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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
魂霊装天編
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七五話 知論


廃工場。


葉王がいなくなったことで、その場での用もなくなったヒロムは外に出ると屋敷に向かうように歩き始めた。


が、その足取りは重く、表情もどこか不満を抱いてるような様子だった。



「……」


葉王からの接触、そして戦闘。


何から何まであの男のペースだった。


「ソウル・ハック・コネクト」も「クロス・リンク」による「天剣流星」や「龍擊拳王」も……。


すべては葉王が手の内を知ろうとするために引き出されたようにしか思えなかった。



(わざわざ挑発してオレたちの力を引き出してそれを上回る力で制す……人の意志を砕くには最高のやり方だ。

だがそれを自分がされたとなると腹が立つ……!!)


「クソっ……!!」


ヒロムは一人苛立ちを募らせ、その感情を抑えられずに声に出してしまう。


幸い歩行者などの人は周囲に居らず、それを聞いてるものはいない。


(オレに負けるなんて微塵も思ってなかったに違いない。

だからこそ能力も最後にしか……)


「能力、か……」


ヒロムは葉王の能力について考えた。


自身の体の傷を瞬間で消し、そして攻撃しようとしたヒロムを触れることなく負傷させ、その上で吹き飛ばす能力。


そして最後にはヒロムがその身に負った傷を消した。



「……」

(オレを攻撃した点だけを見れば「念力」の類で間違いないが……そうなれば傷を消したことに対しての説明ができなくなる。

かといって他に思い当たるものはないし……)


「マスター、よろしいですか?」


悩むヒロムのそばにディアナが現れ、そしてヒロムに対して自分の考えを語り始めた。



「私の高速での攻撃、あれを防いだのも能力ではないでしょうか?」


「……どうかな」


「私のスピードはマスターも知ってるはずです。

ですから……」


「だからといって能力でないと対処出来ないことはない。

おそらくアイツは攻撃を受ける箇所にのみ魔力を展開して防いでたはずだ」


ヒロムの言葉に対して少し疑問を抱くディアナだが、それについて真っ向から否定するわけでもなかった。


と、いうよりはヒロムの言い分は葉王をしっかりと分析した上での意見だからだ。


ディアナ自身もヒロムの言葉を聞いてその可能性がゼロではないと思ったからだ。


「……ディアナはどう思う。

あの男がどんな能力を使ったと思う?」



ヒロムはディアナの考えを知りたく、一つ尋ねてみた。

ディアナもそれを受けて葉王について考え、そしてある考えに達した。


「もしかするとですが……あの男は能力を複数持っている可能性はありませんか?」


「ああ?」


「そうでしたら回復についてもあの見えぬ攻撃についても説明が……」


「そんな単純な話じゃないだろ。

何せあのバッツを倒せるほどの力を持って……」


バッツの名を出したヒロム、それに自身で気づいた時、葉王の言葉を思い出した。


『オレたちの計画にはオマエらの成長が不可欠だし、バッツに関しても消えてもらう必要があった』


『オマエと八神トウマを本格的に戦うように仕向けるためだ。

オマエらが争えば「一条」にとっては好都合、だから当初から消すつもりだったバッツという存在を利用したんだよ』


葉王の言葉、その中でバッツについてどう思うかを述べている言葉を思い出したヒロムは不思議に思った。


「いつでも自分たちで消せるならなんでバッツをオレに消させるように仕向けたんだ……?」


「マスター……?」


「オレたちの成長のためならわざわざバッツを仕向けなくても他の能力者で事足りるはずだ。

なのにアイツはバッツを倒させようとした」

(それはバッツが持つ何かを警戒してか……?)



バッツが持っていたもの、それは魔剣バットナイツだ。

あの魔剣は他者の魔力や能力を吸収し、奪う力があった。


そしてヒロムはさらに思い出した。


バッツの目的、そしてそれにより葉王がバッツを消したがっていた理由の見当がついたのだ。


「そういうことか……」


『感情論とか嫌いなんだがなぁ……認めるしかねぇだろうがぁ……!!

コイツは何よりも特殊で特別だってな……!!』


(あの言葉はそういう事だったのか……)



「マスター、何かわかったのですか?」


「ああ、葉王がなんでバッツを消そうとしたのかも、オレたちの成長が必要な理由も……な」


見当がついたというヒロム。

だがその表情からは何か不満を抱いてるように感じることも出来た。


ディアナはそれを感じ取り、心配になってヒロムの手を握る。


「……大丈夫ですか?」


「ああ……大丈夫だ」


「聞かせてもらえますか?」


「……憶測でしかないが、バッツが奪おうとしたのに対して、葉王は利用しようとしていると思う。

ヤツがオレのことを「特殊で特別」と言ったのはオレにしか出来ないことがあるという意味だと仮定すればバッツに先を越されればオレたちは戦う力を失い、「八神」と戦うことも出来なくなる」


