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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・双王撃終
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六五四話 終極の選択


 ……精神世界……

 

 決意を固めたヒロムとゼロはヒロムの内包するこの精神世界へと来ていた。

 

 ヒロムの精神世界、そこにある白銀の城を前にしたヒロムは思わず足を止めてしまう。

 

「ヒロム?」

 

 先に進もうと歩いていたゼロはヒロムが歩みを止めるのを感じ取ると歩みを止め、何かあったのか確かめようとする。が、ヒロムは別に何か異常があったから立ち止まったわけではなくただこの精神世界にある白銀の城を前にしてあることを思っていたのだ。

 

「……この城、最初から今に至るまで変わらずここに存在してたんだ。

何も思うことも無くこれまで過ごしてきたけど、この城はある意味でオレの力を暗示してこの姿をしていたのかもな」

 

「考え過ぎだろ?」

 

「そうかもしれないな。

けどオレはここでセラと出会い、ゼロと初めて出会って戦った時にラミアたちを感じ取り、ティアーユやステラのことを知り、そしてここでゼロともう一度出会って繋がりを交わした。

何かある時は必ずここで起きる、それを思うとこの城にも何か意味があると思ってしまうんだ」

 

「……アナザーどもの件も含めればそうかもな。

けど、今はそんなことを気にして……」

 

『やっと来たか』

 

 ヒロムが思いに深けている中先を急ぐようにゼロが言おうとするとヒロムでもゼロでもない声がし、その声の主と思われる何者かが二人の前に現れる。

黒衣に身を包みしその人物はヒロムに似ているようで似ていない雰囲気を持つ青年で、どこか大人びたような雰囲気を醸し出していた。

 

 突然現れた青年、その青年の存在をある一件で知っているヒロムは落ち着いた様子で見ており、彼を知らぬゼロは思わず警戒してしまう。

 

「アナザーか!?」

 

「いや、違う。

前に話してたトゥルースを倒した際にオレに助言してくれた謎の男だ」

 

「コイツが?」

 

『待ち侘びたぞ姫神ヒロム。

この精神世界で数千時間ほど待たされてそろそろ嫌気がさしかけてたから……ようやくという感じが強いな。

それと……今回は同行人もいるようだな』

 

「……コイツがヒロムの霊装を導き、七つの大罪と七つの美徳のヒントを与えた男か」

 

『初めましてだなゼロ。

この場では初めてかもしれないが、これで二度目だな』

 

「あ?」


『かつて姫神ヒロムの意識を乗っ取るだけの闇としてここに現れたオマエが倒されても消滅せずにこの世界に残れたのは何故か、考えたことはあるか?

オマエが姫神ヒロムに倒されたのも、姫神ヒロムに倒されても存在を保てているのも全てオレが関係している』

 

「どういう意味だ?

つうかヒロム、オマエは知ってるのか?」

 

「知るわけないだろ。

コイツが何を考えてるかも何者でどういう存在かはな。

ただ曖昧な形で分かることはオレの答え次第でコイツは味方にも敵にも蔵替わり出来る立場にあるってことだ」

 

『よく覚えていたな姫神ヒロム。

そう、オレはオマエたちの選択で敵にも味方にもなる中立だ。支配を拒み仲間を助けたいと望んだ姫神ヒロムに味方をし、時には消滅することを恐れたゼロの存在を消えぬように保たせたのもオレだ』

 

「……要するにヒロムの精神世界で起きること全てがコイツの仕業ってことか?」

 

「みたいだな。

だったら……コイツに聞くしかねぇよな」

 

 二人の前に現れた青年は何か知っている。そこだけは明らかに分かる二人は言葉で確かめ合うこともなく今やるべきことを認識し、その上でヒロムは青年に尋ねた。

 

「質問がある。

オマエがここにいるのはオレたちがここに来たのと関係あるんだよな?」

 

『外界の騒動については知らぬ事だが、オマエたちがここに来るであろうことは想定できていた』

 

「それはヒロムの霊装が不完全だからか?」

 

『……そうだな。いや、不完全だからというのは語弊があるな。

シンギュラリティの覚醒に到ったことで姫神ヒロムの霊装たる白銀の装・「レディアント」はその力を一切の制限なく使えておかしくないはずだ。

だが姫神ヒロムはその力を一部しか使えない、それは何故か?答えは姫神ヒロムとオレの決断による副作用だ』 

 

「副作用?」

 

「オマエとヒロムの決断ってのはコイツが幼い頃に精神世界で起きた精霊の封印のことか?」

 

『察しがいいなゼロ、その通りだ。

もう知ってるとは思うが姫神ヒロムの精霊十四人には七つの大罪と七つの美徳という象徴がそれぞれ与えられているわけだが……ここで奇妙だと思ったことはないか?』

 

「何がだ?」

 

「……何故十四人だけが霊装を与えられるのに他の二十八人はそれと同じかそれに近い何かを与えられていないのかってことが言いたいんだろ?」

 

 青年の言う奇妙だと思うことに心当たりのないヒロムが不思議そうな反応をしているとゼロは青年に問い返すように言い、ゼロの言葉を受けた青年は頷くとゼロの言葉に対して深堀していくように話していく。


『さすがはゼロ、冷静に物事を見抜く力に長けている。

今オマエが言った通り十四人の精霊が特殊な武器を持つのに対して他の二十八人は何故それに代わるようなものを与えられていないのか、それについて話してやろう』

 

「何か意味があるってのか?」

 

『物事には何か理由がある、それが常識だぞ姫神ヒロム。

オマエは不思議に思わなかったか?霊装の力が精霊に宿るに連れてオマエ自身が肝心の場面で使役する精霊は二十八人からは選ぶことなく十四人の中で留めてることは無意識かどうかをな』

