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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・双王撃終
670/672

六七〇話 選択の権利


 翌日

 

 

 ヒロムはガイ、ソラ、そして黒川イクトと紅月シオンを連れて警察本部に足を運び、五人は本部の職員の案内で会議室に案内されていた。

 

 広い会議室に並べられたテーブルとイス、そのイスに腰かけてヒロムを呼んだとされる警視総監が来るのを待っている訳だが、イクトは自分が呼ばれたでもないのにソワソワしていた。

 

「やっべぇ……緊張してきた」

 

「んでだよ。

オマエはただついてきた金魚のフンだろ?

普通にしとけ」

 

「はぁ!?ソラ、今のは失礼だろ!!

大将を金魚扱いとかバカなのか!?」

 

「せめて今の流れなら金魚のフン扱いされた方に怒れよバカ!!」

 

 うるさい、とイクトとソラにシオンは冷たく告げるとガイに質問した。

 

「警視総監がヒロムをここに来るように言ってオレたちはそれについてきたわけだが、オレがいても問題ないのか?」

 

「というと?」

 

「今更だがオレはオマエらと出会うまでは悪党ばかりを狙ってたにしても当時はギルドに狙われてたような要注意人物だぞ。

そんなヤツがここにノコノコやって来て、警視総監は今更その事を咎めたりしないよな?」

 

「心配しすぎだよシオン。

警視総監がヒロムを呼んだのはあくまでセンチネル・ガーディアンについて話したいからだろうし、シオンの過去の件を持ち出すのならここに来た時点でシオンだけこことは別のところに連れていかれてるさ」

 

「それもそうか……」

 

「それにシオンが気にしてるその件は「十家会議」の前にヒロムが一条カズキに帳消しにするように頼んでたから何も起きないよ」

 

「……初耳なんだが?」

 

 自身の過去の行いを咎められないかシオンが気にしているとその件はヒロムが解決したと伝えるガイ。聞かされてすらいなかったことにシオンが驚きながらヒロムに視線を向けるとヒロムはシオンに告げた。

 

「……あの時はどうなるか分からなかったし、万が一失敗してオレのせいでオマエらが追い詰められないように保険を用意しておきたかったんだよ。

だからひとまずはシオンや真助、それにガイたちがこれまで出した街への被害やこれまでの行動については一条カズキの権力でもみ消してもらった」

 

「オマエを襲ったギルドのヤツがギルドそのものの立場が残ってる時に行動したのと同じだな」

 

「オレのは違う。

オレはアイツらの計画に賛同した上で報酬を要求しただけだ。

その要求が通ったからオマエらの行動全てが一切問われなくなったんだからな」


「……恩に着るぞヒロム」

 

「こっちこそな。

オマエは元々自由の身、それでもオレたちと行動してくれてるからな」

 

「オマエといると常々思ってしまうんだよ。

仲間ってのは悪くないって」

 

「……そうか」

 

 シオンの言葉にヒロムが少し照れくさそうにしていると会議室の扉が開き、開いた扉の向こうから少し歳のいった白髪の男が入ってくる。

白髪の男の出で立ち、それは一目見ただけで幾つもの修羅場をくぐり抜けたことが分かるほどの貫禄を持っており、ガイたちはそれを感じ取ると立ち上がろうとした。

 

が、男は手で立たなくていいと伝えるとヒロムたちと向かい合うように椅子に座ると自己紹介をした。

 

「初めまして、警視総監の地位を努めさせていただいている千山玄一だ。

ここに来てもらうよう部下に伝え、その呼び掛けに応じてもらって感謝する」

 

「……こっちは名乗らなくていいよな?」

 

「構わないよ、姫神くん。

キミたちとことは既にこちらは把握している。

キミたちの功績についてもね」

 

「功績?」

 

「黒川くん、キミは今から二年前に既に陥落して「十神」の手先として操られていた「八神」に仕える情報屋の一人を倒して武器の裏ルートでの販売と海外への密輸を間接的に阻止してくれた。

雨月くんは連続殺人事件と失踪事件の主犯者を倒してさらなる被害の増加を阻止してくれた。

相馬くん、キミは国外からの密入国したテロリストを壊滅させ、紅月くんは数ヶ月間黒川くんがかつて名乗っていた「ハンター」の名を引き継ぐ形で多くの悪人を倒して治安改善に貢献してくれた」

 

「オレたちがやってきたことを……」

 

「全部把握してるのか……」

 

「ここにはいない鬼月くんや東雲くん、そして氷堂くんについてもね。

そして姫神くん、キミは「竜鬼会」という組織の壊滅と「十家」の闇を暴くと共になかまとともに仲間と共に十神アルトを倒して日本に潜むひとつ一つの悪を撃滅してくれた。

その上で私は……キミたちに謝罪をしたい」

 

「謝罪?」

 

「すまなかった、では許されないだろう。

だが私は「十家」の権力の前で何も出来ぬままキミたちが苦しんでいることに気がつけなかった。

謝罪して許されるとは思っていないが……この場で謝罪させてほしい。すまなかった」

 

 これまで何も出来なかったと自身の不甲斐なさを詫びる警視総監・千山玄一は頭を下げ、千山が頭を下げるとガイたちは慌ててしまう。

が、ヒロムは落ち着いた様子で千山に顔を上げるように言った。


「まずは顔をあげてください。

オレたちはアナタに頭を下げさせたいわけじゃない。それにオレたちはこうなることを覚悟していたから何も気にしてねぇ」

 

「姫神くん……」

 

「大体謝るならオレたちの方だ。好き勝手暴れるだけの学生の身分でこんな所にわざわざ呼んでもらったんだ。それだけでも感謝すべきだ」

 

「……ありがとう。キミのような少年がいてくれることを心強く思う」

 

 顔を上げた千山はヒロムの言葉に感動すると一礼し、一礼すると千山は話を戻して進めようとした。

 

「では……そろそろ本題に入ろう。

聞いているとは思うが姫神くん、キミには政府と警察で提案した新たな武力行使を可能とした対能力者問題解決のための組織であるセンチネル・ガーディアンに所属してもらえればと考えている」

 

「してもらえれば?