「利用、ですか……?」


「ああ、今回の戦闘で葉王がオレの力を引き出そうとしてたのはオレがどこまで成長してるのかを見極めるためなんだと思う。

現にアイツはオレが最後に使った「龍擊拳王」や「天剣流星」を見て満足していた」


「でも、何のために……?」


さあな、とヒロムはため息をつくと首を横に振り、それ以上はわからないということを告げた。


「そもそもこれは憶測でしかないし、仮に本当だとしてもなぜオレでないといけないかわからない。

ただ、オレが「ソウル・ハック・コネクト」や「クロス・リンク」を使ったことで葉王は喜んでるように見えた……だからバッツが奪うと消えるから「八神」と争わせるために利用したんだと思ったからな」


「マスターと私たちにしか出来ないこと、だからですね?」


「おそらくそれがアイツの言う「特殊で特別」ってことなんだろうな。

まあ、ハッキリとしないけど……」



「真実は敵から真相は聞かなければわからない、ということですね?」


そうなるな、とヒロムはため息をつくと頭を軽く掻く。


「もう少し頭良ければ他の発想になるんだろうけど……」


「マスターは頭脳明晰です。

そこまで考えれるのですから」


「世辞はいいよ。

とにかく、「八神」を倒そうとする上で「一条」にまで気を配らなきゃならないってわけだ」


「そうですね……」


とりあえず、とヒロムは首を鳴らすと再び歩き始めた。


「ユリナたちになんて言うか考えねぇとな」


「正直に言ってしまえばいいのでは?」


「それをやったらガイに頼んだ意味なくなるだろ……」




***


どうしたものか……。

とりあえずで帰ってきたヒロムだが、屋敷の中に入る気になれないために門の前に立っていた。


門を開け、庭を歩けば屋敷の入口、そして中に入るだけ。


だが、それが出来ない。


何せその中にユリナたちがいるのだから。


(また言及されるんだろうな……)


「ガイにすべてを託すとするか……」



かなり投げやりではあるが、ヒロムはそうするしかないと判断した。


いくか、心の中で覚悟を決めたヒロムは屋敷に入るために門を開けようとした。



だが、それを背後からやってきた人物に阻止される。


「ヒロム様?」


「!!」


声をかけられ、思わず驚いてしまうヒロム。

恐る恐る後ろを見ると、そこにはチカが立っていた。



どうかしましたか、とこちらの様子を伺うように首を傾げる彼女になぜかホットしてしまうヒロム。


「……どうかしたのか?」


「ユリナたちと会う約束をしていたんです。

ヒロム様はお出かけですか?」


「あ、いや……散歩、してた」


「まあ、健康のことを考えてるのですね」


嘘なんだよな……



ヒロムは自分の嘘を何の疑いもなく信じるチカに対して後ろめたさを感じながら目を逸らした。



「でしたや早く行きませんか?

ユリナたちを待たせては申し訳ありませんし……」


「そうだ、な……」

(出来れば待っててなくていいくらいだ……)



どこか楽しみにしているチカをよそにヒロムは嫌そうに門を開き、二人でその先へと進んだ。


足早に進むチカ、対するヒロムの足取りは重い。


ユリナたちに早く会いたいチカ、そのユリナたちに会うことに対して後ろめたさがあるヒロム。


二人のこの差がこの歩く速度に差を生んでいる。


「どうかしましたか?」


さすがのチカもこれには何かおかしいと感じたらしく、不思議そうにヒロムを見つめる。


が、見つめられたところで素直に言えるわけもない。


教えたとしても「黙っててくれ」と一言言ったところでチカがユリナたちに対して偽るようなことを言うとは思えない。


むしろ心配してそれを伝えてしまうかもしれない。


「……いや、まだパーティーのときのことを悩んでる」


ヒロムはふと思いついた嘘をつき、誤魔化そうとした。

チカはパーティーのことを思い出したのか一瞬言葉を詰まらせるが、急に何かを思い出したかのように話し始めた。


「そういえば、愛華様の誕生日パーティーの日取りが決まったみたいですよ」


「ああ……結局別日にやり直すってか」


「その時にアキナも来るみたいです」


「そうか……」



チカの言葉にどこか気の抜けた返事をしたヒロムだが、何か思い出したのか、何かに驚いたような顔でヒロムはチカに確かめるように尋ねた。


「ち、チカ……?

今誰が……」


「?

アキナが来るそうですよ?」


「……マジか……」


「先日は都合が悪くて来れなかったようですので、今回は楽しみにされているそうです」


「……」


最悪だ……。



ヒロムは心の中でそう呟き、そしてため息をついた。


まさか、彼女と会わなければならないとは……

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