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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
戦撃絶真編
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九六話 始遭


「さて、始めようか」

人で賑わうショッピングモールの中を歩くアリス。


その瞳には周囲の人も、この建物の中にあるどの店も見ていない。


目の前にはない、まだ彼の前に姿を見せていないであろうそれを見据えているのか、それとも会えると確信しているのか……


それらは不明確すぎて確かな根拠になりうるものではないが、ハッキリと言えることがある。



双座アリス、彼が今考えていることはこの場所には必要のないことであるということだ。


アリスは右耳に無線通信機を取り付けると誰かに連絡をした。


「作戦を実行する。

早速動け」


『……了解』


「失敗すればどうなるか、わかってるよな?」


『……当然だ』


相手から一方的に通信が切られてしまうが、アリスは不敵な笑みを浮かべていた。


「従順なフリをすればバレないとか思うなよ……?」

(オレは葉王と違って優しくないからな……)



***

その頃……


「これとかどうかな?」


シオンとハルカらと合流した後、水着売り場へとやってきていたヒロムはユリナとエレナが似合うかどうか見せてくる水着についての感想を述べていた。


「いいと思うよ」


「じゃあ、これは?」


ユリナの次にエレナも選んできた水着を見せる。


「うん、いいと思う」


「……あの……」


「ヒロムくん?」


「ん?」


「ハッキリ言ってくれていいんだよ?」

なぜか申し訳なさそうに告げてくるユリナ。


ヒロムはなぜかわかっておらず、不思議そうな顔をした。


似合っているかどうかを聞かれて答えていたのに、なぜなのか?


「おかしなこと言ったか?」


「ち、違うの。

その……さっきからヒロムくん、「いいと思う」しか言ってくれてないから」


「ヒロムさんの素直な感想を聞かせてもらえませんか?」


「あ、ああ……」



素直な感想、と言われて悩むヒロム。


そもそも今言っていたのも素直な感想だ。


似合っていると思ったから「いいと思う」と言ったのに、それでダメとなればどうすればいいのか。


悩むヒロムを見兼ねたユリナが一つ提案した。


「好きな色とかある……?」


「ああ?

うーん……白とか黒とか青とかだな……」


「け、結構多いね……」


「そうか?

それと水着関係あるのか?」


「えっと……」


「大将が変だと思ったらそれを伝えたらいいんだよ」


言葉に詰まるユリナのフォローをするかのようにイクトがヒロムにアドバイスをした。


イクトのアドバイスで何となくではあるが理解したヒロムは頷くと、再びユリナとエレナが選んで来た水着を見て感想を述べた。


「……違いがわからん」


「「えっ!?」」


「別に二人なら何を着ても似合うだろうし、オレは別に……」



ちょっと来い、とイクトと真助はヒロムを引っ張って少し離れた場所へと連れていく。



なぜなのか?


さらに素直な感想を述べただけだと言いたげなヒロムはキョトンとしていた。


「どうした?」


「もっと気の利いた事言えないのか?」


「大将さ……思ったことを言え的な感じで言ったけど、そういうことじゃないんだよ」




「何が?」


何がおかしかったのかわからないヒロムは二人の言いたいことがどういう事なのかわかっていない。


そんなヒロムにわかるようにイクトは伝えた。


「大将さ、姫さんたちが選んだものを理解しようとしてる?」


「ああ?

見た感想を……」


「じゃなくて、姫さんたちが選んだものをわざわざ大将に見せてるのは何でかとか考えてる?」


「……いや、考えてねぇけど?」


ヒロムの返答にイクトはため息をつき、そのイクトがなぜため息をついたのか理解してないヒロムは首を傾げる。


「?」


「あのな、ヒロム。

お嬢様方は……」



ヒロムに対して真助が親切に説明しようとした時だ。


何かを感じ取ったイクトと真助は同時に同じ方向を見つめ、ヒロムも視線だけはそちらに向けていた。


「今のって……」


イクトの問いに真助は何も言わずに頷き、ヒロムを見た。


「どうする?」


真助の一言にヒロムは少し考えると、イクトと真助に対して伝えた。


「アイツらはオレが安全なところに連れてく。

その後に合流するからそれまで任せていいか?」


「わかった。

ならお嬢様方は任せたぞ」


「ついでにちゃんと選んでやれよ?」


「……わかったよ」


イクトと真助は何が感じた方へと走っていき、ヒロムはただその後ろ姿を見ていた。


「さて……」


「ついでにハルカも任せたぞ」


いつからいたのか、シオンはヒロムの背後から声をかける。


ハルカにでも選んでもらったのか、白いシャツの上に赤い上着を羽織り、ジーパンを履いたシオンもいつもと雰囲気が違うように見える。



「うおっ!?」


「そんなに驚くな。

で、頼めるか?」


「……わかったわかった。

行ってこいよ」


すまないな、と一言だけ告げるとシオンは走っていく。



「ったく……自分の女くらい面倒みろよ……」

(まあ、三人で終わらせてくれればオレも助かるけどな……)


どうかしたの、とユリナとエレナが心配そうにヒロムに声をかける。


が、ヒロムは首を横に振ると二人を連れて水着選びに戻ろうとする。


「なんかイクトとかは三人で用があるみたいだからこっちはこっちで続けようぜ」


「う、うん……」


(バレるのは時間の問題……早く終わらせて避難させるか)



「それでいいのか?」



ユリナとエレナを連れて戻ろうとするヒロムに誰かが声をかける。



一体誰なのか?