所属は確定じゃないのか?」

 

「これは一条カズキの申し出なのだが、姫神くんにも選択権を与えて欲しいとのことだ。

これまでキミは否が応でも巻き込まれて日常を乱されていた。そんなキミが選択する余地もなくセンチネル・ガーディアンに強制的に属させられればより辛い思いをさせてしまうとね」

 

「アイツが……」

 

「彼の意見には私も賛成だし、政府もキミの選択に一任すると言っている。

断るのならそれで、引き受けるにしても条件などがあれば提示してくれればいくらかは考慮させてもらう。ただし、この場合の条件はセンチネル・ガーディアンについてのものと武力行使の点等の関係性のあるものだけにしてもらう」

 

「……」

 

 決定権を委ねられたヒロム。そのヒロムは決断をすぐ下せなかった。

 

 簡単なことでは無かった。これまではただ目の前の目的に対して自分たちの判断で動くだけだったからそこまで悩むこともなかった。だが今回は違う。今回のこの決断は後戻りが許されないものだ。簡単には下せない。

 

 簡単には下せないが、決断を下すための材料が足りない。そう感じたヒロムは千山に質問した。

 

「いくつか質問したいんだが……まずセンチネル・ガーディアンの権限ってのは千山さんが握ってるのか?」

 

「警察の管轄として所属してもらう予定ではあるが、キミが希望するのであれば方針を変えさせてキミだけはある程度は独自に動けるように手配もできる。ただし、だからと言って無差別な破壊や殺人、それに準ずるような行動が見受けられる場合は即刻管轄を私のもとに戻すかキミの処分が下されることだけは覚えておいてほしい」

 

「それについてはその方針でお願いしたい。

正直どこかに属するとか管理されるとかは苦手だからな」


「ならば命令拒否権も申請しておこう。

それならばキミに対して無闇に指示を送ることも無くなるからね」

 

「助かる。

……まだ気になることがあるんだが、いいか?」

 

「何だね?」

 

「トウマの罪については無罪にしてくれたことは感謝してる。

ただ、姫神愛華の処罰はどうなる?」

 

「彼女についてはまだ何も決まっていない。

本人はどんな罪も受け入れるつもりのようだが、私としては彼女はキミを助けるために危険を承知でリスクを冒したと思っているし、そもそも「竜鬼会」の問題は彼女に助けられたゼアルと呼ばれるものの仕業だと思っている。そのゼアルをキミが倒してたことで「竜鬼会」の件が終わったのなら彼女を罰するのはどうかとも思っている」

 

「なら……頼みがある。

姫神愛華を……母さんを釈放して欲しい」

 

「ヒロム……?」

 

 わかってる、と自身の言葉に戸惑いを隠せないガイの言わんとすることを察したのか彼に一言言うとヒロムは彼だけでなく千山やソラたちに姫神愛華の釈放を申し出た理由を明かしていく。

 

「オレは今でも母さんのしたことを許せない気持ちがある。

母さんの良かれと思った行動がテロリストという存在に「竜鬼会」を発展させ、オレはその後始末のようなことをした。

オレのためと言いながらやってることは身勝手だと許せなかったけど、そんな母さんが助けてくれたからオレは十神アルトを倒せた。オレは少なくとも母さんの力で傷を治されてなければ今皆を守れなかったと思ってる。だから……」

 

「姫神くん、それがキミの望みなら私は必ずキミのお母さんを助けると約束する。

キミのその思いを他の者が聞いても納得するはずだ」

 

「千山さん……」

 

「……オレは許してねぇけどな」


 ヒロムの言葉に千山の心が動かされる中、ソラは不満があるような態度でヒロムに告げた。

 

「あの人がいなければ「竜鬼会」を生むこともなかったし、あの人がオマエの遺伝子情報を利用しなければゼアルは力を得なかった。そしてオマエが「竜鬼会」を倒した者ではなく街を壊した最低な能力者みたいな仕打ちも受けなくて済んだんだからな」

 

「ソラ、それは……」

 

「けど、そんなんがあったのにオマエがあの人を釈放しろって言うんならそれはオマエが今までのこと全部許したって事なんだろ?ならオレはそれに文句をつけるわけにはいかねぇよ。誰よりも許せないはずのオマエが許してるなら尚更な」

 

「ソラ……ありがとな」

 

「……礼を言うくらいならセンチネル・ガーディアンを引き受けるかどうかハッキリ決めろ」

 

 自分の思いを伝えると素直になれない気持ちを隠すかのように決断しろと急かすソラ。そのソラの言葉を受けたヒロムは改めて気持ちを整理すると千山の方を向いて真剣な表情で決断した答えを述べていく。

 

「千山さん、オレは……」

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