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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天醒乱舞編・双王撃終
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六四五話 ハデス


 突然空に集まった闇と魔法陣、そしてどこからか聞こえてくる声。

その声を聞いたアルトは何かおかしかったのか笑うとイクトに言った。

 

「なるほど、考えたな。

現実と虚構を操れるオマエらしい奇策というわけだが、この程度の声でオレが動じるとでも思ったか?

その魔法陣も見てくれだけで何も仕込んでいないんだろ?

オマエは影を操る力と現実と虚構を統べる黒い炎を操れるわけだが、術式についてはオマエは操れるほどの技量は無い」

 

「だからアレはアンタを足止めするハッタリって?

残念だけど……アンタの考える通りに物事が簡単に進むと思うか?」

 

「何?」

 

「ハッタリって思ってるみたいだけど、アンタは一つ勘違いしている。

一つは過去に起きたことを糧にしていないことだ。アンタは今の力がベストだと思ってるみたいだけど、そのベストってのはアンタの思い込みだ。

仮にアンタが大将の全部を得たと思っていても実際得ていない可能性もある。それが現実なんだよ」 

 

「……偉そうなことを。

なら聞くが、オマエはオレの力を前にして何が出来る?

あの魔法陣が何を意味するかは知らないが、あんなものがあったところでオレの力がオマエたちを超えている事実は変わらない」

 

「それはその通りだ。

だけど、変わらない事実があるように変えようのない事実もある」

 

「何が言いたい……!?」

 

 何かある、イクトの言葉を聞いたアルトがそう感じて警戒しているとイクトは大鎌で防いでいたアルトの稲妻の剣を弾き返し、稲妻の剣を弾き返すとその衝撃で大鎌が壊れる中イクトは何かを唱えるように言葉を発していく。

 

「天より高く、地より深く。永久より来るは深淵。

深淵の中にある闇は心を捕え、捕えられた心は冥府に誘われる。

祖は我々を築きし神域の王、祖は天より堕ちし追放の証を背負いし神。

闇を統べて光を喰らうその力……地上へと顕現せよ!!」

 

 イクトが叫ぶと魔法陣が強い輝きを発するとともに無数の雷を地上へと落とし、雷が落とされる中で魔法陣から何かが姿を現そうとする。

 

 機械装甲に包まれた鋭い爪を有した腕のようなもの、それが魔法陣から姿を見せるとアルトは思わず声を出してしまう。

 

「バカな!?

オマエみたいなヤツが……オマエみたいな低能な能力者が!?」

 

「低能かどうかはその目で確かめろ!!

オレに力を貸してくれ!!冥界の覇者にして神の一人……ハデス!!」

 

 アルトに強く言い返したイクトが天に手をかざしながら強く叫ぶと魔法陣から姿を現そうとしていた何かが完全に姿を現す。


 機械兵器の神機を思わせる漆黒の装甲を全身に纏いし四か五メートルはある体躯のそれは鋭い爪を有すとともに大鎌を手に持ち、マントを翻すと赤く光るツインアイでゼウスを睨む。

 

『……貴様がゼウスか?

なるほど、こうして前にするとより人形らしさが目立つな』

 

「ば、バカな……!?

ハデスだと!?」

 

 現れた巨大な体躯のそれを前にしてアルトが狼狽え、狼狽えるアルトを前にしてそれは自らについて話していく。

 

『左様、私はハデス。

この下界に本来の姿で来るなど不要だと判断して貴様が生み出した兵器を模倣した姿を借りているが、正真正銘本物のハデスだ』

 

「何故だ!?

何故そんなガキに宿る!?オレの方が力も才能もあるのに何故そんなガキに宿るんだ!!」

 

『力?才能?貴様のどこにそんなものがある?』

 

「なっ……」

 

『そもそも貴様はここにいるヤツらが先程から告げていたように他人の力に縋っているだけだ。他人の力を利用して己のものにして自分を大きく見せているだけ、それが貴様という人間だ。

私がかつて忌み嫌い滅びればいいとすら望んだ醜い人類と同じだ』 

 

「ふざけるな……!!

