六四三話 一転の一手
白銀の大剣に稲妻を纏わせたヒロムは走り出すとアルトを斬るべく大剣を振り上げ、ヒロムが大剣を振り上げるとアルトは大剣の一撃を受けまいと禍々しいオーラを強くさせながら彼の攻撃軌道上から逃れようと走ろうとした。
しかし……
「『クローズ』、『ドライヴ』」
ヒロムが呟くと大剣は青い稲妻と緑色の稲妻を纏い、大剣が二色の稲妻を纏うとヒロムは音も立てることなく視認出来ぬほどの超高速で動くとアルトが走ろうとする先に先回りすると彼に蹴りを入れて仰け反らせ、緑色の稲妻を強くさせながら大剣を振ると緑色の雷撃を炸裂させながら斬撃を飛ばし、飛ばされた斬撃と緑色の雷撃はアルトに直撃すると彼の纏う禍々しいオーラを吹き飛ばした上で彼を負傷させる。
禍々しいオーラが一種の防御となったせいか大したダメージにはなっていないが、攻撃を受けたアルトは頭から血を流し、右肩に抉られたような傷が出来ていた。
「ぐっ……!?」
「身に纏う力で免れたか。
けど、次はない」
「黙れ!!」
ヒロムの言葉を否定するようにアルトは叫ぶと禍々しいオーラを体に強く纏い直すとドス黒い闇を全身から放出するとともに重ねるように纏い、闇と禍々しいオーラを纏ったアルトは立ち上がると闇を剣にしてヒロムを斬ろうとするが、ヒロムは光の粒子となって姿を消してアルトの攻撃を避けてしまう。
アルトの攻撃を避けたヒロムは彼の背後に現れると彼を蹴り飛ばし、アルトを蹴り飛ばすと白銀の大剣に紫紺色の稲妻と藍色の稲妻を纏わせながら大剣を地面に突き刺す。
「『インヴァーション』、『インディグネイション』!!」
大剣が地面に刺されると周囲の熱が吸収されるとともに大地が凍りつき、周囲の熱が吸収された大剣は強い力を発すると紅い炎となってアルトに襲いかかり、アルトに襲いかかった紅い炎はアルトの纏う禍々しいオーラと闇の一部を消し去ると敵を吹き飛ばし、アルトが吹き飛ばすとヒロムは地面に突き刺した白銀の大剣を引き抜いて構え直すと今度は緋色の稲妻と琥珀色の稲妻を大剣に纏わせていく。
「『ファントム』、『ランペイジ』!!」
ヒロムは大剣を持ったまま光の粒子を無数の自分の姿に変化させるとともに琥珀色の稲妻を纏わせながら一斉に斬撃を飛ばし、一斉に放たれた斬撃は吹き飛ばされたアルトに追い討ちをかけるとさらに彼を吹き飛ばす。
「がはっ!!」
「『アメイジング』、『コズミック』」
アルトが倒れるもヒロムは攻撃の手を緩めようとしない。
白銀の大剣に今度は桃色の稲妻と杏色の稲妻を纏わせると光の粒子を流星の如く飛ばしてアルトのもとで爆発させながら様々な術式攻撃で敵を追い詰めようとしていき、光の粒子と術式攻撃を受けたアルトが負傷するとヒロムは赤色の稲妻と水色の稲妻を大剣に纏わせながら大剣を振る。
「『ブレイヴ』、『オルタナティブ』」
ヒロムの大剣が勢いよく振られると赤い炎と蒼い炎が白銀の稲妻とともに放たれ、放たれた三つの力は負傷するアルトを追い詰めるように襲いかかり、三つの力に襲われようとするアルトは禍々しいオーラと闇を強くさせるとそれらを炎のようにして解き放って防ごうと試みる……が、アルトの放った攻撃を白銀の稲妻が消し去り、赤い炎と蒼い炎はそれに続くようにアルトを襲うと敵をさらに負傷させる。
「ぐっ……バカな……!!
