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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
魂霊装天編
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八三話 獄炎


「……怒りすら許さぬ獄天より現れし黒炎。

光に抗いし敵意を焼き払い、我が道示す決意となれ!!」


ヒロムが口にした呪文にも似たその言葉、それに呼応するように黒い炎は激しく燃え、そしてそれは巨大な火柱となりながらヒロムのもとへと集まっていく。


「来い……「獄炎」フラン!!」


ヒロムのもとへ集まった黒い炎は一つになるとヒロムの周囲を駆け回り、そしてヒロムの前で止まると火柱となり、そこから一人の少女が現れる。


黒く長い髪、黒いドレス、そして黒いブーツに手袋、その身に纏うすべてが黒で統一された彼女。


そんな中で髪とドレスの一部は赤みがかっており、その様はまるで黒炎を彷彿とさせる。



彼女は片手に剣を持ち、そしてその青い瞳で狼角を見るとため息をついた。


「……マスターの世界にはいつから狼男が暮らすようになったのです?」


「一応元は人間だ。

まあ、倒せば戻るだろうけどな」


彼女、フランは冗談を言うようにヒロムに尋ね、ヒロムもそれに対して軽く説明をした。


そして、ヒロムは続けてフランに対してある頼み事をした。


「オマエと「クロス・リンク」する。

その前にオマエの力でアイツを抑えてほしい」


「別にいいですけど……相手の方は?」


彼女の言う相手、それは狼角のことではない。

ヒロムと「クロス・リンク」を行うもう一人のことだ。


仲が悪いのか、それはわからないがフランはそれを気にしているらしい。


「……その間にオレから伝える。

アイツも断ることは無いだろうからな」


「そう、ですか。

わかりました……では」


おまかせを、とフランは剣を構えると一気に狼角の前へと接近し、接近したそのいきおいのまま剣を振るが、狼角は自身の鋭い爪でそれを簡単に防いでしまう。



「おいおい、ド派手な演出で現れたのにこの程度の攻撃か?」


「あら、何を期待したのかしら?」


「別に何も期待してねぇよ!!」


狼角はフランを剣ごと押し返すと殴り飛ばそうと攻撃を仕掛けるが、フランはそれを何の焦りも見せることなく華麗に避け、そのお返しと言わんばかりに回転蹴りを狼角の頭に食らわせる。


が、それを受けた狼角はビクともしていない。


獣人化した影響からなのか、物理攻撃への耐性が普通より高いだけなのか、理由は定かではないがフランのこの一撃は狼角には通じていなかった。


「何かしたか?」


「ええ、頭を吹き飛ばそうかと思って蹴ってみました」


微笑みながら、その表情に似合わぬ言葉を放つフランは続いて剣を振り上げると勢いよく振り下ろし、狼角の首を両断しようと試みた。


「おっとぉ!!」


狼角はそれを避けると距離を取るように高く跳び、さらに魔力の狼を何匹も出現させるとフランに向けて走らせた。


「あら、可愛らしいワンちゃんね」


「どっからどう見ても狼だ!!」


「狼より犬の方が好きだわ……」


だって、とフランが剣を横に勢いよく振ると魔力の狼は一瞬で消滅してしまう。


「忠犬って言葉があるくらいだもの。

素直な犬の方が、孤独に縋る狼よりは可愛らしくてよ?」


「ふざけたことを……」


あなたでしょ、とフランは魔力を剣に纏わせると、魔力を纏わせた斬撃を狼角に向かって放つ。


狼角はそれを爪で粉砕するが、フランはそれを見ても何も感じないのか続けて斬撃を放った。


「学習能力ねぇのか?」


またしても迫る斬撃を狼角は同じように粉砕すると、フランの背後へと一瞬で移動し、彼女の腕を掴んだ。


「捕まえた。

このまま腕を砕き、続けて体を……」


「あら、乱暴なのね」


すると狼角が掴んだはずのフランの腕が炎となり、狼角の腕からすり抜けていく。


驚いてしまう狼角を置き去りにする形でフランの腕は元に戻り、驚く狼角の不意をつくようにフランは剣で狼角を吹き飛ばす。


「くっ……!!」


剣の一撃を受けた狼角だが、獣人になった影響かダメージは浅く、そしてすぐにその傷は消えてしまう。


「まぁ……効いませんくて?」


「気味の悪い話し方だな……わざとか?」


「高貴ではありませんこと?」


「さあな!!

