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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・双王撃終
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六六二話 ビヨンド


 新たな力を纏い新たな姿となったヒロムの冷たい眼差しがアルトを睨む。

そのヒロムの言葉を理解できないアルトは戸惑っていた。

 

『オレの知る精霊も霊装も存在していないだと?

デタラメなことを……。オレはオマエからその力を得た。

その時点でオレの中にはオマエの精霊とそれに伴う霊装の力を内包している。

なのに何故存在していないと言い切れる?』

 

「……この力がそういう力だからだ」

 

『何?』

 

「本来のオレの力は十四人の精霊と霊装の力を借りて戦う変則戦闘を可能とした能力だった。

だがあまりにも強かった力がオレの中に留まろうとして変化を遂げたことで複数の精霊という形を生み出し、それらがオレのこの霊装の力を封じていた。

だからこの霊装が表に出るってのはそういう事なんだよ。この「ビヨンド・ソウル」の力を外で纏えば封じられていた力が解放されて全てがリセットされる。元々の形に戻されるべくフレイたち精霊と霊装はオレの精神世界の中で眠りについて目覚めるのを待っている。目覚めた時には……オレの知る精霊は今どこにもいない。オレの中にあるのはかつては精霊や霊装だった魔力だけだ」

 

『……フハハハハ!!

なるほど、理解したぞ!!オマエはオレを倒すために自分が大切にしていた精霊を見殺しにしたんだ!!そしてその過程で生まれた力でオレを倒して何もかも終わらせようと言うのがオマエの魂胆だ!!

面白いことをするな、姫神ヒロム。オマエはオレを他人から力を奪うだけと否定していたが結局オマエも同じだ!!自分が勝つために精霊を殺した!!オマエのその行動がオレと違うとでも……』

 

「違うさ」

 

 ヒロムは音も立てずにアルトの前に移動すると白銀の稲妻をアルトに向けて放ち、放たれた白銀の稲妻がアルトを直撃して彼の言葉を黙らせる。

 

 白銀の稲妻を受けたアルトが怯んでいるとヒロムは彼が言おうとした言葉を否定した。

 

「オマエのそれは己の願望のために奪ってきたものだ。だがオレのこの力は……託された力だ」

 

 ヒロムの中である言葉が……精神世界で起きたある場面の精霊・フレイの言葉が甦っていた。

 

『マスター、ここでお別れだとは思っていません。

でも……私たちが戻らなくても忘れないでください。アナタのその霊装の中には私たちだった力が残っていることを……私たちがいたことを……忘れないでくださいね』

 

「……忘れるわけねぇだろ」


 彼女の言葉を思い出すヒロムは拳を強く握り、そして白銀に変化した瞳からは涙が流れ落ちる。

 

「オマエたちがいたから……オレは強くなれた。

オマエたちがいたからオレはここまで来れた。

オマエたちがいたからこそ……オレはこの力でコイツを倒す!!」

 

 拳を強く握り、己の強い意志を口にしたヒロムは白銀の稲妻を強く纏うと目にも止まらぬ速さでアルトに接近し、ヒロムが接近するとアルトの体に数発の攻撃が叩き込まれる。

 

 いつ放たれたかは定かではないが、ヒロムの接近とともにアルトは攻撃を受けていたのだ。

 

『ぐっ……!!』

 

「だらぁ!!」

 

アルトが怯んでいるとヒロムは蹴りを放ち、ヒロムが蹴りを放つとアルトの体に無数の衝撃が叩き込まれていく。

 

 ヒロムは一度しか蹴りを放とうとしていない。なのにアルトの体にはいくつもの衝撃が叩き込まれそれらがダメージとしてアルトを確実に追い詰めていく。

 

『ば、バカな……』

 

「はぁっ!!」

 

 アルトが衝撃を叩き込まれて追い詰められる中でヒロムは白銀の稲妻を拳に纏わせると敵を殴ろうと構え、ヒロムが構えると同時に彼の拳はアルトの顔面、肩、腹にそれぞれ数発命中してダメージを与えていた。

 

 気がつけば、だ。構えてから攻撃が命中するまでの動作とその瞬間が認識出来ぬ速度でヒロムがその全てを行っていると考えるのが自然なのだろうが、だとしてもいつの間にか放たれて命中している攻撃を受けるアルトはその気がつけばが起こっていることで抜けている動作に気づくことも感じることも出来ずにいる。

 

 いや、そもそもそんなものが存在しているかすら分からない。

通常ならば殴るなら構えてから拳が当たるまでの、剣ならば構えてから斬るまで、銃ならば構えてから引き金を引いて弾丸が放たれるまでが攻撃動作として当然のように認識できる。

 

 だが今のヒロムは神に等しい力を持つアルトのスピードもパワーも凌駕している。そんな彼の攻撃一つ一つに認識できるほどの動作があるのだろうか?あるのはあるのだろう。おそらく……認識させる隙のない完璧に人智を超えたスピードによって認識すらさせてもらえていないのだ。

 

 アルトは薄々それに気づき始め、ヒロムの放ったとされる攻撃を受ける中でヒロムの動きを見極めようとしていた……が、それはそう簡単なことではなかった。


 アルトがヒロムの攻撃を避けようと思ってヒロムの動きを見たところでヒロムは攻撃を繰り出そうと拳や蹴りを放つ体勢へ構えた途端にすでに攻撃をアルトに命中させている。

 

 その構えてから攻撃までの一連の流れが極端に無さすぎるがためにアルトは見極めることすら出来ずに攻撃を受けていた。

 

『な、何だ……この力は……!!』

 