こんな、ことが……こんなことがあっていいはずがない!!」
ヒロムの度重なる攻撃を受けて負傷するアルトは自らが追い詰められている状態が納得出来ずに声を荒らげると禍々しいオーラをさらに強くさせ、禍々しいオーラの一部をヒロムが扱う霊装の稲妻を真似るかのように稲妻に変化させて撃ち放つが、ヒロムは白銀の大剣に白い稲妻を纏わせると光の障壁のようなものでそれを防ぎ止めて消し去り、アルトの攻撃を防ぐとヒロムは黒い稲妻をさらに纏わせる。
ヒロムがまだ攻撃する、それを何とかして阻止しようとアルトは禍々しいオーラを稲妻に変化させながら無数に放っていくが、ヒロムは黒い稲妻を纏わせた白銀の大剣で全て斬り壊すと破壊した敵の攻撃を大剣に吸収させて自らの力にすると大剣の力を強くさせる。
「『レガシー』……『ジェノサイド』!!」
力を高めた大剣をヒロムは強く握ると同時に力強く振ると巨大な斬撃を飛ばし、飛ばされた斬撃は大地を大きく抉りながらアルトに迫るとそのまま彼の纏う禍々しいオーラととともに彼を斬ってしまう。
斬撃に襲われたアルトの纏う禍々しいオーラはその斬撃の力によって完全に消され、アルト自身も肉体に大きな損傷を受けてしまって膝をついてしまう。
「ありえない……!!
何で……何でこのオレが……」
「オマエじゃオレには勝てない」
「そんなはずはない!!
オレはオマエの力の一部を得ているんだぞ!!
断片とはいえオマエと同じ力を得たんだ!!
それなのに……それなのにオマエに負けるなんてありえない!!」
「……まだ理解してないのか。
だからオマエはオレには勝てないんだよ」
「何……!?」
「オマエはただ与えられるか奪うかしかしていない。
力が何かを理解しようとせず、力を持つことの意味も知ろうとしない。
そんなオマエにオレが……守るために戦うことを決めたオレが使う力が負けるわけが無い」
「黙れ!!
オマエは所詮出来損ないの人間だ!!オマエだって精霊の力を借りなきゃ何も出来ないのに偉そうにオレに説教するな!!」
だからだよ、とヒロムは白銀の大剣に金色の稲妻と紫色の稲妻を纏わせるとその上から白銀の稲妻を強く纏わせ、三色の稲妻を大剣に強く纏わせるとヒロムは大剣を構えたままアルトに告げた。
「オレは一人じゃ不完全だ。
だからオレはフレイたちの力を借りて……オレたちに出来るやり方で未来を切り開くんだ!!」
白銀の大剣に稲妻を纏わせたヒロムは大剣を強く握るとアルトを倒そうと走り出し、ヒロムが走り出すとアルトは限界に近いであろう体を立ち上がらせると禍々しいオーラを強く纏おうとした、が……
彼が立ち上がると何か爆発音が響き、アルトが音のした方を見ると二機の神機を破壊したゼロがこちらを見ていたのだ。
「よぉ、あとはオマエ一人だ」
「バカな……!?
あの二機の神機を倒したのか!?」
「大した相手じゃなかったからな。
つうか、余所見してる場合か?」
自慢の二機の神機を破壊されて動揺するアルトにゼロが忠告すると彼はふと我に返って振り向き直すとすぐ近くまでヒロムが迫ろうとしていた。
アルトが気づいた時にはヒロムはすでに大剣を振り上げており、防御が間に合うか分からぬ状態。
アルトはとにかく禍々しいオーラと闇を今以上に強く纏って防ごうとするが、彼の体はヒロムの猛攻でひどく負傷しているからか彼の意思に反して力は弱まってしまう。
「しまっ……」
「終わりだ……十神アルト!!」
もはやアルトに防ぐ手立てはない、そう判断したヒロムは振り上げた大剣を勢いよく振り下ろしてアルトにトドメをさそうとし……たが、ヒロムが大剣を振り下ろすと同時にアルトの前にゼクスが現れ、現れたゼクスは両手に魔力を強く纏わせるとヒロムの大剣を白刃取りで止めてしまう。
「!?」
「ゼクス……来たということは……」
「……全ての用意が出来ました。
あとは完成に至るための最後のピースを得るだけ」
「……そうか……!!
