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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
魂霊装天編
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六九話 戦始


朝。


ガイは身支度を済ませると霊刀「折神」を竹刀袋へと入れ、家を出るとヒロムの屋敷に向けて歩いていた。


「真助がいるって言ってたしな……同じ剣士のよしみでアイツの新しい刀について話聞いてやるか 」


ヒロムの屋敷についてからどうするかを考えるガイ。


すると彼のポケットに入れていた携帯電話の着信音が鳴り、それを知らせるバイブレーションが鳴動する。


誰からだ?

ポケットから携帯電話を取り出したガイはその相手を確認するように画面を見た。


「……珍しいな」


携帯電話の画面に表示されている名はヒロムだった。


珍しい、というのはヒロムからの着信のことではない。


あの男が、日常で面倒だと思うことが多く、無駄に寝ているあのヒロムがこの時間に起きているのが珍しいのだ。


「もしもし、こんな時間に……」


『 ガイ、今どこにいる!!』


電話に出るなり何やら慌てているヒロムの声が聞こえる。


何かあったのか?


「どうかしたか?」


とにかくガイは情報を仕入れようとヒロムに説明を求めた。


『 今オレの屋敷に向かってるなら頼みがある』


「?」


『 ……ユリナたちを見ててくれないか?』


どういうことだ、とガイは思わず聞き返してしまう。

いや、当たり前のことだ。


急な電話に出てみれば有無を言わさずにユリナたちを見ててほしいと言われるのだ。


何か理由があるのはわかった……



「別にいいが、オマエはどこに……」


『 今さっき鬼桜葉王がオレの前に現れた!!』


「何!?」


ヒロムの口から出た意外な名前にガイは驚きを隠せず、思わず歩みを止めてしまう。


鬼桜葉王、パーティーの数日前にシオンとシンク、真助の前に現れ、三人を倒した「一条」の能力者。


「七瀬」の当主である七瀬アリサによれば軍の小隊を生身の身体能力だけで潰し、「一条」に属す者しか能力の発動を見たことがないというほどに能力を使わず、使えば相手は負けると言われている。

ヒロムが現れなければ「覇王」の名を冠していたという実力者。


それがなぜ?



「真助と合流したらオレも……」


『 向こうはオレ単体に来いと言ってる!!

万が一にもオレ以外が来れば何か仕掛けてくる気だ!!』


ヒロムの言う通りならば加勢には行けない。

行けばヒロムの邪魔をするどころか無駄な犠牲を生むことになりかねない。


手出しできないとなると、ヒロムの頼みを聞く他ない。


「……わかった。

オレは屋敷に行ってユリナたちを守る。

オマエのこともうまく言っておくから任せろ」


『 助か……』


「その代わり、だ。

ちゃんと帰って来いよ?」


『 ……ああ、オレに任せろ……!!』


ヒロムは一言言うと通話を終わらせるように切る。


オレに任せろ。

自分が何とかするとしてそれに似た言い方をこれまで何度か聞いたことはある。


だが、今まで聞いてきたそれは自信に満ちていたものばかり。


今のそれにはそれとは別に焦りのようなものが混ざっていた。


あのヒロムが危機感を感じ取ったのだろう。


そう思うと加勢に向かいたい。

だが向かえば何があるか分からない。


「くそ……!!」


何も出来ない、力になりたくてもそれが枷となりかねない今のこの現状はガイをただ必要以上に無力に見せてしまう。


「何のためにアイツのために戦うって決めたんだよ……!!」


くそ、と足元に転がる小石を苛立ち混じりに蹴ったガイはそれでも消えない苛立ちを声にして吐き出した。


ただでさえバッツとの戦いを二度もヒロムとともに挑み、その二度ともヒロムの足を引っ張っていた。


だからこそ不甲斐なさは何よりも強くなってしまう。


「……なんでオレは……!!」




***



ヒロムはフレイ、ディアナを連れて鬼桜葉王が指定した場所へと到着すると、そこへ足を踏み込んだ。


荒れ果てた廃工場、その敷地の入口には「立ち入り禁止」の看板が立っていたが、ヒロムたちは気にすることなく入っていく。


長く人の手が付けられていないであろうその敷地内は薄暗く見えてしまうほどに老朽化しており、地面も大きくヒビ割れていた。


そんな中を進み、ヒロムたちは廃工場の建物の中へ入っていく。


が、その中は想像していたのとは少し違った。


廃工場だというのに中は何かが暴れたかのように荒れ、さらに地面や壁には何かが勢いよくぶつかったような傷がいくつもあった。


「これは……」


「早かったなぁ」


声のする方を見ると、その先には呑気に椅子に座りながら本を読む葉王がいた。


「も少しゆっくりで良かったのになぁ。

だったらこの本読み終わったのによぉ」


「オマエがここに来いって言ったんだろうが」


「そうだったなぁ……。

で、ここに呼んだ理由を教えてあげよう」


葉王は本を閉じると椅子から立ち上がり、そしてその本を椅子の上に乗せた。


「ここはオマエが匿う氷堂シンクが八神トウマを一度倒した場所だ」


「シンクが……?」


「そしてその敗北に乗じるようにここにカズキは現れ、ある取引をした」


「取引?

おい、まさか……」


「そう、カズキと八神トウマは手を組んだのさ。

カズキは己の渇きを満たすためにヤツを強くすると約束し、そして八神トウマはオマエを倒すためにオレたちの駒となった。

まあ、八神トウマは気づいてない本来の目的があるわけだがな」


なるほど、と深いため息をついたヒロムは葉王に確認するように言った。


そう、今の葉王の説明で疑問が解決したのだ。


「バッツとの戦いで増援が来なかったのはオマエらがそれを止めてたってことか?」


「まあな。

オレたちの計画にはオマエらの成長が不可欠だし、バッツに関しても消えてもらう必要があった」


「何……?