オレは「十神」の当主!!神の名を持つ能力者なんだぞ!!

そんなどこの誰かも分からないような低能で代わりがきくようなガキとは格が違うんだぞ!!」

 

『私からすれば貴様などそこらに転がる石ころと大差ないわ。

そして私の前では人間など皆同じ存在、貴様如きが頭一つ抜き出ているということも無い』

 

「……偽物が!!

オレを強者と認めない神など偽物だ!!ゼウス!!そいつを殺せ!!」

 

 アルトの指示を受けたゼウスは紫色の稲妻を纏うとイクトのもとに現れた機械兵器・神機と同じ見た目をしたもの……ハデスを攻撃しようとするが、ハデスは大鎌の柄で地面を殴ると衝撃波を発生させてゼウスの攻撃を封じるとそのまま押し飛ばしてしまう。

 

 吹き飛ばされたゼウスは勢いよく倒れ、ゼウスが倒れるとハデスは嫌悪感を抱きながらアルトに向けて告げた。

 

『私の兄弟の名を与えておいてこの程度。

貴様は私の兄弟どころか神々を侮辱する行為をしている。そのような人間を生かしてなどおけぬ』


「ふざけるな……!!

オレの力にならないようなヤツが今更出てきて偉そうに!!

そんなヤツにオレの邪魔をされてたまるか!!」

 

『ふん、くだらんな。

貴様が何を望もうと関係ないが、私は神々を弄んだ貴様を許さん。そして神々を救おうと奮闘したここにいる勇敢な人間を助けると決めている』

 

「勇敢だと?

そいつらがオレに力を与えてゼウスを完成させた!!

それでもオマエはまだそいつらの味方を……」

 

 黙れ、とハデスが冷たく言うとアルトは異常なまでの強い力に気圧され、それにより言葉を止めたアルトに向けてハデスは言った。

 

『貴様は己の欲のために数多の人間たちを利用し、そして自らが最強となるためにあらゆるものを破壊しようとした。

そして今、世界の秩序を乱そうとする貴様は正しき行いをしようとした人間を殺そうとしている。

神々を弄び、人の命すら踏みにじろうとした貴様に生きる価値はない』

 

「……黙れ!!

オマエ一人が現れても何も変わらない!!ゼウスが完成した今オレは姫神ヒロムを超える力を得た!!その力があればオマエなんて……」

 

「それは都合が良すぎるぜ、十神アルト」

 

 どこからか声がした。誰の声かは分からなかったがイクトだけは違った。その声の主が誰なのか、彼だけはすぐに気づいた。

 

「その声は……まさか……」

 

「おいおい、オレのことはもう忘れたのか?

それとも……あまりに嬉しくて言葉を失ってるのか?」

 

 声の主に気づき、その上で言葉を失うイクトをからかうように言うとその人物は彼の前に闇と共に現れる。

 

 漆黒の鎧を身に纏いし騎士。頭は赤いバイザーのようなもので覆われ、バイザーの下からは黄色いツインアイが光を見せている。

 

「バッツ!!」

 

「よぉ、マスター。ただいまだ」

 

「な、何でバッツがここに!?

だってオマエはあの時……」

 

「衝撃の展開だったな、アレは。

まさかオレが消滅してオマエが覚醒するなんて……オレの筋書き通りにことが進んでよかった」

 

「え?」

 

「元々オレがオマエに宿ったのは飾音の願いを叶えるためってのもあるが、何よりもトウマを裏で操るヤツを倒すためにオマエが秘めている力を覚醒させるためだ。そしてオマエが覚醒することで引き起こせる奇跡……つまりは現実と虚構を同じように統べる力を持つと噂される伝説の存在ハデスとの繋がりを得るきっかけを生むためだ」


『まったく、大した精霊だ。

この私の力を借りたいために自らの死を選んであの世に冥府へと来たのだからな』

 

「バッツが……?」

 

 意外か、と驚くイクトに向けてバッツは言うと彼にあることを話した。

 

