない質問を敢えてする。
「いや、お前ら三人で翡翠を守っとけ。特に大地、翡翠に攻撃の一撃でも喰らわせたら死刑だからな!」
「お前が加減しろよ……」
とは言いながら、大地は結界を張る。おそらく倉庫の一つは簡単に破壊できるぐらい快はキレてる。そう、キレてるのだ。
「ははっ、三十人を一度に相手にするのか! おもしろい! ついでにTEAMそのものをブッ潰してやるよ!」
快の身体が急に重くなる! 翡翠のように時間を操作されたからだ。
「くたばれ! 篠原っ!」
男達が飛び掛かってきたが、
「召喚、切裂!!」
「うわっ!!」
男達は一斉に斬られる! 快は一歩たりとも動いてないのにだ。
「コノヤロ!」
「遅ぇよ」
快は葛木の首筋を叩き壁まで飛ばす。しかし、首の骨を折らなかったあたり、まだ優しさはあるようだ。
「時空系がいてこの程度とは情けないな。だが、教えといてやる。バスターの中で時空系に対抗する術は三通りだ。
一つは時空系タイプであること。二つ目は術者より強者であること。三つ目は時空魔法を使いこなせない馬鹿より早く攻撃することだ」
「なめやがって!!」
やはりバスターなのか再度快に襲い掛かる。しかし、それは空を切るだけだった。
「やれやれ……」
そしてさらに快は力を上げていく。その実力差はありえないものだった。快が強すぎる事だけが事実だ。
「うちに手を出してはいけないという理由はバカ親父だけじゃねぇよ。TEAMは掃除屋を潰す掃除屋としての力を持ってるんだ。
そして今回、お前達を潰す依頼が俺達に入って来た。翡翠を誘拐したのは失敗だったな!!」
怒りの形相とともに、倉庫そのものが跡形もなく吹き飛んだのであった……