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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
戦撃絶真編
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九五話 予兆

とある研究所。


そこにトウマはいた。

トウマのそばには獅角と刃角もおり、複数の白衣の研究者もいた。


「完成、したんだな?」


トウマの言葉に研究者は頷くと、トウマにアタッシュケースを渡した。


トウマは受け取ったアタッシュケースを早速開けて、中身を確認した。


中には白銀に光る拳銃が収められており、トウマはそれを手に取ると研究者に尋ねた。


「この中に例のアレが?」


「はい、その中に入っています。

使い方は事前に説明した通りですので」


「……そうか」


いよいよですね、と獅角はトウマに言うと続けて話した。

「ついに決着をつける時が来ましたね」


「ああ、これ以上ヤツを野放しにはさせな……」

「その決着ってのはつけさせねぇぞ?」


すると音もなく双座アリスが現れ、トウマに近づくと彼に告げる。


「オマエにどんな考えがあるかは知らないが、コイツは「一条」の技術を貸してやったから完成したんだ。

謝礼として、少しは協力してもらう」


「バカを言うな。

「一条」の部下だからと言ってオレが従うと……」

「従わないならそうさせるまでだ」


トウマに向けてアリスは告げると、指を鳴らした。

トウマの身に何か起こる、そう考えた獅角はトウマを守ろうと動こうとした。


そうしようとした瞬間、獅角のそばで刃角が血だらけになって倒れてしまう。


「な……」


何が起きたのか?

一瞬のことでわからなかったトウマと獅角は戸惑い、アリスは忠告する。


「オマエらは勘違いをしている。

すべての主導権はオレたち「一条」の手の中にある。

オマエらは「一条」と組んだ時から……ただの駒だ」


「何を……!!」


「わかったらオレの指示に従ってもらう。

そうするならその決着とやらも早めにつけさせてやる」


「……わかった」


アリスの言葉に対して獅角は敵意を剥き出しにするが、トウマは違った。


彼の忠告を聞いたトウマは素直に従うことを受け入れたのだ。


「トウマ様!!」


「獅角さん、ここは従いましょう。

これ以上の被害は出したくありませんから」


「……わかりました」


「それでいい。

なら早速……」


***

暑い……。


この真夏の日差しと気温、人が平然と過ごすには適さない。

ある目的地へ向かうヒロム、イクト、真助もその暑さに襲われていた。


「あ〜、暑い!!」


イクトは暑さのあまり、それを声に出すが、それで暑さが消えることはない。


「うるさいぞ、イクト」


真助はイクトに一言言うと汗を手で拭うが、それをしたところで汗も消えはしない。


「んな事言ってもこの暑さおかしいだろ……?」


「このおかしな暑さに追い込んでるのは文明の利器の頼る人間なんだけどな……」


「温暖化とかのレベルか?」

「かもな……」


ところで、と真助はヒロムの方を見た。

ヒロムは暑そうにはしていないが、そばにはアイリスがおり、ヒロムはそのアイリスと手を繋いでいた。


「何だ、お嬢様方に会うのが待ち遠しくて精霊呼んでるのか?」


ヒロムを茶化すように真助は言うのだが、意味をよくわかっていないヒロムは不思議そうな顔をし、そしてなぜこうなっているのかを話した。


「何の話かわからないけど、アイリスは熱吸収の力を持ってるからこうして熱吸ってもらってるんだよ」


「おいおい……精霊をそんな風に使うな」


「たまに大将の考える事がわかんねぇ……」


真助とイクトが呆れてため息をつく中、ヒロムは何も気にすることなくアイリスを連れて先に行ってしまう。


待てよ、と二人は後を追いかけていくが、途中でイクトはヒロムの服装について触れた。


「大将、いつもと服違くない?」


ヒロムの服装、それは確かにいつもと違った。

いつものジャージと違い、青を基調とした半袖の上着にズボン、上着に関しては黄色い生地のパーカーがついていた。


「ああ?