「オレがオマエに宿ったのは別にあのパーティーの件でオマエがオレの攻撃から夕弦を守ったからとかじゃない。

最初から黒幕を倒すためにオマエたちを強くさせるために飾音がオマエを選んだんだ。

そして……僅かな可能性しかない伝説の存在たるハデスと接触すればオマエはヒロムを守れるさらなる強さを得られるってオレは考えた」

 

「オレが強さを……?」

 

 ありえない、とバッツの言葉を否定するようにアルトは言うと続けてバッツの話の内容について指摘していくように話す。

 

「そのハデスが本物だという確証はない。ましてやバッツ、オマエの消滅も精霊ならばどうとでも演出できるだろ。

そんなのをオレが鵜呑みにするとでも?」

 

「……まだ認めねぇのか」

 

「オレを真似て神の名を冠するものを用意したのは認めよう。

だが所詮は猿真似、その程度ではオレとゼウスの力には及ばない」

 

「へぇ……まだ強気でいられるとはな」

 

『ならその余裕、どうへし折ろうか』

 

 アルトの言葉を受けたハデスは闇を強く纏うと殺気を放ち、ハデスの放つ殺気に威圧されそうになったアルトはやり返さんとばかりに禍々しいオーラを纏うと殺気を放つ。

が、アルトの纏う禍々しいオーラと放たれる殺気を感じ取ったハデスは思わず笑ってしまう。

 

『力を得てガラクタに兄弟の名を与えておいてこの程度の力か?それともまだ加減しているのか?

こんなのが本気なのならば拍子抜けで笑えぬわ』

 

「何?」

 

『よかろう……。

ならば貴様に見せてやろう。本物の神の力、そして神が人に力を授けることの意味をな』

 

 アルトの纏う禍々しいオーラと彼の発する殺気を笑うハデスは指を鳴らし、ハデスが指を鳴らすと天より雷がイクトの前へと落とされ、イクトの前に落とされた雷は漆黒の大鎌へと変化する。

 

 漆黒の大鎌、柄となる長い棒と刀身となる刃を繋ぎ止める部分は髑髏の装飾が施されており、刀身は二つの刃が一つに組み合わされたかのような形状をしていた。

 

 漆黒の大鎌を前にしたイクトはその武器に目を奪われ、大鎌が出現するとアルトは我が目を疑ってしまう。

 

「バカな……この力……!?」


『ようやく理解したか、愚か者。

これが私の力の一部をこの小僧……黒川イクトに託すために形付けた武器だ』

 

「オレに託すために……」

 

『受け取れ黒川イクト。

貴様は奇しくも私の持つ力の一つにとても近い力を持った人間。その武器の秘めた力を存分に扱えるだけの素質を備えておる』

 

「……ありがとうございます、でいいよな?」

 

『構わん。私はここに神々を弄んだあの男を倒すためだけに来ただけ。

そのついでに似た力を持つ人間にちょいと助けを差し伸べただけだ』

 

「そっか……。

じゃあ、遠慮なく使わせてもらうぜ!!」

 

 ハデスの言葉を受け取るとイクトは手を伸ばして漆黒の大鎌を掴み取り、イクトが漆黒の大鎌を掴み取ると大鎌から強い力が彼の体の中へ流れ行き、その力を受けたイクトは瞳を光らせると闇と共に黒衣を纏って大鎌を構える。

 

「すげぇ……!!

これがハデスの力……!!」

 

『小僧、私は兄弟と同じ名を与えられたあのガラクタを潰す。

小僧はあの憎き人間を捻り潰せ』

 

「おう!!任せとけ!!」

 

「ふざけるな……!!

黒川イクト、オマエ如きがオレを倒せると思うな!!」

 

 ハデスより武器を授かりやる気を見せるイクトに怒りを隠せぬアルトは禍々しいオーラを強く纏うと走り出し、アルトが走り出すとイクトは大鎌を構えて迎え撃とうとする。

 

「オマエはここで倒す。

仲間のためにも……オレを信じてくれた神のためにも!!」

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