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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
魂霊装天編
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六六話 希望の光


光となったフレイとディアナに包まれるように光を纏うヒロム。


その姿を見たバッツはただ笑い、そしてヒロムの姿について話し始めた。



「闇には光で対抗する気か?

哀れだなぁ……力を使えるようになったらこれだ。

オマエも本質は変わらない……力に固執し、そして力に支配されている」


「対抗する気なんざねぇ。

それに固執してるかなんてオマエにだけは言われたくない」


「そうやって必死に否定しようとしても変わらない……。

オマエはそうやって他人に縋り、そして得た力を振るうことしかできない……「無能」なんだよ、すべてにおいてな」


「オレが「無能」なら、オマエは何なんだ?」


「……何?」


突然のヒロムの言葉、それを聞いたバッツは嫌悪感を露わにして、そしてヒロムを強く睨んだ。


が、バッツがどうしているかなど気にすることなくヒロムは続けた。


「人の体を乗っ取って周囲を踊らせ、自分の掌の上で思い通りにしようとしていたオマエはここにいる「無能」と自身が乗っ取っていた体の主に邪魔された。

そしてオマエはその対策として他人の力を奪うことで新たに肉体を生み出し、人間と精霊を凌駕したであろう存在になったのにオレと精霊の前で苦戦している」


「黙れ……」


「オマエがどう名付けようがどうでもいいが……今のオマエはオレからすればただ虚勢張って強がってるようにしか見えねぇよ」


「黙れ!!」



バッツはヒロムの言葉を否定するように叫び、そして自身が放出する闇をさらに大きくしていく。


そしてバッツは反論するかのようにヒロムについて言い始めた。


「偉そうに言うがオマエは何も出来ていないじゃないか!!

少し力を持ったくらいで強くなったと思い込んで倒され、そして目の前で何も出来ずに仲間が倒されるのを見ていただけだろうが!!」


「……そうだよ、オレは仲間を守れなかった。

だからこそ、今ここでオレがオマエを倒す!!」



ヒロムの言葉に呼応するように光は大きくなり、フレイとディアナの姿がヒロムと重なるように並び、そしてさらに光は輝きを増していく。


「ソウル・ハック……クロス・リンク!!

「天剣」フレイ、「星槍」ディアナ!!

光とともにオレを導け!!」



光が一筋の柱となるとともにヒロムが光の中から現れ、そしてそのヒロムは姿が変わっていた。



白のコートとそれに連結するように存在する青い腰布を身に纏い、そしてその下には青い衣装と白のズボン、さらにガントレットとロングブーツを装着していた。



それらの衣装や装備品にはどこかフレイとディアナを連想させるような意匠が施されており、特にガントレットとロングブーツは彼女たち二人の装備を合わせたような見た目になっていた。


「……クロス・リンク、完了」


「何をしたんだ?」


「……別に大したことじゃない。

それでも知りたいなら教えてやるよ」



「……見下すのも大概にしろ!!」


バッツは怒りに任せて紫色の稲妻をヒロムに向けて放つが、紫色の稲妻はヒロムに迫っていく途中で何かに衝突したのか、急に消滅してしまう。


「!?」


「バッツ、オマエは自分の力に他人から吸収する方法で奪った力を合わせることでその姿になった。

だがオレの「クロス・リンク」は違う。

コイツはオレの魂に二人を定着させ、その上で二人の力を身に纏っているんだ」


「定着させる……だと!?」


「そうだ。

「ソウル・ハック」は元々オレの魂を精霊と同列になるように昇華し、フレイたちと繋がりやすくする力だ。

つまり、「クロス・リンク」のこの姿は「ソウル・ハック」の真の姿でもあるんだよ」


「あ、ありえない!!

そんなことをすればオマエの「ハザード」は……」


「勘違いしてるみたいだから教えてやるよ……。

オレの発症した「ハザード」なら、オマエと対峙した三日前にはすでに治ってたんだよ!!」


「!!」


「いくぞ、バッツ。

絶望も、野望も、闇もオレが潰す……その身に宿す魂燃やして、オレを滾らせろ!!」


ヒロムは走り出すと音もなく消えてしまう。


どこに消えた?