 

「それは……」

 

「ヒロム、オマエが一番よく理解してる話をしてやる。

オマエ……シンギュラリティに覚醒してから「クロス・リンク」を使ったことあるか?」

 

「……ッ!?」

 

「……霊装を持つ精霊の力を身に纏う術を得たオマエは「クロス・リンク」というバリエーションに長けたこれまでの十八番を一切使わない代わりに多用するようになった。

闇に囚われたトウマを救う戦いの時も全ての精霊を出せば戦力の確保は可能なのにオマエはあえてそれをしなかった。

ヒロム……オマエは無意識のうちに霊装が意味することに気づいていたんだ」

 

 ゼロの言葉、それを受けたヒロムはひどく動揺してしまう。自覚がなかったのか、ほんの少しでも認識していたかは定かではないがヒロムのこれまでを見てきたゼロのその指摘はヒロムの心を乱す。

 

 心を乱されるヒロムは動揺してしまう中で平静を保とうとしつつゼロの言葉に対して反論する。

 

「フレイたちや霊装の力を多用していたのは霊装の力は敵が情報を持たないと思っていたからだ。

そんなくだらない理由で……」

 

「くだらないことはない。

オマエ自身が意図してそうしていたならともかく、ここ最近のオマエの戦い方は霊装に頼りきったものだった。

本来の形と逸れることで精霊の力を使えなくなりつつあるオレと違いオマエはいつでもその力を使えたんだ。それでも偏りがあるのは……オマエがそれを理解してるってことだろ?」

 

「違う……オレは……!!」

 

『落ち着け二人とも。

過去は過去だ。それに今回の件で霊装が多用されるのは悪いことではない』


 ヒロムとゼロの話を止めるように言うと青年はヒロムの精霊についてのある話を彼にしていく。

 

『姫神ヒロム、オレがかつて見せたこの精神世界で起きたメモリーについて覚えているか?』

 

「あ、ああ……。

フレイたち最初の十一人をオレのもとへ送り、残りをオマエが隠すことになった一連の流れのことだよな?」

 

『その時にオレが言った言葉を覚えてるか?』

 

「えっと……想定外のことが起きてこのままじゃオレが知らないまま……」

 

『そんなのはどうでもいい。

オレ自身が言った言葉……「十四の異なる系統とそれぞれに該当する能力は今や能力を持った精霊として覚醒してしまったが故の代償か」というところだ』

 

「えっと……そんなこと言ってたのか?」

 

 青年がかつてヒロムに見せた彼の精神世界で起きたある出来事についての過去のヴィジョンの中の言葉について覚えてるかを問う青年にヒロムは記憶が曖昧だという反応を示し、その反応を受けた青年はヒロムに分かるように話していく。

 

『オマエの力は元々十四の異なる系統で分けられていた。それが十四人が与えられた霊装だ。

だがそれが未成熟な幼いオマエの精神が耐えられなくなったことで想定外の変化……つまり四十二人の精霊となったんだ』

 


「想定外の変化……ってまさか……」

 

「……ヒロム、どうやらオマエとオレは想定してた状況以上の崖っぷちに立たされてるようだな」

 

「……元々、精霊は四十二人もいなかったってことなのか?」

 

『その通りだな。

十四の霊装は十四の精霊に与えられ、元々オマエが白銀の霊装「レディアント」を介して使役する予定だった。

だが十四人の精霊と十四の霊装が力の変化に巻き込まれたことにより本来は存在しないはずの二十八人の精霊を生み出した。

それどころか……元々霊装を与えられていたはずの精霊が今は与えられず、存在しないはずの側にいる精霊が今は霊装を手にしている。

さらに最悪なのは七つの大罪と七つの美徳を冠するそれぞれの力が力の変化の影響で乱れてしまっている』

 

「それはオマエがヒロムから力を預かった時点で防げなかったのか?」


『生憎オレが行った事にそれほどの効果はない。

せいぜい精霊の記憶を封印して姫神ヒロムが無闇矢鱈に精霊を解放しないようにすることと姫神ヒロムが急激な強さを得て意識が崩壊しないように防ぐのが手一杯だったんだよ』


「なるほど……ヒロムの力を管理はしてたけどその変化は管轄外ってか?」


『そういうことになるな。

現に霊装を直結させる稲妻の色もその変化によりズレてしまっている』

 

「無責任すぎないか?」

 

『その謝罪も兼ねてここに来たんだが……元々ここにいないはずのオマエがそこまで熱心に知ろうとするのは意外だな。

姫神ヒロムにそこまでする強い意志があるという事だな?』 

 

「オマエ……!!」

 

 よせ、とヒロムはゼロを止めると深呼吸し、深呼吸するとヒロムは青年に結論を話させるべく今知りたいことについて尋ねた。

 

「オレは精霊を……オマエの言う存在しないはずの二十八人の精霊を……手放さなきゃならないのかどうかを知りたいんだ。

オレの霊装の力を完全解放するためにゼロの「ディヴァイン・レイジング」の力をここで霊装に取り込むことと同時に精霊が消滅する形で霊装が完成するって話を聞いたんだが、それは本当なのか?」

 

『……大きな間違いだな』

 

 ヒロムの尋ねた内容を聞いた途端青年の声色が冷たくなり、青年の瞳が光るとヒロムの体が異様な光に包まれ始める。

 

「これは……?」

 

『姫神ヒロム、ゼロ。

オマエたちの力への関心と理解しようとするその意気込みは認めよう。

だが……覚悟が足りない。だからオマエたちにこの精神世界の全てを賭けた最後の試練を与える』

 

「最後の……」

「試練……」

 

『……オレと戦え。

そして真の意味でオレに勝ってみせろ』

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