計画だと?」


「ま、教えてもいいけどオマエらに止めるなんて無理だからなぁ」


そんなことより、と葉王はあくびをすると確かめるようにヒロムに問いかける。


「オマエの精霊は全部で何人だ?」


「教えるわけねぇだろ。

つうか、最強の「一条」ならオレが十一人宿してるなんて……」


とぼけるなよ、と葉王は笑みを浮かべながらヒロムに告げる。


「知ってるんだぜぇ?

オマエが本来宿している精霊十一人に加えて新たに宿してることはなぁ」


「なんで……って言うほどでもねぇか。

オマエ、あの会場にいたのか?」


「その通りだ。

警備も隙だらけで簡単に入れた。

おかげでいいもの見れたからなぁ」


「?」


「……「ソウル・ハック」、すげぇよなぁ。

まさかあんなことするなんて思いもしなかったからなぁ」


「……つまり、戦ってみたいってか?」


そうなるな、と首を鳴らしながら軽い準備運動を始める葉王はヒロムを冷たい眼差しで睨む。


「オマエの強さを立証しねぇとオレの望みが叶わないんだよ……。

だから魂燃やしてやるから楽しませろよぉ」


「……上等だ、コラァ!!」


ヒロムは構えるなり走り、そして葉王に殴りかかるが葉王はそれを避けてヒロムを蹴り飛ばそうとする。


が、ヒロムもそれに反応すると蹴りを防ぎ、葉王を睨みつける。




「オマエの思惑に乗るのは癪だが……!!

その身に宿す魂燃やしてオレを滾らせろ!!」


「いいねぇ!!

なら滾らせてやるから潰されろ!!」


ヒロムと葉王は互いに相手を弾くと拳に力を入れ、そして互いに相手を殴ろうと拳の一撃を放つ。


互いに放つ一撃はぶつかり、そして力と力がぶつかったことでお互いを倒そうと押し合う。


が、葉王の一撃が優れていた。

ヒロムの拳は押され、そして弾き返され、葉王はそこから一回転してヒロムに強烈な蹴りを放つ。


その蹴りはヒロムの顔に命中し、ヒロムは大きく仰け反ってしまう。


「さっさと使えよ、あの力を!!」


葉王は追い討ちをかけるように何度も殴るが、ヒロムはそれを何とかして避け続け、葉王を蹴ると距離を取るように後ろへ跳んだ。


だが蹴りの入りが浅かったらしく、葉王はあまり動じていない。


「やる気あんのかぁ?」


「コイツ……そんなに見たきゃ見せてやるよ!!

「ソウル・ハック」!!」


ヒロムは白銀の稲妻を全身に走らせ、そしてそのまま葉王に殴りかかる。


葉王はその一撃を避けてそのまま殴り返そうとしたが、ヒロムはそれを見切っていたのか避けられると同時に体をその場で回転させるともう一度殴りかかり、葉王の拳を弾いた。


「!!」


「オラァ!!」


ヒロムはそのまま葉王を蹴り、さらに顔や体を殴る。

葉王はそれを避けようとせずにヒロムの攻撃をその身に受け、ヒロムもそれに対して止めようとせずに連撃を放つ。


「オラオラオラァ!!」


白銀の稲妻を右手の拳に集中させるとヒロムは勢いよく葉王の体に叩きつける。


が、ヒロムの拳が命中したその瞬間、葉王はヒロムのその拳を掴み取る。


「!?」


「……こんなもんじゃねぇだろ?」


葉王はため息をつくとヒロムを勢いよく投げ飛ばす。

よく見ればヒロムの連撃を受けていたはずの葉王は一切のダメージを受けていなかったらしく、何もなかったように平然としていた。




「意外と大したことねぇなぁ」


「この……!!」


ヒロムは立ち上がると構え、さらにフレイとディアナも武器を構えると三人は一斉に走り出した。


ヒロムは葉王を翻弄しようと加速すると姿を消し、フレイは大剣を、ディアナは槍を勢いよく振り、葉王に攻撃を当てようとするが葉王はそれを素手で止めてしまう。


「な……」


「私たちの攻撃を!?」


驚くフレイとディアナだが、その二人の反応に葉王は呆れて、ため息をつくしかなかった。


「舐めやがってよぉ……」


葉王はフレイとディアナの武器をそのまま弾き飛ばすと二人の体に掌底を打ちつけ、二人を殴り飛ばす。


「きゃぁ!!」


「ただの攻撃で倒せると思うなよぉ?」


「……うらぁ!!」



ヒロムは葉王の背後に現れると殴るが、葉王はそれを後ろを見ることなくそれを避けると裏拳でヒロムを殴り飛ばす。


その一撃を受けたヒロムは何とかして体勢を立て直すと構えるが、葉王への攻撃を躊躇ってしまう。


そう、このままでは埒が明かない。


だとすれば……


「やるしかねぇか……」


「そう、それでいいんだよぉ」


「……ソウル・ハック……コネクト!!」


ヒロムはさらに白銀の稲妻を大きくするとフレイの持つものと同じ大剣を構えた。


さらにフレイとディアナも武器を拾い、構えるとともにその身に白銀の稲妻を纏う。


「最高っだなぁ……!!」



その姿を目にした葉王はマスク越しに笑顔を見せ、そして高らかな笑い声を上げる。


「ハハハハ!!

それでこそ立証するに値するんだよ、「覇王」!!

オマエらのその成長をもっとオレに見せろ!!」



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