それを探ろうとバッツは周囲を見渡そうとするが、そうしようとした時にはヒロムは自身の目の前にいた。


「な……」


「遅い!!」


バッツがそれに気づいて動こうとすると、バッツはいつの間にか殴られており、そして吹き飛ばされていた。


「!?」


驚くバッツは体勢を立て直して立ち上がろうと考えるが、そうしようとした時にはすでにヒロムが目の前におり、そしてバッツは勢いよく地面に叩きつけられてしまう。


「がは……!!」


「この程度か?」


地面に叩きつけられたバッツは気づけば宙へと体が浮いており、そしてヒロムが手をかざすと同時に腹に殴られたかのような衝撃が走り、そして勢いよく壁へと叩きつけられる。


「なぜ……」


「これが力の差……オレとオマエと到達した場所の違いだ!!」


ヒロムは音もなく消え、そしてそれと同時にバッツは何度も何かに殴られるような衝撃に襲われる。


バッツが行動を起こそうとするとそれよりはやくヒロムの攻撃がバッツに命中している。


何が起きているのか?

バッツは自分の身に何が起きているのか理解が出来なかったが、これだけは理解出来ていた。


今のヒロムは自身の力を大きく上回っている。


この短時間で力を増し、そして一瞬で上回ったのだ。




が、理解しているとはいえ、それを受け入れるほどバッツも甘くはない。


「調子に乗るな……ガキが!!」


どこかに弱点がある、そう思ったバッツは紫色の稲妻で槍を作るとヒロムに向けて放つが、ヒロムはそれをガントレットを付けた拳ですべて砕き、ダメージを受けることなくすべてを凌いだのだ。



「バカな……精霊と戦うことを主としてきたオマエが、精霊を支配して得た力でこんな……」


「何勘違いしてるんだ?

今のオレは……今のオレたちは……」


「三人で力合わせてるんだよ!!』



ヒロムの声に重なるようにフレイとディアナの声が響き、そしてヒロムの瞳は青く輝き、その手にフレイのものと同じ大剣が現れる。



「三人で力合わせて、だと!?

デタラメを言うな!!」


バッツは攻撃しようとするが、気づけばヒロムの持つ大剣が放つ斬撃がバッツの体を抉っていく。


「!?」


「事実だ、「クロス・リンク」はオレをベースに二人の力を極限まで高めるてオレの魔力と合わせて発動している状態……つまり、今のオレはオレたちの力を最大限に発揮してんだよ!!」


「だが口だけではなんとでも言える!!

そんな……」


「言ってろ」


ヒロムは大剣を地面に突き刺すと新たにディアナの持つものと同じ槍を構え、そして全身に光を纏う。


「オマエが何と言おうとオマエはオレに勝てねぇよ!!」


光を纏ったヒロムは姿を消し、それと同時にバッツの周囲に無数の光の斬撃が襲いかかるように現れる。


さらにバッツの周囲を何かが視認できぬほどの速度で駆け巡り、気づけばヒロムはバッツの背後におり、その手に持つ槍で連続で突きを放っていた。


ヒロムのその連撃を受けたバッツは大きく吹き飛び、そして吹き飛んだ先で倒れるとともにその体にはガラスの器にヒビが入るかのように所々に亀裂が走る。



「な……」


おそらくそれが原因なのだろうが、バッツが放つ闇も徐々に薄れ始めていた。


力を奪い、そして魔力を奪い作り上げた人と精霊を凌駕する肉体。

それ故に損傷がひどくなるにつれて、「器」が壊れるように壊れ始めていたのだ。



焦りを見せ始めるバッツを前にヒロムは槍を左手に持ち直すと光とともに消え、そして先程突き刺した大剣のもとへ姿を現すと右手でそれを引き抜いた。



「決める……その身に刻め、オレたちの力を!!」



ヒロムは全身に纏う光の上に白銀の稲妻を走らせ、さらに両手に持つ二つの武器に魔力を纏わせるとまたしても光となって消える。


それと同時にバッツへ無数の白銀の斬撃が次々に襲いかかり、そしてその周囲を白銀の稲妻が縦横無尽に駆け巡る。


駆け巡る白銀の稲妻が勢いを増すとともに斬撃は大きく、そして鋭くなっていき、バッツはそれに追い詰められていた。



いつの間にか白銀の稲妻は視認できぬほどの速度となり、斬撃もそれと同じ速度で放たれていた。


「あ……ありえない……!!