ああ……ユリナがくれたんだよ。

いつも同じだからってな」


「へえ、あのお嬢様がねえ」


「そういう真助もだけどな」


イクトはヒロムの次に真助を見た。

真助はこれまで戦闘に支障がないように道着に似たものを着ていた。

が、今は灰色のタンクトップに黒いズボンとラフな格好をしていた。


「おお、嫉妬か?」


「確認だよ。

オマエが自分からそういう服着るとは……」


「チカから真助に渡せって言われてた服か?」


「そう、その服だよ」


「ってちゃっかりチカさんと仲良くなってんじゃん‼」


いつの間にか真助がチカと仲良くなっていると嘆くイクトだが、イクトもいつも着ている黒い服ではなかった。

黒いシャツに水色のスカーフ、腰には上着を腰に巻いていた。


これまでの黒基調の時と違ってどこか爽やかさと落ち着いた雰囲気を感じ取れる。


「残念だけど自分で選んだんだよ」


「何怒ってんの?」


「怒ってないんだけど……まあいいや。

急がなくていいのか?」


「ああ……だいじょうぶだろ?」


「だな。

多少遅れてもお嬢様方にヒロムが謝ればいいんだしな」


「おい、オレのせいにするのか?」


「いやいや、そういう問題じゃないからな!?」

多少、というかかなり感覚のズレている二人にツッコミを入れるイクトだが、気が付けば集合場所に到着した。


到着するとヒロムはアイリスから手を離し、アイリスも一礼すると姿を消す。


いつもよく来るショッピングモール。

ヒロムは最近ユリナたちとここに来ては彼女たちのショッピングに付き合っている。


そのせいかヒロムは飽きが来始めている。


「……着いたな」

(今月何回目だよ……ここに来るの)


「だな。

さてどこにいるのやら……」


「……この二人のお気楽さ、疲れる……」


三人はひとまず中に入り、どこに向かうか決めようとした。


が、夏休み真っ只中のショッピングモールは人で多い。

変に探し回るのは良くないのと思ったイクトはヒロムに確認した。


「姫さんたちとどこで待ち合わせ?」


「さあ?」


「いやいや、ここに集合するって話なら……」

ヒロムくん、とヒロムを呼ぶ声がどこからか聞こえてくる。

が、ヒロムはそれがどこからの声か聞き分け、その方向を見た。

その先にはユリナがチカやエレナたちとともにこちらに向かって歩いて近づいていたのだ。


「早かったね」


「ああ?

そうか?」


「うん、待ち合わせは十一時だったから。

あ……その服……」


ユリナはヒロムの服装を嬉しそうに見ていた。


「似合ってるよ」


「そうかあ?

いつものと色合いも変わらねえからなあ」


「お~い、大将も姫さんもイチャつきすぎ」


「ああ?」

そうよ、とリサとエリカがユリナを隣に立つと彼女の腕に抱きつく。


「え?」


「ちなみにそれ、私たち三人で選んだんだよ?」


「三人でね」


「そこ強調しなくても……」


「ユリナのセンス悪いからね。

最初に買おうとしてたのなんてヒョウ柄だったのよ?」


「そ、それはイメージチェンジってことで……」


(それは大将ももらっても着ないだろうなあ……)


リサとエリカに言われて必死に意見するユリナを見ながら、イクトは内心無理があるんじゃないかと考えていた。


すると真助が周囲を見渡しながら何かを探していた。


「あれ、シオンは?」


「シオンなら先に行ってるわよ」

真助の言葉にアキナが答え、そのまま説明し始めた。


「さっきまではハルカといたんだけど、「こんな女だらけのところにいれるか」って行っちゃったわ」


「シオンらしい理由だな……」


「まあ、自分のお嬢様の面倒見てるならいいんじゃないか?」


「そういう問題なのか?」


ところで、とイクトは少々強引に話題を変えようとヒロムに質問した。


「今日は何で集まったんだ?