それが気になったヒロムは確かめるように振り向いた。


ヒロムの振り向いた先には白髪に赤眼の少年がいた。


「誰だ?」


ヒロムはユリナとエレナを自分の後ろに隠れさせると、目の前の少年に警戒心を向ける。


「そうか……オレとは初めてだな」


「ああ?

どういう……」


「何してるの?」


どういうことだ、とヒロムが言おうとするのを遮るようにリサとエリカが、それに続くようにアキナとチカ、ハルカがやってくる。


が、ヒロムはそんな彼女たちを自分の後ろへ行くように指示すると少年に問いかける。


「オマエは誰だ?」


「オレか?

何だと思う?」


「おい……真面目に答えろ」


ヒロムは少し苛立ち、少年に殺意を向けるが、そんな少年から感じるあるものに違和感を感じていた。


それは今までにどこかで感じたことがある気配だった。


が、今感じてるのと比べれば今までに感じたその気配は微かなものだ。



「この感じ……どこかで……」


ヒロムはその答えを導き出そうと考える中、あることを思い出した。


『 純粋な魔人の力は能力に混じった程度の力とは桁が違うんだよ』


葉王の言葉だ。

葉王が情報としてトウマ攻略の鍵となる「魔人」について語った時のこの言葉。


それと似ているのだ。


となれば……


(この気配に覚えがあるのはソラの「炎魔」だ。

あれに似てる……てことは……)


徐々に答えを導き出すヒロムはそれを確かめるように少年に告げる。


「オマエが「魔人」の能力者か……?」



***



イクトと真助は感じ取ったものを追いかけて地下の駐車場に来ていた。



「ここか……」


「なんか怪しいなぁ……」


探る真助に対して怪しいと警戒心を剥き出しにするイクト。


だが、駐車場は何かあるとは思えぬほどに静かで、自分たち以外に人の姿はない。


「……気のせいか?」


「おいおい、オレら全員が勘違いしたってか?」


「けどよ……」


問題ない、とシオンが二人と合流するなり告げる。


「わざわざ誘き寄せるために気配向けてたんだ。

オレにはどこにいるかバレバレだ」


シオンは右手に雷を纏わせると、前方に向けて放つ。



が、放たれた雷は途中で何かに衝突したように炸裂して消えてしまう。


同時に何かの膜が消え、人が姿を現す。



数は四人、その中にいる一人はシオンと真助がよく知る人物だった。


「角王……獅角!!」



「よく隠れてるとわかったな」


「……よく言うぜ。

見つかるのも計算通りだろうが」


敵の出現に対して三人は構え、イクトは影より大鎌を出現させる。


さらにイクトは自身の影から刀を呼び出すと真助に渡した。


「傷開くぞ?」


真助は刀を受け取るとイクトの体を心配するが、イクトは問題ないと伝える。


「大丈夫だ、真助。

愛華さんの治療のおかげで完全に塞がってるんだよ」


「なら良かった」


武器を構える二人に対してシオンは武器を、得意の槍を手にして構えようとしない。



その姿を見た獅角は挑発するようにシオンに言った。



「鬼桜葉王に負け、バッツにも及ばなかったことでやる気もなくなったか?」


「……どうかな」


「まあ、いい。

新しい角王の力を見せてやれ」


獅角の前に三人が並び、そして走り出す。


一人は赤髪の女、一人は銀髪、そして一人は仮面をした軍服。


「新しい角王って……」


「まあ、大将らが倒しまくってるから人手不足なんじゃ……」


知らん、とシオンは音もなく消えると仮面の男の前に現れて敵を蹴り飛ばす。


「!!」


「騎角!!」


蹴り飛ばされた男を心配し、二人の新しい角王は足を止めてしまう。


そんなことを気にすることもなくシオンは雷を身に纏うと敵を睨む。



「オマエらは敵……それだけで戦う理由にはなる。

そしてオマエらは……オレが潰す!!」


「おいおい、カッコイイじゃねえか」


シオンに続くように真助とイクトも走り出すと、敵に襲いかかる。



「でもそこは「オレ」じゃなくて「オレら」だと良かったんだけど?」


「……どっちでもいい!!」


イクトの言葉に対して一言返すとシオンは敵を倒そうと走り出すが、そんなシオンの前に敵の女が立ちはだかる。


「!!」


「はじめまして、私は新しい角王の美角。

そして、アナタを倒す能力者よ!!」


美角と名乗る女は槍を構えるなりシオンに襲いかかる。


が、シオンはそれを避けると距離を取ろうと離れる。


「情報通り、女は苦手なのね」


「……あ?」


美角は挑発するようにシオンに向けて話す。


「悲しいわよね。

あの「無能」の精霊に負けてからいいとこ無しの負けばかり。

能力者としてのプライドなんて無いんじゃないの?」


「……そうか。

そう思ってるなら好都合だ」


するとシオンが消え、美角がシオンの姿を捉えようとした瞬間、シオンは美角を殴り飛ばした。


「!?」


「オマエら敵に対して細かいことを気にするのはやめたんだよ。

倒してしまえば男も女も関係ないからな!!」

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