オレの……計画は……こんな……」


バッツは斬撃によりすでに深刻なダメージに達しているらしく、体全体に亀裂が入っていた。


そしてその身から放出されていた闇ももはや枯れたのか完全に消えていた。


「オレは……世界を……」


「終わりだ」


斬撃が止まり、そしてヒロムはバッツの前に姿を現すと、槍と大剣を重ね合わせる。


重ね合わさった二つの武器は一つとなり、長い柄に白銀の刀身の大剣へと姿を変えた。


ヒロムはその大剣を両手で持つと勢いよく振り回し、刀身に白銀の稲妻を纏わせると大きく振り上げる。


振り上げると同時に大剣の刀身に魔力と光の刃が現れ、白銀の稲妻を大きくしていく。

「セイクリッド・バースト!!」


ヒロムが大剣を振り下ろすと、大剣が纏っていたすべての力が音もなく消え、気づけばバッツは白銀の巨大な斬撃に襲われていた。


その斬撃は威力を増していき、バッツを巻き込むように弾け、光が標的を貫いていく。


「がっ……」


ヒロムは武器を光に変えて消すと、バッツに背を向けてそのまま歩き始めた。


「じゃあな、哀れな騎士」


「ふざ……け……」


ヒロムに対してどうにか攻撃を放とうとするバッツだが、体が一気に魔力となるとそのまま粒子となり、そして消滅していく。


「……るな……」


粒子となった魔力は完全に消え、そして彼が体内へと吸収した魔剣・バットナイツが粉々に砕け散る。


終わった、その場にいた者が、戦場と化したパーティー会場にいた者全員がそう感じたのだ。



静まり返った会場、ヒロムは安堵のため息をつくと元の姿となり、そしてフレイとディアナもそのそばに現れる。


が、戦いを終えたヒロムは力が抜けたかのように倒れてしまう。


「ヒロム!!」




慌てて駆け寄るガイとソラ。

ヒロムの身に何か起きたのではないかと心配した二人だが、駆け寄った時にはヒロムは小さな寝息を立てていた。


「……寝てやがる」


「んだよ、疲れたのかよ……」



心配して損した、とガイとソラはため息をつくが、周囲はヒロムの勝利に拍手をし始める。


拍手の響く中、ソラはイクトの方を見た。


夕弦を庇い重症を負ったイクトは愛華の治癒を未だ受けている。


「……イクト……」


「おい、オマエら」



拍手響く中、蓮夜が近づいてくる。


何か言われる、と覚悟を決めてしまうガイとソラだったが、蓮夜は二人の頭を軽く叩くとため息をついた。


「オマエら「天獄」の決意、見させてもらったよ……。

ガキのくせによく頑張ったな……」


「蓮夜、さん?」


「……こんな状況だ、パーティーは中止だ。

が、オマエらは敵を倒すために尽力したんだしな……後のことはどうにかしてやるよ」



オマエら、と蓮夜が大きな声を出すと黒いスーツの男が何人も現れる。


彼らは蓮夜の部下、つまり「月翔団」に属す者たちだ。



「仕事だ仕事。

パーティー参列者の安否確認と屋敷の損傷状況の確認、それと怪我人の搬送急げ!!」


「「はっ!!」」


「いいかぁ?

オレらは敵の侵入許したんだ……この不祥事の後始末くらいしっかりやれよ!!」


「「はっ!!」」



蓮夜の指示を受けた者たちは役目を果たすために走っていく。


それとすれ違うようにユリナがヒロムのもとへと走ってくる。


「ヒロムくん!!」


「大丈夫ですよ、ユリナ。

マスターは私とディアナの力を使って疲れてるだけですから」


フレイはユリナを安心させようと伝えるが、それでも心配な気持ちが消えないユリナはヒロムの手をそっと握りしめた。


「良かった……心配したんだからね?」


ユリナは涙を流しながら何度も何度も「良かった」と口に出していた。


そんなユリナを見ながら、ガイは確認するようにソラに告げる。


「……勝ったんだよな?」


「勝ったよ……ヒロムはな」


ソラはため息をつくと、どこかへ行こうとする。


「ソラ?」


「少し風に当たってくる」


ソラは一言言うと外へ行こうと歩き始めた。

が、そのソラは勝利した者と思えぬ表情を浮かべていた。


(バッツを倒したことに変わりはないかもしれない……。

だが、オレたちはヒロムのために何もしてやれなかった……)


「オレは何のために強くなろうとしてたんだよ……!!」


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