 ヒロムの得体の知れない力を前にしてアルトは戸惑いを隠せず、戸惑いを隠せぬままヒロムに反撃しようと試みるが、アルトが反撃しようとした時にはヒロムがすでに拳を構えて拳撃が数発アルトに叩き込まれてしまう。

 

 もはや今のアルトはヒロムの後手に回されている。

アルト自身もそれを理解しており、何とかして形勢を立て直して反撃の糸口を見つけなければと考えていた。

だが頭の中でどれだけ考えをそこに導いてもヒロムの見えぬ猛攻を前にしては実現すら難しい。

 

『何故……何故オレの……力が……!!』

 

「……なんでオマエの力が通用しないと思う?」

 

 自身の力が通じず一方的にやられるアルトの腹に数発連撃を叩き込むとヒロムは彼に問うように言い、連撃を受けたせいで怯んで答えられないアルトに向けてヒロムは情けをかけるように教えていく。

 

「オマエの力は多くの能力者と人の命を糧に生まれた力だ。その強さは人智を凌駕してもおかしくないが、その力には意志なんてない。

ただオマエが欲望のためだけに振るう力として存在している飾り、だからオレには通用しない」

 

『飾り……だと……?』

 

「オレのこの「ビヨンド・ソウル」はここにはもういない精霊たちと……仲間の思い、そして大切な人たちの思いを背負っている。

その思いが力を高めてくれている……オレが戦うために皆の思いが背を押してくれている。だからこそオレはオマエを超える強さを発揮している!!」

 

『……黙れ!!』

 

 ヒロムの言葉を強く否定するとアルトはヒロムが動く前に十四色の稲妻を解き放ち、解き放たれた十四色の稲妻はヒロムの体に命中して彼を貫こう……としたが、ヒロムに命中した十四色の稲妻は彼の纏う白銀のアーマーに触れると四方に拡散されるように消し飛ばされて彼自身にダメージを与えることなく終わってしまう。

 

『なっ……!?』

 

「侮ったな、十神アルト。

神の力を得れば全てを支配できると思ったか?神の力が完成すれば誰もオマエを倒せないと思ったか?オマエはオマエ自身の自惚れによって終わりを迎える」

 

『ふ……ふざけるな!!』


 ヒロムの言葉を受けるとアルトは取り乱すように叫びながら禍々しいオーラを強く放出させ、放出させた禍々しいオーラの一部を剣に変えるとヒロムに向けて斬撃を放つ。

 

 放たれた斬撃は勢いよくヒロムに向けて飛んでいき、彼に命中してヒロムの体を引き裂こうとする……が、斬撃が命中してヒロムの体が引き裂かれようとするその瞬間、気がつけばヒロムは斬撃など一切受けていないかのように平然とした態度で立って右手に白銀の稲妻を纏わせていた。

 

『バカな……攻撃は……オレの攻撃は命中したはずだ……』

 

「未来輪廻、オレの体だけを数秒前の状態に戻して未来をやり直す力。オマエがどんな力を持っていようとオレは倒せない」

 

『そんなデタラメなこと……許されるわけが無い!!』

 

 アルトはヒロムを倒そうと次々に禍々しいオーラをビームとして撃ち放ち、放たれた攻撃の全てがヒロムに命中していく……が攻撃が命中したはずなのにヒロムは無傷のまま右手に纏わせる白銀の稲妻を強くさせていく。

 

 手応えはあった、なのに……それなのに……

 

『何故、何故倒れない!!

攻撃は命中したはずだ!!』

 

 訳の分からないことに声を荒らげて叫ぶアルトは禍々しいオーラを右手に強く纏わせるとヒロムに接近して拳撃を叩き込んでヒロムを殴り殺すように命中……させるが、ヒロムにその一撃が命中した手応えをアルトが感じているとヒロムは攻撃を受けたはずなのに平然とした様子でアルトの拳から少しズレた位置で拳を構えて立っていた。

 

『そんな……』

 

「歯ァ食いしばれや、十神アルト。

この力は……オレたちが未来を掴む力、オマエの未来を奪う力とは違うことを思い知れ!!」

 

 白銀の稲妻を強く纏わせる右手に眩い白銀の輝きを重ねて纏わせるとヒロムは拳を強く握ってアルトを殴ろうと拳を構え、アルトはこの一撃を何としても防ごうと禍々しいオーラを強く纏わせた拳でヒロムが攻撃する前に一撃を放とうとした。

 

 二人の放とうとする攻撃はぶつかりあい、白銀の稲妻と禍々しいオーラは火花を散らすほどの強い力で衝突し合い、その衝撃が二人に襲おうとしていた。


 だが、強い力の衝突による衝撃が襲うことにより負傷し始めたのはアルトだった。

 

 禍々しいオーラは白銀の稲妻に押し負けているのかその力が弱くなっていき、禍々しいオーラが弱くなっていくとヒロムの白銀の稲妻が衝撃とともにアルトの体を追い詰めていく。

 

『オレは……オレはこんなところで……!!』

 

「終わりだ……十神アルト!!」

 

 ヒロムがさらに力を高めて白銀の稲妻を強くさせながら更なる一撃を強く放ち、ヒロムが一撃を放つと彼の拳はアルトの顔面を殴り、ヒロムの拳がアルトの顔を殴ると白銀の稲妻が彼の全身を穿ち、そしてヒロムの放った一撃の力がアルトを勢いよく殴り飛ばす。

 

 殴り飛ばされたアルトは地に伏すように倒れ、白銀の稲妻に貫かれたアルトの体が倒れると彼の体から魔力が抜けていく。

 

『あ……あぁ……』

 

「……オマエの野望は潰えたぞ十神アルト。

それでもまだやるなら……かかって来いよ」

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