まだ運命はオレに味方している……!!
ゼクス!!そのままそいつの力を奪え!!」
「了解」
ゼクスの登場にアルトは追い詰められた状態から一転して不敵な笑みを浮かべながら指示を出し、指示を受けたゼクスはそれを承諾すると手に纏わす魔力を怪しく光らせながら白刃取りしたヒロムの白銀の大剣の纏う力を次々に吸収していく。
このままではまずい、そう思ったヒロムは咄嗟にゼクスを蹴り飛ばすと止めようとするが、蹴りを受けたゼクスはヒロムの思惑通りに大剣から引き離されはするもののそれは時すでに遅しだった。
ヒロムの白銀の大剣から力を吸収したゼクスの全身は怪しい光に包まれていき、ゼクスが光に包まれるとヒロムとゼロが破壊した神機の残骸がどこからともなく飛んでくるとゼクスの体と一体化していく。
神機の残骸と一体化していくゼクスの体は次第に大きくなっていき、そして全身は鋼鉄の装甲と巨大な体躯の機械兵器へと変貌するとツインアイを有した頭部を光らせながら禍々しいオーラと無数の色の稲妻を纏いながら雄叫びをあげる。
変貌して雄叫びをあげるゼクス、そのゼクスが力を強く纏うとアルトの体も同じようにゼクスの纏う力を体に纏っていき、力を纏うアルトの体からはヒロムの猛攻が負わせたダメージが消えてしまう。
「フハハハハハハハ!!
ついに、ついに完成したぞ!!
姫神ヒロム!!オマエのその力がオレが求める完全な力を完成させた!!」
「まさか……これをずっと狙ってたのか!!」
「いいや、ゼクスの介入は偶然だった。
だがオマエが本気でオレを倒そうとしたことがゼクスの完全化のための用意を加速させたのは事実だ」
「何を……」
受けてみろ、とアルトが指を鳴らすと巨大な機械兵器となったゼクスが雄叫びをあげながらヒロムに向けて紅い炎と稲妻を放ち、放たれた攻撃をヒロムは白銀の大剣で防いで反撃しようと……したが、ヒロムが白銀の大剣で防ごうとしたその時、巨大な機械兵器となったゼクスはいつの間にかヒロムの背後へ移動して鋭い爪で彼の背中を大きく抉ると吹き飛ばし、吹き飛ばされたことによりヒロムはゼクスが先程放った紅い炎と稲妻をその身に受けて負傷する。
「ぐぁっ!!」
紅い炎と稲妻を受けて負傷するヒロムが倒れようとするとゼクスが片腕を動かし、ゼクスの片腕が動くとヒロムの体は何かによって宙に浮遊させられると無数の稲妻に襲われながら機械兵器となったゼクスの腕が有する鋭い爪に斬られて地に落とされる。
ゼクスの攻撃を受けたヒロムは背中と胴にひどい切り傷を負い、さらに無数の稲妻を受けたことにより火傷も負ってしまい、それにより肉体が限界に達したのか白銀の大剣が消えるとヒロムの纏う力と光の粒子が消えてしまう。
「ヒロム!!」
ヒロムが倒れたことにより慌てるゼロ。ゼロだけではない。ガイたちは先程まで優勢だったヒロムが一転して倒されたことに驚きを隠せず、慌ててヒロムのもとへ駆けつけたゼロは彼の体の状態を確かめようとする。
そんなゼロと驚くガイたちに向けてアルトは機械兵器と化したゼクスについてあることを告げる。
「オマエたちは完全な力を完成させると共に完全な神機を完成させる手助けをしてくれた!!
ゼクスこそが……全知全能の神たる神の力をも凌駕する存在となった神機・ゼウスがオレの手にある以上オマエたちはもはや勝てない!!」
「ゼウス……だと!?」
「さて、ゼロ……。
次はオマエだ。ゼウス完成に尽力してくれたオマエをここで終わらせてやろう」