その辺のところ聞かされてないから知らないんだけど……」


「オレも知らないんだが……。

つうか、ユリナに言われてオマエら呼んだだけだからな」


「そなの?」


イクトはヒロムの言葉の真偽を確かめるようにユリナを見ると、ユリナは何も言わずに頷く。


それを見たイクトはなぜ集まったのかについて質問した。


「今日はどんな用で?」


「おい、オレの時と聞き方違わないか?」


「あ、あのね……みんなで海行きたいなって話になったの。

それでエレナちゃんがご両親に相談したらプライベートビーチあるって……」


「それでみんなで行きましょうってなったんです。

ダメですか?」


ユリナとエレナは説明するとヒロムたち三人をじっと見つめる。


「ダメじゃないって!!

姫さんたちが行きたいって言うなら反対しないよ?」


「まあ、たまには旅行とかも良さそうだな」


イクトと真助、二人はユリナとエレナの提案に賛同し、どこか楽しみにしている雰囲気もあった。


が……



「海っていうか、オレの家にプールあるぞ?」


「「黙ってろ金持ち」」


ヒロムの空気を読まない発言にイクトと真助は声を揃えて言い放ち、二人してヒロムの頭を叩く。


「これだから鈍感バカは……」


「お嬢様方が行きたいって言ってんのに嫌がってどうするんだよ?」


「オマエらな……海だぞ?

魚どもが生息してるあの海だぞ?」


「うん、大将。

大将の好き嫌いはこの際関係ないんだよ」


「まったくだ。

だが嫌なら嫌でいいと思うぞ……お嬢様方を悲しませることになるがな」


「……拒否権なしってか」


そういうことだ、と真助に言われたヒロムはため息をつくとユリナたちを見ると、右手で後ろ頭を掻きながら言った。


「ついて行くだけでいいなら行く」


「う、うん!!

全然それでも大丈夫だよ!!」


ヒロムの仕方なさそうな言い方に対して、それには不釣り合いなまでな笑顔で答えるユリナ。


その隣で言葉にはしていないが、どこか嬉しそうに微笑むエレナ。



そんな二人がどこか眩しく思えたヒロムは思わず目を逸らし、目を合わせないままユリナに尋ねた。



「今から何するんだ?」


「あ、えっと……水着を買いに行こうかなって。

それで……ついて来てほしくて」


「……わかった。

さっさといくぞ」


ヒロムは一言言うと一人先に歩いていき、それを追いかけるようにユリナとエレナは走っていく。


「さて……オレらも行きますか」


「そうですね、行きましょう」


真助とチカが仲良さそうにヒロムの後を追うように歩き始める。


「そういえば、その服着てくださってるのですね」


「まあな。

似合うか?」


「とてもお似合いですよ」



仲良さげに話す二人の後ろ姿を羨ましそうに見つめるイクト。


「何かオレの知らないところで皆仲良くなりすぎてない?」


思わずリサに尋ねるイクトだが、リサは気に止めることもなく歩いていく。


「知らないなぁ〜」


「え、ちょ……」


行きましょ、とエリカもアキナとともに歩いていく。



一人取り残されたイクト。



「え……」

(あれ、オレ孤立してる……?)



「ちょっと待ってくれって!!」



慌てて走り出すイクトは追いかけていく。





「……アレか」


ヒロムたちが歩いていく姿を先程まで彼らが立っていた場所にやってきた少年は見つめていた。


白髪に赤眼、左眼の下には切り傷にも似た赤い痣があった。



どこか冷たい雰囲気を纏うその少年、だがそれに反するように瞳はどこか温もりを求めているようにも見えた。


「アレが人を導く王……オレに裁きをくれる王か」


少年はヒロムをじっと見つめ、そして再び呟いた。


「……オマエならこの中に流れる穢れた血を消し去ってくれるのか?」

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