オレには理解出来ねぇな!!」


狼角はフランの言葉を強く否定すると全身に魔力を纏わせ、その状態で走り出すとフランに襲いかかる。


が、フランは迫り来る狼角に対して構えようともせず、ただ近づいてくるのを見ていた。


そして狼角が今まさにフランの首を切り落とそうとした瞬間だ。


「……それで終わりなの?」


フランは人を見るには適さぬほどに冷たく鋭い眼差しで狼角を睨む。


これまで出さなかっただけなのか、それとも狼角の攻撃が期待はずれだったのか。

理由何にせよフランの眼差しを受けた狼角は金縛りにでもあったかのように動きが止まってしまう。


「なっ……!?」


「あなたの実力を見てみたかったから付き合ってみたけど……大した力もなく声だけ大きくて耳障り、攻撃の仕方も防ぎ方も獣のそれ……醜くて仕方ない」


フランの身を覆うように徐々に魔力が現れるが、それは次第に黒くなると炎へと変わっていく。


黒炎、彼女が現れる際にヒロムの周囲に出現したそれだ。


「酷く醜く汚らわしい……オマエのような下郎が私のマスターに触れるなんて認めない……!!」


「何……を……」


「マスターに触れていいのは私たち精霊とマスターの仲間、そしてマスターを想ってくれる彼女たちだけ!!」


恥を知れ、とフランが叫ぶと黒炎が龍となって狼角に食らいつく。


龍に噛まれた狼角の体は瞬く間に黒く焼き焦げ、そして龍に引きずられながら遠くへ飛ばされていく。


「がぁぁあ!!」


「私の「獄炎」で……オマエを殺す!!」


フランは剣に黒炎を纏わせると剣を地面に突き刺し、狼角が向かった先の地面から無数の黒炎の槍を出現させて敵の体を貫かせる。


「がはぁ……!!」


先程まで攻撃を受けても大したダメージにならずに再生していた狼角だが、黒炎の一撃には体は焼け焦げ、再生する間もなく痛みに悶えていた。


「ううあああああ!!」


が、そんな中で自分自身を強く保とうとする狼角は雄叫びを上げると自分に食らいつく龍を破壊してフランに向けて衝撃波を放つ。


「哀れなことを……」


フランが衝撃波を黒炎で防ごうと剣を構えた時、どこからか炎弾が放たれ、衝撃波を相殺してしまう。


あらっ、とフランは残念そうな顔でため息をつくと炎弾が来た方を見ながら語り始めた。


「援護してくださるの?」


「まったく……マスターのためにアナタを止めただけよ」


フランが見た方向から銃剣を構えたテミスが呆れながらこちらに向けて歩いてくる。


そしてそれに続くようにヒロムも歩いて来た。


「まあ、倒せるならいいとは思うけどな……」


「ほら、マスターもこう言ってますよ?」


ヒロムの言葉を誇らしげに主張するフランの言葉にテミスはため息をつくと、ヒロムに向けて話し始めた。


「……マスター、調子に乗らせないでください。

フランの攻撃性を悪化させかねません」


「あら、失礼ね。

私はマスターのために……」


「オマエらぁぁぁあ!!」


ヒロムたちの話を遮るかのように狼角が叫ぶと、無数の魔力の狼が出現し、ヒロムの方に向けて走り出す。


「「!!」」


テミスとフランは迫り来る敵に向けて一斉に炎を放ち、それらを消していく。


「援護、助かりましたわ」


「アナタのためじゃないのだけど……」




「グダグダうるせぇぞ!!」


テミスとフランのやり取りに苛立ちを募らせていた狼角も怒りの限界に達したらしく、魔力を身に纏い、怒りを表すかのように大きくしていく。


それを見たヒロムはさすがにやばいと思ったのかため息をつくなりテミスとフランの間を通り抜けると前に出た。


「マスター?」


「向こうさんはお怒りだ。

だから早々に終わらせようぜ?」


「……やるんですね?」


当然、とヒロムはテミスの確認に対して頷く。


それを確認したテミスとフランは互いに相手の顔を見ると頷き、テミスはヒロムの左側、フランはヒロムの右側に立つと武器を地面に刺した。


ヒロムは首を鳴らし、深呼吸して気持ちを落ち着かせると白銀の稲妻を全身に走らせる。


そして、


「……クロス・リンク!!

「烈火」テミス!!「獄炎」フラン!!」


ヒロムの言葉に合わせるかのようにテミスは赤い炎、フランは黒炎へと姿を変えるとヒロムの体と同化し始める。


ヒロムの両腕が炎に包まれるとヒロムの周囲は炎に包まれ、炎は狼角を圧倒するように大きくなっていく。



「滾る焔、喰らえ熱波!!」


赤い炎と黒炎がヒロムの全身を飲み込み、巨大な炎の柱となると一つの光が炎を切り裂き、中よりヒロムが現れる。



右は黒、左は赤、左右の下半分は緋色のロングコートを羽織り、コートの下は黒い衣装を身に纏ったその姿。


右手にフランの剣、左手にテミスの銃剣を持ったヒロムは二人の炎をイメージしたような髪飾りを頭の左右に着けていた。



「……完了、「烈獄焼炎」!!」


ヒロムは武器を構えると狼角を睨み、そして全身に炎を纏う。


「やっとやる気になったか……」


狼角はヒロムのその姿を見ると嬉しそうに笑うが、それと同時に警戒していた。


ヒロムが見せた「クロス・リンク」、そしてフランとテミスによる「烈獄焼炎」は狼角が事前に知らされていない姿だからだ。


だがそれでも狼角は調べていた情報と今の戦闘で得た経験からその姿が何を得意とするかを推測していた。


(あの姿……二体の精霊は炎を得意としていたことから炎を極めた姿のはずだ。

黒炎だけでも厄介なのが赤い炎までとなると厳しい……。

となれば……)


狼角は一つの結論を導き出し、それを実行するための作戦を考えるとヒロムに襲いかかろうと走り出す。


「速攻で決める!!」


「……考えるだけ無駄だぜ、狼角」


ヒロムが剣を軽く振ると、狼角が身に纏っていた魔力が音もなく消えてしまう。


「……あ?」


続けてヒロムは銃剣を構えると弾丸を放とうと引き金を引くが、弾丸は姿を見せない。


その光景をおかしく思った狼角はバカにするように笑う。


「何をすると思えば不発か?

無様だなぁ!!」


「……それは、どうかな?」


「何?

どういう……」


どういうことだ、と狼角がヒロムに問い詰めようとすると狼角の体を熱風が過ぎり、それと同時に体が焼け焦げてしまう。


「な……」


黒炎の龍の時のようなひどいものでは無いが、炎を受けてもいないのになぜ火傷を負ったのか、狼角はそれが気になっていた。


「何を……」


宣言する、とヒロムは狼角に武器を突きつけながらあることを宣言する。


「オレが引き金をあと五回引けばオマエは敗北する。

オレの……オレたちの炎撃によってな!!」

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